訳のわからないタイトルですいません。
サラ金関係訴訟にさらに新しい1件が加わりました。
サラ金関係訴訟というと一連の流れのように思えますが、民法の分野としては債権総論と債権各論にまたがる部分であり、整理するのは中々難しいものがあるので、やや記述にも困難が生じているのでご了承ください。
タイトル中で言及している平成18年判決とは、最判平成18年1月13日民集60巻1号1頁のことで、利息の支払を一度でも遅れれば全債務について期限の利益を失うという期限の利益喪失約款によって支払ったものの、引きなおして計算すると利息制限法の制限を超過している分は、改正前の貸金業法43条のみなし弁済の要件である「任意に支払った」には該当しないと判示したものです。
平成18年改正前貸金業法
第43条(任意に支払つた場合のみなし弁済)
貸金業者が業として行う金銭を目的とする消費貸借上の利息(利息制限法(昭和二十九年法律第百号)第三条の規定により利息とみなされるものを含む。)の契約に基づき、債務者が利息として任意に支払つた金銭の額が、同法第一条第一項に定める利息の制限額を超える場合において、その支払が次の各号に該当するときは、当該超過部分の支払は、同項の規定にかかわらず、有効な利息の債務の弁済とみなす。
一 第十七条第一項(第二十四条第二項、第二十四条の二第二項、第二十四条の三第二項、第二十四条の四第二項及び第二十四条の五第二項において準用する場合を含む。以下この号において同じ。)の規定により第十七条第一項に規定する書面を交付している場合又は同条第二項から第四項まで(第二十四条第二項、第二十四条の二第二項、第二十四条の三第二項、第二十四条の四第二項及び第二十四条の五第二項において準用する場合を含む。以下この号において同じ。)の規定により第十七条第二項から第四項までに規定するすべての書面を交付している場合におけるその交付をしている者に対する貸付けの契約に基づく支払
二 第十八条第一項(第二十四条第二項、第二十四条の二第二項、第二十四条の三第二項、第二十四条の四第二項及び第二十四条の五第二項において準用する場合を含む。以下この号において同じ。)の規定により第十八条第一項に規定する書面を交付した場合における同項の弁済に係る支払
2 前項の規定は、次の各号に掲げる支払に係る同項の超過部分の支払については、適用しない。
一 第三十六条の規定による業務の停止の処分に違反して貸付けの契約が締結された場合又は当該処分に違反して締結された貸付けに係る契約について保証契約が締結された場合における当該貸付けの契約又は当該保証契約に基づく支払
二 物価統制令第十二条の規定に違反して締結された貸付けの契約又は同条の規定に違反して締結された貸付けに係る契約に係る保証契約に基づく支払
三 出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律第五条第二項の規定に違反して締結された貸付けに係る契約又は当該貸付けに係る契約に係る保証契約に基づく支払
3 前二項の規定は、貸金業者が業として行う金銭を目的とする消費貸借上の債務の不履行による賠償額の予定に基づき、債務者が賠償として任意に支払つた金銭の額が、利息制限法第四条第一項に定める賠償額の予定の制限額を超える場合において、その支払が第一項各号に該当するときに準用する。
すると、貸金業者が期限の利益喪失約款のもとで受け取った超過分は法律上の原因がないことになりますので不当利得ということになります。すると返還することになり、これがいわゆる過払い金の取り戻しという問題になるわけです。ここで民法の規定を眺めると、不当利得の返還には悪意の受益者であると利息をつけないといけません。よって利息をめぐる問題が浮上するわけです。
第704条(悪意の受益者の返還義務等)
悪意の受益者は、その受けた利益に利息を付して返還しなければならない。この場合において、なお損害があるときは、その賠償の責任を負う。
過払い金返還と悪意の受益者について判例があります。
最判平成19年7月13日民集61巻5号1980頁
この判例は、結果としてみなし弁済の適用が認められない場合には、貸金業者がみなし弁済の適用があると認識しており、かつ、そう認識を有するに至ったことについてやむをえないといえる特段の事情があるときでない限り、悪意の受益者と推定されるとしました。
以上のような判例法理を踏まえたうえで本件の検討です。
この事件では期限の利益喪失約款のあるもとでの過払い金返還が問題になっています。みなし弁済にはならないので返還は義務ですが、利息がどうなるかの争いであるわけです。
最高裁判所第二小法廷平成21年07月10日判決 平成20(受)1728 不当利得返還等請求事件
原審は、上記の平成19年判決に依拠して、期限の利益喪失約款に基づいて受領したということは、悪意の受益者という推定を覆す特段の事情はないと判断しました。
この理由付けが中々すごくて、平成18年判決ではじめて明らかになった解釈なので、それ以前は任意性があるという解釈が最高裁判例でもって裏付けられていたわけではないとして、平成19年判決のいう特段の事情があるとはいえないとしました。判例変更ではないため判例としてはブランクでした。よって確たるものがない以上、貸金業者が大丈夫だと認識する特段の事情があるとはえいないということです。
しかし、これはあまりに厳しいのは否定できません。本件に関してはこれまでの貸金業の政策的な態度から、明確に否定されていないならしていいものと期待しても仕方ない性格のものですし、確立した実務であったことも作用して、悪意の受益者とまでしてしまうのはあまりに過酷といえましょう。
そこで最高裁は以下のように判示して、原審を破棄、差し戻しました。
平成18年判決が言い渡されるまでは,貸金業者において,期限の利益喪失特約下の支払であることから直ちに同項の適用が否定されるものではないとの認識を有していたとしてもやむを得ないというべきであり,貸金業者が上記認識を有していたことについては,平成19年判決の判示する特段の事情があると認めるのが相当である。
このように、この判決は結論だけ見ると貸金業者よりですが、あくまで事実関係から妥当な解釈をしたにすぎず、サラ金関係訴訟で貸金業者に厳しい一連の流れに対してゆれ戻しなどの意図があるわけではないと思われます。