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2014年8月

2014年8月27日 (水)

ヤマザキマザックの機密情報不正取得事件で中国籍の元社員に有罪判決

すでにこのブログでも取り上げたことのあるヤマザキマザックの機密情報不正取得事件ですが、改正不正競争防止法の初適用で注目されたところ、有罪判決が出たことが明らかになりました。

ヤマザキマザック 中国人元社員有罪 情報不正取得 - SankeiBiz(サンケイビズ) 2014.8.21 04:30

工作機械大手ヤマザキマザック(愛知県大口町)から部品の設計図などの機密情報を不正に取得したとして、不正競争防止法違反罪に問われた中国籍の元社員、唐博被告(34)に名古屋地裁(景山太郎裁判長)は20日、懲役2年、執行猶予4年、罰金50万円(求刑懲役2年、罰金100万円)の判決を言い渡した。被告側は控訴する方針。事件は利益のために企業秘密を持ち出すことを処罰対象とした改正不正競争防止法を適用した初のケース。企業秘密保護のため被告人質問を初めて非公開で行った。

この件では、平成21年の改正法によって導入された不正の利益目的での情報の取得罪が初めて適用されたという点と、平成23年改正で導入された刑事手続きの特例が初めて行われたという点において先駆的意義がある事案となっています。

不正競争防止法

第五章 罰則

(罰則)

第二十一条 次の各号のいずれかに該当する者は、十年以下の懲役若しくは千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。

不正の利益を得る目的で、又はその保有者に損害を加える目的で、詐欺等行為(人を欺き、人に暴行を加え、又は人を脅迫する行為をいう。以下この条において同じ。)又は管理侵害行為(財物の窃取、施設への侵入、不正アクセス行為(不正アクセス行為の禁止等に関する法律 (平成十一年法律第百二十八号)第二条第四項 に規定する不正アクセス行為をいう。)その他の保有者の管理を害する行為をいう。以下この条において同じ。)により、営業秘密を取得した者

詐欺等行為又は管理侵害行為により取得した営業秘密を、不正の利益を得る目的で、又はその保有者に損害を加える目的で、使用し、又は開示した者

(略)

第六章 刑事訴訟手続の特例

(営業秘密の秘匿決定等)

第二十三条 裁判所は、第二十一条第一項の罪又は前条第一項(第二十一条第一項第一号、第二号及び第七号に係る部分に限る。)の罪に係る事件を取り扱う場合において、当該事件の被害者若しくは当該被害者の法定代理人又はこれらの者から委託を受けた弁護士から、当該事件に係る営業秘密を構成する情報の全部又は一部を特定させることとなる事項を公開の法廷で明らかにされたくない旨の申出があるときは、被告人又は弁護人の意見を聴き、相当と認めるときは、その範囲を定めて、当該事項を公開の法廷で明らかにしない旨の決定をすることができる。

前項の申出は、あらかじめ、検察官にしなければならない。この場合において、検察官は、意見を付して、これを裁判所に通知するものとする。

裁判所は、第一項に規定する事件を取り扱う場合において、検察官又は被告人若しくは弁護人から、被告人その他の者の保有する営業秘密を構成する情報の全部又は一部を特定させることとなる事項を公開の法廷で明らかにされたくない旨の申出があるときは、相手方の意見を聴き、当該事項が犯罪の証明又は被告人の防御のために不可欠であり、かつ、当該事項が公開の法廷で明らかにされることにより当該営業秘密に基づく被告人その他の者の事業活動に著しい支障を生ずるおそれがあると認める場合であって、相当と認めるときは、その範囲を定めて、当該事項を公開の法廷で明らかにしない旨の決定をすることができる。

裁判所は、第一項又は前項の決定(以下「秘匿決定」という。)をした場合において、必要があると認めるときは、検察官及び被告人又は弁護人の意見を聴き、決定で、営業秘密構成情報特定事項(秘匿決定により公開の法廷で明らかにしないこととされた営業秘密を構成する情報の全部又は一部を特定させることとなる事項をいう。以下同じ。)に係る名称その他の表現に代わる呼称その他の表現を定めることができる。

裁判所は、秘匿決定をした事件について、営業秘密構成情報特定事項を公開の法廷で明らかにしないことが相当でないと認めるに至ったとき、又は刑事訴訟法 (昭和二十三年法律第百三十一号)第三百十二条 の規定により罰条が撤回若しくは変更されたため第一項 に規定する事件に該当しなくなったときは、決定で、秘匿決定の全部又は一部及び当該秘匿決定に係る前項の決定(以下「呼称等の決定」という。)の全部又は一部を取り消さなければならない。

上記の他、日経の報道によると、営業秘密に当たるかという点において情報の内容や管理体制について検討をしており、不正の利益目的の認定において、中国の知人とのチャットの内容が証拠として検討されている模様です。

改正法で新設されたのでも当然のこと目的犯であることは変わっていないため、証拠の収集においてもう一段必要性があるということなのだと思われます。

被告人はただちに控訴していますが、仮にその先までいって最高裁まで争った場合にはこの改正法が憲法違反だとする主張をすることになるのでしょう。

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政府、不当解雇の金銭的解決を検討開始と報道される

安倍内閣になってからの規制緩和は、雇用分野について色々と検討の対象とはするもののあまり大幅な規制緩和にはならずに終わってしまうことが多いのですが、次の課題として解雇の金銭的解決の検討に着手すると日経の報道で取り上げられました。

不当解雇、金銭補償で解決 政府が検討着手 :日本経済新聞 2014/8/24 1:02

政府は裁判で認められた不当な解雇を金銭補償で解決する制度の検討に入る。解雇された労働者が職場に戻る代わりに年収の1~2年分の補償金を受け取れる枠組みを軸に検討を進める。労働者が泣き寝入りを迫られる現状を改めつつ、主要国と金銭解決のルールで足並みをそろえる狙いだ。2016年春の導入をめざすが、中小企業や労働組合の反発は強い。実現には曲折がありそうだ。

日経でしか取り上げられていないので例によって観測気球的な記事なのだと思いますが、それに加えてこの報道では、若干不可解な記述が多いので、そもそもの内容の当否が気になります。

とりあえず、記事の内容からいくと、不当解雇出会った場合に、原職復帰ではなく、補償金の支払いを命じることも可能にするという立法的措置の検討を開始するとのことであり、その際の基準は年収の1年から2年分などが取りざたされているということの模様です。

これだと、お金さえ払えば解雇できるというわけではなく、あくまで不当解雇であるか否かが争点になるので、使用者側にとっては厄介な問題が残りそうですし、労働者側にとっては、解雇が容易な方向に向かうということで抵抗があるでしょうから、労使双方から受け入れがたくあまり問題の解決にならないような気がします。

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2014年8月19日 (火)

伊藤忠商事、富士フィルムなどがホワイトカラーエグゼンプションの導入の検討と報道される

労働時間管理の対象から外すという内容を有するホワイトカラー・エグゼンプションが法改正の俎上に上っていますが、まだ国会にも提出されていない段階です。しかし、すでに先を見越して、導入の検討を始めた企業が出ているという報道がなされました。

 
   

伊藤忠など導入検討 労働時間規制の緩和制度 :日本経済新聞 2014/8/18 2:00 日本経済新聞 電子版

   

伊藤忠商事や富士フイルムなど主要企業が、働いた時間ではなく成果に応じて賃金を払う「ホワイトカラー・エグゼンプション」の導入の検討を始めた。政府は欧米に比べて劣るとされるホワイトカラー層の生産性向上のために、同制度の導入に向け2015年の法改正を目指している。企業は国が今後、制度の詳細を詰めるのに合わせて準備を進め早期導入を目指す。

   

(略)

 

要するに法改正で導入されたら、わが社でも採用しようという検討を始めたということにすぎず、ホワイトカラー・エグゼンプションが一部企業で始まろうとしているというわけではなく、世論を喚起していこうという意図がやや感じられる記事に見受けられます。

 

ホワイトカラー・エグゼンプションは労働基準法改正によって導入される方向になっていますが、年収要件なども入る模様で、裁量労働制よりも対象を広げることは実現するものの、劇的に労働時間管理を不要とするものではないのも事実です。

 

議論も含めて激しい抵抗が予想されますが、実のところ、どこまで劇的な変化なのかは、微妙な問題かもしれません。

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2014年8月17日 (日)

明治安田生命、賃金制度を改めて、正社員と限定正社員と同一の賃金テーブルとすることを可能にする仕組みを導入へ

明治安田生命が、正社員の賃金制度を再編成することが報道されました。日経の報道によると、同一賃金同一労働、男女での違いがなくなるといった捉えられ方をされているようですが、報道中で言及された内容から分析すると、ただいま注目を集めている限定正社員と正社員の賃金制度の接続を可能にするようなものであるように見受けられ、限定正社員の活用が促されている昨今の情勢と軌を一にする改正と思われます。

 

明治安田生命は、この報道に先だって一般職を地域総合職とするという制度変更が行われることが報道されており、これに連続するものと思われます。

 
   

女性社員、男性と同一業務なら賃金同じ 明治安田 :日本経済新聞 2014/8/9 23:39 日本経済新聞 電子版

   

明治安田生命保険は2015年度から、同じ業務をしていれば職種が違っても給料を同じにする「同一労働・同一賃金」制度を正社員に導入する。これまでは転勤の有無により賃金表が異なり、業務に対して支払われる賃金が不透明だった。転勤のない職種は女性がほとんどで、待遇の改善で活躍を後押しする。全国型の総合職には転勤が伴う分、給料を加算する。

   

(略)

 

上記のとおり、基本給を業務に対する対価として位置づけることで、人事異動の可能性によって差をつけるのをやめることで、この点では同一賃金同一労働となることになります。

 

一方で、伝統的な意味での総合職の有する人事異動の可能性に対しては、加算によって違いを設けるという整理となる模様です。

 

この人事に関する加算が手当になるのかは不明ですが、人事異動の可能性に対する対価が、画一的な手当では納得感の点から難しいかもしれません。昨今は基本給表を複数設けて加算するという賃金の決め方もありますので、等級ごとに加算される金額を変えるということもあるかもしれません。

 

また、最近の賃金制度設計の実例として、本件のように担当する業務に対する基本給と、職能等級的な意味での役割に対する基本給の合算で基本給を決めるという仕組みも見受けられてきています。

 

賃金テーブルをわけて、職種ごとに別の世界として管理するのがセオリーでしたが、人材確保の観点が重要になってきた昨今、一部の賃金テーブルは共通にすることで基本的には、正社員と同じ待遇なのであるということを強調する向きが出てきている模様です。

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中小企業経営承継円滑化法の改正をめぐり報道がされる

家業で行っているような企業を念頭にして事業承継のための特別な法律である中小企業経営承継円滑化法という法律があり、かなり大胆な内容である割に活用されていないのですが、その使い勝手をさらに向上させる法改正の報道がなされました。

中小の事業継承、円滑に 非親族にも譲りやすく法改正へ :日本経済新聞 2014/8/15 2:00 日本経済新聞 電子版

政府は、中小・零細企業が後継者を見つけやすくなるよう後押しする。親族ではない従業員が事業を引き継ぐ例が増えているため、親族以外に対しても会社の株式を時価より安く譲れるよう法改正する。株式を譲る際にかかる贈与税の優遇対象も広げる。後継者難で廃業する中小企業を減らし、地域の雇用や技術力が失われるのを防ぐ。

(略)

この法律は要するに家業を事業承継する場合に、時価よりも低く譲渡できるようにするというものなのですが、法改正で

  • 株式の承継を時価より低くする対象の拡大
  • 時価よりも低く譲渡した場合の贈与税の優遇

を行うことが検討されている模様です。

この法律はその意欲的な内容のわりに利用が芳しくないところがあるようなのですが、その理由の一端があまりに対象が限定されすぎている点にあるということで、拡大を図るという対応が考えられている模様です。

事業承継に悩んでいる中小企業の問題はかなり広がってきているのですが、この法律で対処できるのは障害のごくごく一部にすぎません。ハードルすべてについて事業承継を容易にするように政策をパッケージ化しないとなかなか難しい面がありますが、法人税の問題、国際競争の問題など、隣接の政策分野がどこまでついてきているかは若干心もとない感じがします。

 

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2014年8月16日 (土)

第一生命、議決権の行使結果を開示へ

機関投資家であるもののあまり存在感のなかった大手生命保険会社が、議決権行使基準を策定したり、議決権の行使結果である賛否を公表するところが出てきていることが明らかになりました。

 
   

「物言う生保」存在感 第一生命、議案賛否数を公表 :日本経済新聞

   

2014/8/14 0:55 (2014/8/14 3:30更新)

   

「物言わぬ株主」と言われてきた生命保険会社が、株主総会での議決権行使によって投資先への経営関与を強める。第一生命保険は大手生保で初めて、投資先の上場企業の議案にどう賛否を投じたかを公表することを決めた。18兆円もの株式を保有する生保が投資先の剰余金処分などの監視を強めれば、企業に増配などを促すきっかけとなりそうだ。

   

■情報開示を強化

   

「ほかの生保から余計なことをしたと批判されるかもしれないが、上場企業として情報開示を強化する必要があった」。第一生命は月末に今年の株主総会で投資先企業の議案ごとにどう賛否を投じたか初めて公表する。同社幹部はその狙いをそう説明する。

   

生保が「物言う株主」に転じ始めた契機は、機関投資家の行動規範を定めた「日本版スチュワードシップ・コード」の導入だ。2月に金融庁が指針をまとめ、大手生保が一斉に導入を表明した。

   

これまでも生保は取締役選任などの議案に賛成するか否認するかの内部基準があったが、議案の賛否数などはほとんど公表していなかった。生保の株式保有は資産運用の面だけでなく、保険商品を投資先に売るための「営業ツール」としての側面もあったためだ。

   

生保は国内上場企業の発行済み株式の4%にあたる株式を保有し、取締役の選任などで議決権を行使すれば企業への影響は大きい。例えば第一生命は今年から、在任12年を超す監査役の再任には反対票を投じることにした。取締役会のなれ合いを防ぐためだ。

   

ほかにも経営状態の悪い企業が買収防衛策を導入しようとすれば、これにも反対票を投じる。今年の株主総会では投資先の約2000社の議案のうち10%弱に反対したという。月末にはさらに「取締役の選任」「剰余金の処分案」など議案ごとの賛否数を公表し、企業に経営改善を働きかける。生保は国債の利回り低迷で運用実績が伸び悩む。保有株の投資価値を高める必要があるためだ。

   

(略)

 

上記のとおり、日本版スチュワードシップ・コードによって機関投資家としての振る舞いが強化されたことが明らかになっています。

 

これだけではなく、企業価値の向上を図ることで運用面での成果も期待する向きもあるのでしょう。

 

もっとも、もともと代表的な日本企業にいた身としては、上記記事中の営業面も非常に大きいことを感じますので、果たしてこのままでいけるのかは若干微妙にも思えるのですが、別の問題として保険の販売チャネルの多様化などもあり、問題は限定的になっているということがあるのかもしれません。

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