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2015年5月 6日 (水)

最高裁、責任無能力者の未成年者が他人に損害を与えたもののその態様が通常は人身に危険が及ぶような行為ではない場合、親権者に具体的に予見が可能であるなど特別の事情が認められない限り、監督義務を尽くしていなかったと判断するべきではないと判示

報道でも大きく取り上げられましたが、子供がサッカーボールを蹴って道にボールが飛び出してしまい、通りかかったバイクの老人がそれによって怪我をしてしまい、入院を経て、誤嚥性肺炎でなくなってしまったという事案について、親の監督責任が問われた損害賠償請求訴訟で、最高裁が一部認容していた原判決を破棄して請求棄却の自判を行いました。判決が出て1カ月たちますが取り上げます。

最高裁判所第一小法廷 平成27年4月9日判決 平成24(受)1948 損害賠償請求事件

民法により未成年者は責任無能力ですが、責任無能力者が損害を与えた場合には、監督義務者が監督義務を怠っていない場合以外、責任を負うことになっています。

第七一四条(責任無能力者の監督義務者等の責任)
前二条の規定により責任無能力者がその責任を負わない場合において、その責任無能力者を監督する法定の義務を負う者は、その責任無能力者が第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、監督義務者がその義務を怠らなかったとき、又はその義務を怠らなくても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。
2監督義務者に代わって責任無能力者を監督する者も、前項の責任を負う。

そしてこの監督義務者の責任は、立証責任が転換していることがハードルを上げることにつながり、事実上無過失責任の様相を呈してしまっていました。そのような判断の根底には、誰も賠償の責を負わないというのはおかしいと考えて、事実上、代位責任的に破断しているきらいがあるのですが、条文そのものは監督義務者の責任という形式自体は維持されています。

このような考え方には当然批判のあるところであり、監督義務を怠っていなかったとするのは酷ではないのか、どうすれば監督責任を果たしていたといえるのかということが指摘されることになっていました。

本件はそのような中、最高裁まで係属した事件ですが、大変、特徴的な事実関係がありました。

未成年者の行為はサッカーゴールにフリーキックをしたところ、道路までボールが転げ出てしまったというものでしたが、以下のような事実があったことが判示されています。

  • ゴールからさらにその先の学校の門までは10メートル
  • 門の左右にはネットが張られており、その外には1.8メートルの側溝
  • 本件では門の外にかかっている橋にボールが行ってしまい道路に転げ出てしまった
  • 道路の交通量は普段多くない

このようにボールが出てしまったことと、ちょうどバイクが通りかかったことは、かなり偶然性が高いといえます。

このような点をとらえて最高裁は、この行為を、通常は人身に危険が及ぶ行為ではないと評価をしまして、通常は人身に危険が及ぶ行為ではない行為から損害が発生した場合に監督義務を尽くしていたかの判断基準を以下のように述べています。

親権者の直接的な監視下にない子の行動についての日頃の指導監督は,ある程度一般的なものとならざるを得ないから,通常は人身に危険が及ぶものとはみられない行為によってたまたま人身に損害を生じさせた場合は,当該行為について具体的に予見可能であるなど特別の事情が認められない限り,子に対する監督義務を尽くしていなかったとすべきではない。

その上で、特別の事情があったとうかがわれないとして請求を棄却する判断をしています。

通常は人身に危険が及ぶ行為ではないのに、特別に予見される場合というと、未成年者が故意でやったことでそれを監督義務者が知っていたとかそういう極限的な場合ではないと該当しないように思われますので、監督義務者の責任についてかなり実質的判断をしたといえるように思われます。

ただ、報道ではこれで一気に流れがかなり変わるというような受け止め方がされていましたが、「通常は人身に危険が及ぶ行為ではない」の判断において、本件では単なる公園でのボール遊びとかよりはかなり偶然性を感じさせる要素が基礎になっていることから、果たして射程がどこまで広いのかは微妙な感じがします。

また、監督義務の判断を実質化させると、未成年者による行為であるというために、誰も賠償の責を負わないという事態が発生してしまうことからも、大変難しい問題です。立法措置を考えないうえでバランスを考えるならば、監督義務者の責任のハードル自体はやはり若干変えざるを得ないようにも思われ、そのような苦しい判断があるからか、この判例の判示はどうもすっきりしない書き方になっているきらいがあります。

監督義務を尽くしていなかったとすべきではないという一般論の後の当てはめ的な個所で、義務を怠らなかったとまで言ってしまっており、論の運びとの対応関係がやや不整合な感じを受けるところがあります。

最高裁も要旨の書き方や公表した判決文中の下線の引き方で事例判断であることを強調しており、あまり射程を広げて捉えないほうが無難な感じがする一件と言えるかと思われます。

 

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