商事法務事情

会社法を中心として企業法務に関わる記事です。

2009年11月 7日 (土)

コスモスイニシア、資本金の額の減少および資本準備金の額の減少に対して債権者異議があったため効力発生日を変更

マンションデベロッパーで事業再生ADRで経営再建中のコスモスイニシアが、先日臨時株式総会を開催して経営再建のために必要なことについて株主総会決議で承認されましたが、その中に資本金の額および資本準備金の額の減少が含まれていました。

株主総会における承認はされたのですが、これについて債権者から異議があったため、その対処のために効力発生日が変更されることになり、公表されました。

資本金の額及び資本準備金の額の減少に関する実施日程の一部変更のお知らせ

資本金の額および資本準備金の額の減少の場合には、原則として債権者は異議を言うことができます(会社法449条1項)。

例外的に必要がないのは、449条1項但書にあるとおりで、単純に言うと、株主総会決議でもって資本準備金の額のみを減少させた場合です。

第449条(債権者の異議)

株式会社が資本金又は準備金(以下この条において「資本金等」という。)の額を減少する場合(減少する準備金の額の全部を資本金とする場合を除く。)には、当該株式会社の債権者は、当該株式会社に対し、資本金等の額の減少について異議を述べることができる。ただし、準備金の額のみを減少する場合であって、次のいずれにも該当するときは、この限りでない。

一 定時株主総会において前条第一項各号に掲げる事項を定めること。

二 前条第一項第一号の額が前号の定時株主総会の日(第四百三十九条前段に規定する場合にあっては、第四百三十六条第三項の承認があった日)における欠損の額として法務省令で定める方法により算定される額を超えないこと。

2 前項の規定により株式会社の債権者が異議を述べることができる場合には、当該株式会社は、次に掲げる事項を官報に公告し、かつ、知れている債権者には、各別にこれを催告しなければならない。ただし、第三号の期間は、一箇月を下ることができない。

一 当該資本金等の額の減少の内容

二 当該株式会社の計算書類に関する事項として法務省令で定めるもの

三 債権者が一定の期間内に異議を述べることができる旨

3 前項の規定にかかわらず、株式会社が同項の規定による公告を、官報のほか、第九百三十九条第一項の規定による定款の定めに従い、同項第二号又は第三号に掲げる公告方法によりするときは、前項の規定による各別の催告は、することを要しない。

4 債権者が第二項第三号の期間内に異議を述べなかったときは、当該債権者は、当該資本金等の額の減少について承認をしたものとみなす。

5 債権者が第二項第三号の期間内に異議を述べたときは、株式会社は、当該債権者に対し、弁済し、若しくは相当の担保を提供し、又は当該債権者に弁済を受けさせることを目的として信託会社等(信託会社及び信託業務を営む金融機関(金融機関の信託業務の兼営等に関する法律(昭和十八年法律第四十三号)第一条第一項の認可を受けた金融機関をいう。)をいう。以下同じ。)に相当の財産を信託しなければならない。ただし、当該資本金等の額の減少をしても当該債権者を害するおそれがないときは、この限りでない。

6 次の各号に掲げるものは、当該各号に定める日にその効力を生ずる。ただし、第二項から前項までの規定による手続が終了していないときは、この限りでない。

一 資本金の額の減少 第四百四十七条第一項第三号の日

二 準備金の額の減少 前条第一項第三号の日

7 株式会社は、前項各号に定める日前は、いつでも当該日を変更することができる。

コスモスイニシアは、今回の資本金の額の減少および資本準備金の額の減少の目的については、欠損金の一部填補に備えるためのほか、資本構成の是正を図り、今後の柔軟な資本政策の展開を可能とするためとしています。

よって、減少するのが資本準備金の額だけではないことと目的がただちに欠損を填補するわけではないことから、債権者異議が言えない例外ではないわけです。

異議があったら、上記の449条5項の対処をしないといけませんが、債権者を害するおそれがない場合には何もしなくてよいことになります。

異議の内容の検討のために時間を要することから効力発生日を変更することになったわけです。

効力発生日は上記のように7項から効力発生日前なら変更することができますので、今回の決定に至っています。

コスモスイニシア自身は、当該異議をした債権者はそもそも債権を有していないものと考えているようですので、対処も弁済するなどの単純なものにはならないと思われます。

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2009年11月 4日 (水)

名古屋地裁、佐藤食品工業による一時取締役の選任申立てに対して選任決定

佐藤食品工業、資産運用で特別損失を出した元取締役に対して任務懈怠に基づく損害賠償請求訴訟を提起することを表明(2009.10.25)の関連情報です。

損害賠償を提起する対象である取締役たちはすべてすでに辞任しているのですが、そのせいで取締役が一人だけになってしまっています。

佐藤食品工業は取締役会設置会社ですので、取締役が3人必要(会社法331条4項)ですので、法定の員数を割り込んでいることになります。

そこで3人を割り込むことになった辞任があった日に直ちに名古屋地裁に一時取締役の選任を申し立てていたのですが、名古屋地裁によって選任決定があった模様です。

もっとも現時点では佐藤食品工業からはリリースはされていません。

第346条(役員等に欠員を生じた場合の措置)
役員が欠けた場合又はこの法律若しくは定款で定めた役員の員数が欠けた場合には、任期の満了又は辞任により退任した役員は、新たに選任された役員(次項の一時役員の職務を行うべき者を含む。)が就任するまで、なお役員としての権利義務を有する。
2 前項に規定する場合において、裁判所は、必要があると認めるときは、利害関係人の申立てにより、一時役員の職務を行うべき者を選任することができる。
3 裁判所は、前項の一時役員の職務を行うべき者を選任した場合には、株式会社がその者に対して支払う報酬の額を定めることができる。
4 会計監査人が欠けた場合又は定款で定めた会計監査人の員数が欠けた場合において、遅滞なく会計監査人が選任されないときは、監査役は、一時会計監査人の職務を行うべき者を選任しなければならない。
5 第三百三十七条及び第三百四十条の規定は、前項の一時会計監査人の職務を行うべき者について準用する。
6 監査役会設置会社における第四項の規定の適用については、同項中「監査役」とあるのは、「監査役会」とする。
7 委員会設置会社における第四項の規定の適用については、同項中「監査役」とあるのは、「監査委員会」とする。

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2009年11月 2日 (月)

穴吹工務店、社長以外の取締役の解任を目的とする臨時株主総会の招集を決めるも、その後に撤回

マンション分譲の穴吹工務店で代表取締役社長が社長以外の取締役の解任を臨時株主総会に提案しようとしていましたが、その後、この提案を撤回、臨時株主総会も中止することを表明しました。

穴吹工、全役員の解任提案を撤回 ブランドのイメージ悪化も(47NEWS2009年11月2日)

マンション分譲大手の穴吹工務店(高松市)は2日、穴吹英隆社長以外の取締役11人全員の解任提案を撤回、3日の臨時株主総会を中止する、と発表した。

経営方針をめぐる対立から、株主に総会の招集通知を出してわずか1週間。公になった「内紛」の影響拡大を恐れた社長側が矛を収めたのが真相とみられるが、一連のドタバタ劇が、人気の「サーパス」ブランドのイメージ悪化につながり、今後の再建計画に響く可能性も取りざたされている。

(略)

総会前に取締役の半数以上は自ら辞任、執行役員として勤務してきた。

(略)

会社の内部的な政治闘争に終始してしまったわけですが、それにしても不思議なのは、最初の臨時株主総会の召集をどうやって決めたのかということです。

会社法298条1項4項から、取締役会設置会社では株主総会の召集権者は取締役会になります。

第298条(株主総会の招集の決定)

取締役(前条第四項の規定により株主が株主総会を招集する場合にあっては、当該株主。次項本文及び次条から第三百二条までにおいて同じ。)は、株主総会を招集する場合には、次に掲げる事項を定めなければならない。

一 株主総会の日時及び場所

二 株主総会の目的である事項があるときは、当該事項

三 株主総会に出席しない株主が書面によって議決権を行使することができることとするときは、その旨

四 株主総会に出席しない株主が電磁的方法によって議決権を行使することができることとするときは、その旨

五 前各号に掲げるもののほか、法務省令で定める事項

(略)

4 取締役会設置会社においては、前条第四項の規定により株主が株主総会を招集するときを除き、第一項各号に掲げる事項の決定は、取締役会の決議によらなければならない。

社長以外の取締役は、自分たちの解任を目的とする株主総会の招集を決める決議に対してどう対応したのでしょうか。この点非常に疑問があります。

また、この騒動の中取締役が何人か辞任した模様ですが、社内の対立は一応収拾したとはいえ、辞任はすでにしてしまった以上、簡単には元の地位に戻すことはできません。再度選任をしないといけないように思われますが、その点に関しては何も対処がされないようです。

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2009年10月28日 (水)

東理ホールディングス、過大な報酬が問題となったコンサルティング契約に関与した元代表取締役が取締役辞任の意思を撤回したので代わりの取締役選任を目的とする臨時株主総会を中止

東理ホールディングス、コンサルティング費用が過大であると弁護士に指摘されて当時の代表取締役が自費で負担した件で費用を返還すると表明の続報です。

問題となったコンサルティング契約に関与した元代表取締役は取締役辞任を表明していたのですが、その後、コンサルティング費用は適正ということになったので、取締役辞任の意思も撤回されました。

そのため同社の取締役は三人しかいないことから辞任すると取締役会設置会社の法定の員数を割り込むことになるので代わりの取締役を選任するための臨時株主総会を開催する予定でしたが中止になりました。

前代表取締役社長の取締役辞任意向撤回にともなう臨時株主総会の中止に関するお知らせ

一応、後日に備えて、損害賠償請求権の担保のために元代表取締役から担保の提供を受けているのですが、それでもやや割り切れない感じがあります。

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2009年10月25日 (日)

佐藤食品工業、資産運用で特別損失を出した元取締役に対して任務懈怠に基づく損害賠償請求訴訟を提起することを表明

ジャスダック上場の食品製造・卸の佐藤食品工業がSFCGの民事再生法申請その後廃止で破産手続きへ移行などに起因して巨額の特別損失を出していますが、これについて、会社として辞任した取締役たちに会社法423条の損害賠償請求訴訟を提起することが公表されました。

当社元取締役に対する損害賠償請求訴訟の提起にかかる監査役会決議に関するお知らせ

佐藤食品工業は、余剰資金の運用としてSFCG等のCPを取得していましたが、これがSFCGの破産に至る経緯のため、取立不能になり特別損失となったというものです。

当時の取締役6名に対して、提訴請求が株主からなされており、それに答える形で任務懈怠に基づく会社に対する損害賠償責任を追及する訴訟を提起することになったものです。

第423条(役員等の株式会社に対する損害賠償責任)

取締役、会計参与、監査役、執行役又は会計監査人(以下この節において「役員等」という。)は、その任務を怠ったときは、株式会社に対し、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

2 取締役又は執行役が第三百五十六条第一項(第四百十九条第二項において準用する場合を含む。以下この項において同じ。)の規定に違反して第三百五十六条第一項第一号の取引をしたときは、当該取引によって取締役、執行役又は第三者が得た利益の額は、前項の損害の額と推定する。

3 第三百五十六条第一項第二号又は第三号(これらの規定を第四百十九条第二項において準用する場合を含む。)の取引によって株式会社に損害が生じたときは、次に掲げる取締役又は執行役は、その任務を怠ったものと推定する。

一 第三百五十六条第一項(第四百十九条第二項において準用する場合を含む。)の取締役又は執行役

二 株式会社が当該取引をすることを決定した取締役又は執行役

三 当該取引に関する取締役会の承認の決議に賛成した取締役(委員会設置会社においては、当該取引が委員会設置会社と取締役との間の取引又は委員会設置会社と取締役との利益が相反する取引である場合に限る。)

423条の責任は任務懈怠があったのかということです。

本件においては、SFCGの経営具合とその認識が問題となりそうですが、上記リンク先のリリースによると、そもそも余剰資金の運用の決議自体が合理的ではないと会社では判断している模様です。

これはどういうことかと考えてみると、佐藤食品工業の筆頭株主は現在は日本振興銀行ですがこれは担保権実行によるものであり、以前はSFCGのグループに属していました。この辺の経緯が影響しているものと思われます。

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2009年10月23日 (金)

日本興亜損保、前会長が社長等経営陣の解任を求める株主提案

日本興亜損保が内紛状態であることは以前からお伝えしていますが、経営陣と対立している前会長などが個人株主の資格で、紛争の原因となっている損害保険ジャパンとの経営統合を諮る臨時株主総会に社長等の経営陣の役員解任を求める株主提案をしていることが明らかになりました。

この株主提案に特徴的なのは、条件がついていることで、経営統合が否決された場合に解任を諮るという内容のものになっています。

株主提案権行使に関する書面の受領に関するお知らせ

条件がついている株主提案というのはあまり例がないように思われるのですが、会社法的に禁止されるようなものではないでしょう。

しかし、株主総会を行う会社の側の行為規範としてはどうでしょうか。

仮に経営統合の議案の賛否が微妙であった場合に、経営統合が承認されたとして株主提案は賛否を問わずに終了してしまったいいものでしょうか。

経営統合は特別決議ですから、可決されるか微妙になることは現実的にないとは言えないので、これはまったく考えなくていい問題とまではいえないのではないでしょうか。

下手に強引に進めて解任議案をしないですませてしまうと、経営統合の議案の再集計の行方によっては、解任議案を採決しなかったことが株主総会決議取り消しの訴えの取消事由の決議の方法の法令違反や著しい不公正(831条1項1号)に該当するかもしれません。

しかしここでまた別の問題なのですが、そもそも議案を扱わないというのは決議がないことになりますが、それを取り消すことは観念できるのでしょうか。またこの場合、仮に取消ても、再度総会決議をできるわけでもないので、あまり意味がないように思えます。

では解任の訴えはどうでしょうか。

解任の訴えは、解任議案が株主総会で否決されて初めて提起できるものですが、条件付解任議案で条件が成就しなかったとして何もしなかったのは否決されたことになるのでしょうか。

非常によくわからない点が多いですが、経営統合が微妙な差なら念のために採決してしまえばいいのかもしれません。

しかし役員解任議案なんて会社にとってはあまり気持ちのいいものではないで、慎重を期すにしてもためらわれるものです。

書面投票では一応載せて賛否を記入してもらうしかないでしょうから、実質的には解任についても株主に意向を問うようなことになるのでしょうが、難しい問題です。

統合議案の行方が微妙な情勢であり、反対派が委任状勧誘を行ったりしたら会社にとっては非常に面倒な事態になりそうです。

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2009年10月21日 (水)

東証1部上場主要企業の社外取締役の過半数が兼務しているとの調査結果が公表される

日経の調査で、東証1部上場の主要企業がおいている社外取締役のうち過半数が複数社の社外取締役を兼務していることが明らかになりました。

社外取締役、兼務が過半数 日経調査、「3社以上」も4割(日本経済新聞2009年10月21日)

(略)

東証1部に上場する主要企業の社外取締役に、何社の社外役員を務めているか聞いた。社外取締役に限定した掛け持ちの社数は2社が28%、3社が12%、4社以上が12%で、過半数が兼務者だった。社外監査役に就任している企業数も含めると2社以上を兼務している人は58%、3社以上では39%に達した。(09:22)

この調査結果から日経は、すでに社外取締役が枯渇していると結論付けていますが、そうでしょうか。

人材が豊富ということはないとは思いますが、現在の日本の会社の主流である監査役会設置会社では、社外取締役は非常勤で取締役会に参加するだけであり、経営を第三者的な立場から監視するくらいの役割であることが主であるので、その程度の負担なら何社かかねることになるのは自然でしょう。

委員会設置会社ならそれどころではないと思われます。

ただし、東証の独立役員をめぐる方向性や、民主党の公開会社法の行方によっては委員会設置会社が増えてしまうことがありうるので、そうなると、社外取締役の必要な数と仕事の量が急増して、人材難が切実になると思われます。

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2009年10月19日 (月)

セイコーホールディングス、株式交換による1株に満たない端数の株式の処理のために自己株取得を行うことを発表

セイコーホールディングスが株式交換で発生する1株を下回る端数の株式について、自己株式取得で処理することを明らかにしました。

株式交換による1株に満たない端数の処理に伴う自己株式の買取に関するお知らせ

会社法には1株にしかない端数の処理についていくつかの処理の方法が定められており、MBO関係で活用の事例がいくつかあります。

MBOなどゴーイングプレイベートで行う場合には、この端数の処理の前に全部取得条項などを活用するなど手続きが必要で、かなり大仰なことになります。

今回は株式交換にともなう場合ということで、比較的簡易な活用方法になっています。

第234条(一に満たない端数の処理)

次の各号に掲げる行為に際して当該各号に定める者に当該株式会社の株式を交付する場合において、その者に対し交付しなければならない当該株式会社の株式の数に一株に満たない端数があるときは、その端数の合計数(その合計数に一に満たない端数がある場合にあっては、これを切り捨てるものとする。)に相当する数の株式を競売し、かつ、その端数に応じてその競売により得られた代金を当該者に交付しなければならない。

一 第百七十条第一項の規定による株式の取得 当該株式会社の株主

二 第百七十三条第一項の規定による株式の取得 当該株式会社の株主

三 第百八十五条に規定する株式無償割当て 当該株式会社の株主

四 第二百七十五条第一項の規定による新株予約権の取得 第二百三十六条第一項第七号イの新株予約権の新株予約権者

五 合併(合併により当該株式会社が存続する場合に限る。) 合併後消滅する会社の株主又は社員

六 合併契約に基づく設立時発行株式の発行 合併後消滅する会社の株主又は社員

七 株式交換による他の株式会社の発行済株式全部の取得 株式交換をする株式会社の株主

八 株式移転計画に基づく設立時発行株式の発行 株式移転をする株式会社の株主

2 株式会社は、前項の規定による競売に代えて、市場価格のある同項の株式については市場価格として法務省令で定める方法により算定される額をもって、市場価格のない同項の株式については裁判所の許可を得て競売以外の方法により、これを売却することができる。この場合において、当該許可の申立ては、取締役が二人以上あるときは、その全員の同意によってしなければならない。

3 前項の規定により第一項の株式を売却した場合における同項の規定の適用については、同項中「競売により」とあるのは、「売却により」とする。

4 株式会社は、第二項の規定により売却する株式の全部又は一部を買い取ることができる。この場合においては、次に掲げる事項を定めなければならない。

一 買い取る株式の数(種類株式発行会社にあっては、株式の種類及び種類ごとの数)

二 前号の株式の買取りをするのと引換えに交付する金銭の総額

5 取締役会設置会社においては、前項各号に掲げる事項の決定は、取締役会の決議によらなければならない。

6 第一項から第四項までの規定は、第一項各号に掲げる行為に際して当該各号に定める者に当該株式会社の社債又は新株予約権を交付するときについて準用する。

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2009年10月18日 (日)

東理ホールディングス、コンサルティング費用が過大であると弁護士に指摘されて当時の代表取締役が自費で負担した件で費用を返還すると表明

東証2部上場の東理ホールディングスが、新株予約権発行に関するコンサルティング費用について弁護士から過大であると指摘を受けて、当時の代表取締役が自費で負担したということがあったのですが(正式には会社に対して代表取締役が填補をしたもの)、改めて検討して会社が負担することにして元代表取締役に費用を返還することになったことを表明しました。

(訂正)支払手数料返還金の返還にともなう「特別利益の計上及び業績予想の修正に関するお知らせ」の全部訂正について

上記リンク先をごらんいただくとわかるのですが、過大と指摘した弁護士の見解は一般論として妥当としつつも、費用は相当であったとして返還することにしたとしています。

しかし、この一件は、会社法的に微妙なところをいくもので、多くの論点が想起されるものであるように思われます。

まずコンサルティングの契約先は、代表取締役が大株主である会社であるという事実があるようです。

ここからいくと、コンサルティング契約そのものが利益相反取引の間接取引に該当しそうです。

第356条(競業及び利益相反取引の制限)

取締役は、次に掲げる場合には、株主総会において、当該取引につき重要な事実を開示し、その承認を受けなければならない。

一 取締役が自己又は第三者のために株式会社の事業の部類に属する取引をしようとするとき。

二 取締役が自己又は第三者のために株式会社と取引をしようとするとき。

三 株式会社が取締役の債務を保証することその他取締役以外の者との間において株式会社と当該取締役との利益が相反する取引をしようとするとき。

2 民法第百八条の規定は、前項の承認を受けた同項第二号の取引については、適用しない。

第365条(競業及び取締役会設置会社との取引等の制限)

取締役会設置会社における第三百五十六条の規定の適用については、同条第一項中「株主総会」とあるのは、「取締役会」とする。

2 取締役会設置会社においては、第三百五十六条第一項各号の取引をした取締役は、当該取引後、遅滞なく、当該取引についての重要な事実を取締役会に報告しなければならない。

東理が利益相反取引として扱ったことを意味しているのかは定かではないのですが、コンサルティング費用を最初に払ったことについては、取締役会決議を踏まえて支払ったことにも言及しています。

ところが、この会社は取締役は3人しかおらず、そのうちの一人が件の代表取締役です。

代表取締役は特別利害関係人として議決権を行使できないはずですから、残りの二人で一致して賛成したのでしょうか。そもそもその規模の取締役会でガバナンスがきちんとなされるかも難しいところです。

第369条(取締役会の決議)

取締役会の決議は、議決に加わることができる取締役の過半数(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上)が出席し、その過半数(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上)をもって行う。

2 前項の決議について特別の利害関係を有する取締役は、議決に加わることができない。

3 取締役会の議事については、法務省令で定めるところにより、議事録を作成し、議事録が書面をもって作成されているときは、出席した取締役及び監査役は、これに署名し、又は記名押印しなければならない。

4 前項の議事録が電磁的記録をもって作成されている場合における当該電磁的記録に記録された事項については、法務省令で定める署名又は記名押印に代わる措置をとらなければならない。

5 取締役会の決議に参加した取締役であって第三項の議事録に異議をとどめないものは、その決議に賛成したものと推定する。

よって、取締役の義務の点からは非常に微妙であることがうかがわれます。

東理は実は費用が過大ではないということを指摘しています。これは利益相反取引であったとしても損害がないということにつながり、実質的に問題は生じないということなのだろうと思いますが、その事実認定の当否自体が検討されねばならないでしょう。

また、行為規範に違反したという任務懈怠の話と損害の話は別であり、価格が結果として適正であってもガバナンスの問題はなお残るではないかと思われます。株主が423条で追求するときにも損害がないので訴えることはないというだけの話にとどまり、実体的には会社法上の問題はあることになってしまうと思われます。

さらに、コンサルティング業務の大半は、再委託に出されており、そちらにそのまま大半の代金が流れるので、直接の契約先に利得は残らないというような記述もあるのですが、中間マージンのかかるような契約をしていること自体、別途問題となりそうに思えます。

信用の観点から、途中に資金力のある大きな会社をはさむことはよくありますが、代表取締役が大株主になっている会社というのはこれに相当しなそうに思えます。

さらには経営判断原則まで言及されています。

確かに資金調達のためのコンサルティング業務ですので経営判断ではありましょうが、相手方が代表取締役が大株主である会社というと、経営判断原則はやや後退せざるを得ないのではないかと思われます。

上記リンク先のリリースから伺われる事実しか見てないのですが、全般的になんとも微妙な一件であるように思われます。

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2009年10月16日 (金)

最高裁、米ジョージア州港湾局極東代表部から解雇された者が雇用契約上の地位確認等を請求した事件で制限免除主義を採用 主権免除を認めた原審を破棄

東京地裁、主権免除に関して制限免除主義を採用(2005.09.30)の上告審判決が出ました。(控訴審判決を取り上げるのは失念しておりました)

最高裁判所第二小法廷平成21年10月16日判決 平成20(受)6 解雇無効確認等請求事件

ジョージア州港湾局極東代表部に雇用されていて解雇されたものが雇用契約上の地位の確認と賃金の支払いを求めた事件で、被告に主権免除が認められるかが問題となった事件です。

最高裁はすでに主権免除に関して、最判平成18年7月21日民集60巻6号2542頁【関連エントリー:最高裁、主権免除に関して判例変更 諸外国と同じく制限免除主義を採用(2006.07.21)】で制限免除主義に判例を変更しています。

しかし、このジョージア州港湾局事件では、第一審では上記のエントリーで取り上げたとおり、制限免除主義を採用したのですが控訴審判決でひっくり返され請求却下になっていました。

控訴審判決は平成18年判決の後なのですが、一見すると判例に従わず、従来どおりの主権免除を認めたのには理由があります。

制限免除主義のもとでも外国国家との雇用関係のうち採用、雇用の更新、復職などは主権免除となるという国際慣習があるとされているのですが、控訴審はこの請求は、復職に関するものであるので、平成18年判決のもとでもなお主権免除になると判断したわけです。

最高裁はこれに対して、この事件は復職ではなく、主権免除条約に定められている安全保障に関係する場合のみに免除が認められる「解雇または雇用契約の終了に係るもの」であるとしました。

控訴審は国際慣習を参酌したわけですが、最高裁は国際慣習における当てはめに誤りがあるとしたわけです。

しかし、手続法は手続地法に依拠する以上、国際慣習が直接適用されるわけではありませんので、そこで最高裁はこの件での雇用契約の内容を検討をして、平成18年判決が主権免除が認められないとした「私法的ないし管理業務的行為」に該当すると判断しています。

よって、上記の国際慣習に関するくだりは結論を導くための直接必要な論理にはなっていません。控訴審の依拠した構成をしてもなお主権免除が認められる場合ではないということを言及しているに過ぎないと思われます。

したがって、この判例の意義は、主権免除が認められる「私法的ないし業務管理的な行為」の具体的な内容についての判断であるところにあると思われます。

しかし、労働法の観点から考えると、労働契約上の地位の確認といったらまさに復職を請求しているものです。ここから考えると、最高裁の言っていることはおかしいように思えてきます。

しかし、これは日本では司法的には解雇の金銭解決が認められていないため、仕方なく復職を前提とした請求を立てている面があり、この実質に配慮をした判断を示したといえるでしょう。

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2009年10月15日 (木)

東証、「平成20 年度従業員持株会状況調査結果の概要について」を公表

9日に公表されたので、少し前のことですが、東証が毎年行っている従業員持株会の実態調査の平成20年版が公表されました。

平成20 年度従業員持株会状況調査結果の概要について

金融危機発生後の株価の下落局面のさなかのことで、ESOPの活用が本格的に広がるよりはやや前の時期に該当するかと思います。

金融危機を反映してか、加入者一人当たりの保有金額は前年に比べて、大きく下落しています。

145.9万円→104.1万円

従業員持株会は社員が個人でそうそう引き出して売却することができるものではないので、生活苦で売却を余儀なくされたのではなく、単に評価損が生じているだけでしょう。

一方で、市場価格ベースでの従業員持株会の保有株式が対象会社の上場時価総額の占める割合はむしろ上昇しています。

0.85%→0.95%

従業員持株会が、株価を下支えをするものとして活用が広がっていることが伺われます。

世界の株式市況は持ち直しつつありますが、日本は政治的な要因から世界から取り残されて唯一低迷したままになっています。一方でESOPの導入が進んできているので、従業員持株会の占める割合は今後もよりいっそう上昇していくことになりそうです。

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2009年10月14日 (水)

東証、上場企業に株主総会の議決結果開示で、票数の公表まで要請へ

現在、大半の会社では株主総会の結果開示は、議案が承認されたか否かの結果を端的に述べるにとどめていますが、東証は具体的な数値まで開示するように上場企業に求めることが明らかになりました。来年6月の株主総会が集中する時期から実施することを求める模様です。

株主総会の議決「票数まで公表を」 東証、上場企業に要請へ(日本経済新聞2009年10月14日)

東京証券取引所は株主総会の議決結果について、議案の可決か否決かだけでなく、賛否の票数まで公表するよう上場会社に要請する方針だ。来年6月の株主総会から実施を求める考え。反対票の比率がどれだけ高いかなどを公表することで、より株主に対して透明性の高い経営を促す。

(略)

議決権行使結果の具体的な数値までの開示を求めていくことは、すでに公表されていたことで、具体的な実施時期が明らかになった点に新規性がある情報です。

上場制度整備の実行計画2009

すでに、議決権行使結果の数値まで公開している会社もありますが、極めて例外的です。この要請によってかなり多くの会社が開示に動くことになるので、大変影響の大きいことになると思われます。

もっとも、あくまで東証の要請に基づくものであり、法的な義務ではなく、公開した数値に何らかの法的な意味、効果が発生することにならないものでしたら、比較的、受け入れ可能なものになるのではないかと思われます。

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2009年10月13日 (火)

日立、上場子会社への公開買付の結果を公表 すべて90%超を確保

日立、上場しているグループ会社5社にTOBで完全子会社化 親子上場解消への続報です。

公開買付の結果が日立からリリースされました。

公開買付を行った上場子会社5社とも行使可能な議決権に占める割合(発行済み全株式の議決権から自社株の議決権を引いたものを分母として計算したもの)で90%を超える数を確保したことが公表されました。

社会イノベーション事業の強化について(当社子会社への公開買付けの結果に関するお知らせ)

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2009年10月11日 (日)

エル・シー・エーホールディングス、株主から株主総会召集請求を受けるも応じないことを公表

東証二部上場の経営コンサルティング会社エル・シー・エーホールディングスが、株主から取締役選任を目的とする株主総会の召集請求を受けていますが、これに応じないことを公表しました。

臨時株主総会招集請求に関する当社の対応についてのお知らせ

応じない理由としては、会社側は端的に必要がないからとしています。

株主による株主総会召集は会社法297条に規定があります。

第297条(株主による招集の請求)

総株主の議決権の百分の三(これを下回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上の議決権を六箇月(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)前から引き続き有する株主は、取締役に対し、株主総会の目的である事項(当該株主が議決権を行使することができる事項に限る。)及び招集の理由を示して、株主総会の招集を請求することができる。

2 公開会社でない株式会社における前項の規定の適用については、同項中「六箇月(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)前から引き続き有する」とあるのは、「有する」とする。

3 第一項の株主総会の目的である事項について議決権を行使することができない株主が有する議決権の数は、同項の総株主の議決権の数に算入しない。

4 次に掲げる場合には、第一項の規定による請求をした株主は、裁判所の許可を得て、株主総会を招集することができる。

一 第一項の規定による請求の後遅滞なく招集の手続が行われない場合

二 第一項の規定による請求があった日から八週間(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)以内の日を株主総会の日とする株主総会の招集の通知が発せられない場合

297条1項から召集請求するには、定款で変更していなければ議決権の3%以上が必要ですが、招集している株主の議決権を合計するとぎりぎり3.03%になりますので、定款で変更しているかにかかわらず請求権があることになります。

会社は応じないことにしているので、今後は4項から裁判所の許可を得て株主自らが召集するかという問題になりますが、しばらく時間的に間隔があくかもしれません。

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2009年10月 9日 (金)

トライアイズ臨時株主総会で監査役解任

このブログでも何度か取り上げているトライアイズの件の続報です。

積極的な活動を見せていた監査役の解任の株主提案が会社提案になって提案された臨時株主総会が本日開かれました。

監査役解任の議案は承認され、監査役が解任されるという結果となりました。

トライアイズのリリース

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2009年10月 6日 (火)

カッパ・クリエイトもESOP導入

ESOPの導入事例をいくつか取り上げていますが、かっぱ寿司を展開するカッパ・クリエイトも導入することになり、同社から公表されました。

カッパ・クリエイトのリリース

これは従業員持株会型の方で、スキームはこれまで取り上げたものとほぼ同じです。

例によって、従業員は随時株式を引き出すことはできないものになっています。

この報道とは別に、先日、日経が1面でESOPの導入が広がっていることを取り上げており、その中で、従来からの従業員持株会とESOPを比べていましたが、その中で従業員持株会は随時引出可、ESOPでは随時引出不可と整理されていました。

従来のからの従業員持株会でも、やたらと制限がついているものがあるので、大企業が導入している従業員持株会のような随時引出可能で譲渡も自由であるものばかりではないので、記事からはESOPがやや制限的なものである印象を受けかねない感じがしました。

実際には、そういう、やや制限的な従業員持株会とほぼ同じ内容で、スキームだけ信託にしたのがESOPという感じがします。

会社側からにとってのインセンティブがかなりあるからこそ導入が進展しているというのが現状だと思われます。

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2009年10月 4日 (日)

学研、会社分割に反対した筆頭株主から株式買取請求権の行使を受ける

学研は6月25日の定時株主総会で会社分割の承認を受け、事業を分割することになっていますが、これに反対した株主から9月30日に株式買取請求権の行使を受けたことが明らかになりました。

この株主は発行済み株式総数の19.81%を保有する株主とリリースで言及されており、有価証券報告書などと照らし合わせると筆頭株主であることが明らかになります。

株主様からの株式買取請求に関するお知らせ

学研公表の大株主

上記リンク先情報によると、筆頭株主は信託口ですが、大量保有報告書から調査すると、実際の筆頭株主は村上ファンドの関係者が設立したエフィッシモ キャピタル マネージメントです。

エフィッシモはこれまでも、難解か学研に対して株主提案等で動きを見せていましたが、株式買取請求権行使という形で撤退することになったもようです。

さて、基本の確認ですが、この場合の株式買取請求権は、本件の会社分割は新設分割ですので会社法806条1項になります。

第806条(反対株主の株式買取請求)

新設合併等をする場合(次に掲げる場合を除く。)には、反対株主は、消滅株式会社等に対し、自己の有する株式を公正な価格で買い取ることを請求することができる。

一 第八百四条第二項に規定する場合

二 前条に規定する場合

2 前項に規定する「反対株主」とは、次に掲げる株主をいう。

一 第八百四条第一項の株主総会(新設合併等をするために種類株主総会の決議を要する場合にあっては、当該種類株主総会を含む。)に先立って当該新設合併等に反対する旨を当該消滅株式会社等に対し通知し、かつ、当該株主総会において当該新設合併等に反対した株主(当該株主総会において議決権を行使することができるものに限る。)

二 当該株主総会において議決権を行使することができない株主

3 消滅株式会社等は、第八百四条第一項の株主総会の決議の日から二週間以内に、その株主に対し、新設合併等をする旨並びに他の新設合併消滅会社、新設分割会社又は株式移転完全子会社(以下この節において「消滅会社等」という。)及び設立会社の商号及び住所を通知しなければならない。ただし、第一項各号に掲げる場合は、この限りでない。

4 前項の規定による通知は、公告をもってこれに代えることができる。

5 第一項の規定による請求(以下この目において「株式買取請求」という。)は、第三項の規定による通知又は前項の公告をした日から二十日以内に、その株式買取請求に係る株式の数(種類株式発行会社にあっては、株式の種類及び種類ごとの数)を明らかにしてしなければならない。

6 株式買取請求をした株主は、消滅株式会社等の承諾を得た場合に限り、その株式買取請求を撤回することができる。

7 新設合併等を中止したときは、株式買取請求は、その効力を失う。

基本的なことですが上記から、実際に行使をするには、株主総会前に反対の旨を会社に通知して、かつ、実際に総会で反対することが必要です。

よって、当然に把握済みのことが実際に行使されたというだけのことになります。

今後は買い取り価格をめぐる交渉になりますが、折り合うことができないと、価格決定の申立てになり、司法の場で争われることになります。

価格決定の申立てがなされる場合は、経営権争奪や少数株主追い出しの性格のある場合が多いです。今回のケースではそういうこじれ方はしていませんが、ファンドとしては回収したい金額があるでしょうし、会社としても説明のつかない金額を払うと役員は任務懈怠になるでしょうから、難しい局面になる可能性もあるかもしれません。

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2009年10月 2日 (金)

シャルレ監査役会、株主からなされた旧経営陣に対する責任追及の訴えの提訴請求に対して不提訴理由書を送付

下着販売のシャルレがMBOに関連して経営陣に不適切な行為があったためMBOは不成立に終わり、その後、創業家出身の代表取締役が解職されました。

このMBOの失敗の事態について、同社の株主がシャルレに旧経営陣に責任追及の訴えを提訴するように提訴請求をしていましたが、同社監査役会は不提訴を決定して不提訴理由書を送付したことを明らかにしました。

株主からの訴訟提起請求に対する当社監査役会からの不提訴理由通知書の送付について

提訴請求は7月30日だったようですので、9月28日に不提訴理由書を送付したのは期限ぎりぎりということになります。

このブログで取り上げた限りでは、不提訴理由通知書はぎりぎりで送ることが多い模様です。慎重に検討する以上、当然のことだと思われます。

第847条(責任追及等の訴え)
六箇月(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)前から引き続き株式を有する株主(第百八十九条第二項の定款の定めによりその権利を行使することができない単元未満株主を除く。)は、株式会社に対し、書面その他の法務省令で定める方法により、発起人、設立時取締役、設立時監査役、役員等(第四百二十三条第一項に規定する役員等をいう。以下この条において同じ。)若しくは清算人の責任を追及する訴え、第百二十条第三項の利益の返還を求める訴え又は第二百十二条第一項若しくは第二百八十五条第一項の規定による支払を求める訴え(以下この節において「責任追及等の訴え」という。)の提起を請求することができる。ただし、責任追及等の訴えが当該株主若しくは第三者の不正な利益を図り又は当該株式会社に損害を加えることを目的とする場合は、この限りでない。
2 公開会社でない株式会社における前項の規定の適用については、同項中「六箇月(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)前から引き続き株式を有する株主」とあるのは、「株主」とする。
3 株式会社が第一項の規定による請求の日から六十日以内に責任追及等の訴えを提起しないときは、当該請求をした株主は、株式会社のために、責任追及等の訴えを提起することができる。
4 株式会社は、第一項の規定による請求の日から六十日以内に責任追及等の訴えを提起しない場合において、当該請求をした株主又は同項の発起人、設立時取締役、設立時監査役、役員等若しくは清算人から請求を受けたときは、当該請求をした者に対し、遅滞なく、責任追及等の訴えを提起しない理由を書面その他の法務省令で定める方法により通知しなければならない。
5 第一項及び第三項の規定にかかわらず、同項の期間の経過により株式会社に回復することができない損害が生ずるおそれがある場合には、第一項の株主は、株式会社のために、直ちに責任追及等の訴えを提起することができる。ただし、同項ただし書に規定する場合は、この限りでない。
6 第三項又は前項の責任追及等の訴えは、訴訟の目的の価額の算定については、財産権上の請求でない請求に係る訴えとみなす。
7 株主が責任追及等の訴えを提起したときは、裁判所は、被告の申立てにより、当該株主に対し、相当の担保を立てるべきことを命ずることができる。
8 被告が前項の申立てをするには、責任追及等の訴えの提起が悪意によるものであることを疎明しなければならない。

ちなみにこの株主は、自ら責任追及の訴えを提起する意向のようです。

旧経営陣に賠償請求せず シャルレ(神戸新聞2009年9月28日)

下着販売会社シャルレ(神戸市須磨区)の旧経営陣による自社買収(MBO)が失敗したとして前社長らを相手に賠償訴訟を起こすよう株主の男性が求めていた問題で、同社は28日、旧経営陣への提訴をしないことを決めたと発表した。男性は株主代表訴訟を神戸地裁に起こす方針。

株主で公認会計士の男性(60)=奈良県=は今年7月下旬、シャルレに対して、創業家出身の林勝哉前社長ら5人を相手にMBOのための株式評価経費など約5億円の賠償を求めて提訴することを要求する通知書を送付。これを受けて、同社監査役会は、社外の弁護士も交えて旧経営陣の責任について調査、検討した結果、「責任は認められない」とし、提訴しないとの通知書を28日に男性に送った。

(略)

解職しておきながら、一方で責任追及の訴えはしないというのは一貫性があるのかやや疑問が生じないでもないところです。

利益相反的な行動をしたために、MBOが不成立になり、MBOのための支出分を会社に損害を与えたことについては、任務懈怠の結果、会社に損害を与えたこと(423条1項)に該当するように思われます。

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2009年10月 1日 (木)

東京地裁、NowLoading株主提起の取締役会議事録閲覧謄写許可申立てを却下

NowLoading、取締役会議事録の閲覧謄写許可請求を起こされる(2009.04.25)の続報です。

東京地裁は申立てを却下したことが、NowLoadingのリリースで明らかになりました。

株主による取締役会議事録閲覧謄写許可申立て却下決定に関するお知らせ

上記リリースでは理由についてはまったく触れられていません。

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東京地裁、トライアイズ監査役が申立てた水から提起した株主総会決議取消訴訟の弁護士費用を監査費用として支払いを求める仮処分申立てを却下

トライアイズ監査役、自ら提起した株主総会決議取消訴訟の弁護士費用を監査費用として会社に支払を求める仮処分を申立て(2009.08.01)の続報です。

東京地裁は9月25日に決定で申立てを却下したことがトライアイズのリリースで明らかになりました。

仮処分命令の申立ての却下に関するお知らせ

上記リンク先のリリースによると、却下の理由は仮払いの必要性の疎明がないということとされています。

その内容は、監査役にとっての必要性だけではなく、支払いを受ける弁護士にとっての支払いを受ける必要性の疎明も必要であり、それがないとしていました。興味深い判断であると思われます。

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2009年9月30日 (水)

ESOPの導入事例が相次ぐ

このブログでESOPの導入事例をいくつかご紹介していますが、新しい導入事例がリリースされたので取り上げます。

新しく確認されたのは東京急行電鉄とヨネックスです。

東京急行電鉄のリリース

ヨネックスのリリース

スキームは基本的に似ていますが、東急のほうでは議決権行使を指図する信託管理人が労働組合の執行委員長になっています。

従業員持株会の議決権の行使には、会社の役員が理事長とかになって行うことが多く、この点に問題がおきかねないのですが、労働組合に任せるというのもどうなのでしょうか。

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2009年9月29日 (火)

東証、上場会社に独立役員を義務付けへ

会社法で定義された社外取締役の意義が真に社外の出身者であることを示していないことはこのブログでも何度でも取り上げています。

与党・民主党が検討している公開会社法にもこれを問題視する視点が入っていますし、先日このブログでも取り上げた日本取締役協会の調査でもこの視点から独立取締役なる概念を生み出して、真に社外の立場といえる取締役を検討していました。

この理解は社会において大きな流れとなりつつありますが、このたび東証が、独立役員なるものを上場企業に義務付けることを決定した模様です。

上場企業に「独立役員」を義務化 来年中、東証が発表(47NEWS2009年9月29日)

東京証券取引所は29日、社外取締役のように客観的な立場から経営判断を行う「独立役員」の導入を上場企業に義務付けると発表した。「独立役員」の定義を詰めた上で、年内にも要綱をとりまとめ、来年中に義務化する方針だ。

(略)

独立役員について東証は「一般株主保護のため、株主と利害相反が生じる恐れがない人」と説明。一般的には、経営陣から独立した立場で利害関係がない役員とされるが、詳細は今後詰める。

(略)

このブログでは、社外取締役の定義が一方通行になっていることばかり取り上げてきましたが、近時の議論の中では、支配株主出身の取締役なども含める見解が多く、社外取締役の規定の改正だけではすまなくなってきています。この独立役員も同じ観点から作られる概念となりそうです。

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2009年9月20日 (日)

新報国製鉄、退職慰労金廃止とあわせて従前の期間に対応する退職慰労金の一部を役員等が放棄をすることを発表

退職慰労金は批判が強いことから廃止してストックオプションなどに移行させる例が多く出ていることはこのブログでもたびたびお伝えしていますが、それに続く実例が現れ、加えて新しい興味深い対応がとられることが公表されましたので取り上げます。

ジャスダック上場の新報国製鉄が退職慰労金の廃止とこれまでの期間に対応する分の退職慰労金の打ち切り支給を行うことを公表しました。

これだけならこれまでの例と同じなのですが、加えてこれまでの期間に対応する退職慰労金の一部を支給を受ける役員等が放棄することもあわせて行い、特別利益は生じることまで公表されました。

役員退職慰労金制度の廃止及び特別利益の発生に関するお知らせ

なぜこのようなことをしたのか、なぜ一部のみなのか非常に興味深いものがあります。

単純に考えるなら、問題の指摘されているようなものですので廃止するならすべて支給しないようにするのは出てきてもおかしくない考え方です。

しかし、それならすべて放棄してもらえばよさそうなもので、一部にとどめたのはすでに権利が発生しているため、激変緩和という意図があるのでしょう。

上記のような考え方は堅実なもので妥当だろうと思いますが、役員等の報酬規制の観点からつめて考えると、実体法的には退職慰労金はどうなるのでしょうか。

退職慰労金は一般的には報酬の後払いとされています。よって会社法361条以下の報酬規制の規定が適用されます。

役員等の報酬は、賃金ではないので自らの債務を履行しても請求することはできず、株主総会決議を経て報酬額が確定して具体的な報酬請求権になります(判例)。そのかわり一度報酬請求権が生じると原則、減額や無報酬にすることはできません(判例)。

退職慰労金は退職してから会社から提案されるものですから、決議をとったかという意味で言うならまだ従前の期間についても決議は経ていません。しかし当然、内部的に退職慰労金規定があって、算定基準等が定められていることでしょう。

よって、現在の役員等の廃止前の期間についての退職慰労金に対する権利は微妙だと思われます。すくなくとも期待権はあるでしょうが、具体的な報酬請求権にはなっていないと思われます。

よって放棄してもらうのは報酬請求権があっても使える究極の方法ですから、大は小をかねるの観点からかなり堅実な手法といえるのではないでしょうか。

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2009年9月19日 (土)

日本取締役協会の調査で東証一部上場企業の社外取締役の3分の1は独立性が低いとの結果

日本取締役協会の「上場企業のコーポレート・ガバナンス(社外取締役)調査(2009)」が公表されました。

社外取締役に関する総合的な実情調査ですが、興味深い結果が出ているように思われました。

すべてに関して重要ですが、特に昨今、与党となった民主党が以前から検討している公開会社法と関連するところを見てみたいと思います。

公開会社法の素案では社外取締役の要件を厳格化することが提唱されていますが、この調査でも社外取締役のうち、法的には社外取締役であっても、実質的に独立性が特に高い取締役とそうではなく社外取締役の定義が一方通行になっていることなどを利用して実質的には「社外」とはいえないような取締役を分けています。

その際の独立性の要素としては、

東証コーポレート・ガバナンス報告書の記述(会社との関係、補足説明)から、a 親会社出身、
b 関係会社出身、 c 大株主、 f 特定関係事業者業務執行取締役、執行役等の配偶者等親族その他、g 親会社・
当該親会社の子会社から役員としての報酬等その他の財産上の利益授受を除いた場合。

としており、この観点から法的には社外取締役である実際の取締役たちを峻別をした結果、以下のようになったとれています。

東証1 部上場企業1,698 社で、社外取締役を選任している企業は787 社、そののべ人数は1,552 人と
なる。そのうちより独立性がより高いと思われる社外取締役(以下、独立取締役と表現)の数は、1,043
人となった。

約3分の1が「社外」という語から想起されるほどの独立性を有していないことが明らかになりました。

この現状は、提唱されている公開会社法の社外取締役要件の厳格化の必要性を肯定する方向に作用しそうですが、一方で何か弊害がおきているかも問題であり、社外取締役の供給が十分ではないのだという経済界から言われている言説を補強するものにもなりえます。

私見では、社外取締役の候補がそれほどいないわけでもないと思われますし、社外取締役の定義がゆるいことを利用している例も見受けられ、それらはガバナンスを緩めているのではなく、子会社を委員会設置会社で役員の数を抑えるのに使っている例が多く見られます。これらの現状も考慮に入れると、社外取締役の要件を厳格化するべきとまでいえるかはまだわからない感じがします。

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パラマウントベッド、ESOPを導入

パラマウントベッドが取締役会決議でもってESOPを導入したことを発表しました。

「信託型従業員持株インセンティブ・プラン」の導入について

リリースによると野村證券がアレンジしたもので、先日ご紹介したレオパレス21のに近いものです。

ESOP導入事例として取り上げておきます。

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2009年9月14日 (月)

民主党の公開会社法素案が報道される

本日の日経の法務面で、民主党が前々から言っていた公開会社法の素案が報道されました。

会社法と金商法の両方の内容に触れているという制定すること自体が大変な法律になりそうです。

以下、紙面から意義深いものを一部引用します。

  1. 情報開示に関連して、株主の随時質問権と会社の回答義務を設ける
  2. 社外取締役の要件を強化
  3. 監査役に従業員代表をいれる
  4. 監査役の機能強化 会計監査人の監査役(会)に対する報告義務を設ける
  5. 会計監査人の選任・報酬決定権限を監査役(会)に移行
  6. 子会社の重要な意思決定に親会社の株主総会の承認が必要
  7. 子会社債権者に親会社および親会社取締役に対する損害賠償請求を容認
  8. 親会社株主に子会社役員への代表訴訟提起権を付与

公開会社というよりは結合会社法といったほうがよい内容が続々明らかになってきました。

連合から頼まれたために入れたと思われる監査役に従業員代表は表面的に掲げられている効果はまるでないと思われますが、それ以外の点については、企業グループ化で懸念されている株主や債権者に不利益が及んでいる問題に対するストレートな対象を考えていることが伺われます。

会社の親子を超えて、株主や債権者が請求をすることは現行法では事実上の取締役の法理などかなり難しい構成を繰り出さないといけませんが、端的に訴えられるようにしようとしていることがわかります。

もっとも、株主や債権者保護の内容だけが見受けられ、企業側としては大変なことになることが予想されます。

選挙前に明らかになった内容よりもはるかに、成立に向けて大変な紆余曲折が予想せざるを得ないものになっています。

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2009年9月11日 (金)

金融庁、上場企業に役員報酬開示義務付けへ

役員の報酬の開示は最近、株主総会で個別開示を求める株主提案が出されるなど会社法の分野で問題になっていますが、世界的には金融恐慌を生んだ一因が金融界の巨額の成功報酬にあるとされており、市場法としての公法的規制の観点から開示を求める機運が高まっています。

日本では、欧米の金融機関ほどの高額報酬はありませんが、この流れに倣って金融庁も上場企業に役員報酬の開示を義務付ける方向であることが報道されました。

役員報酬の公表義務に 金融庁方針、今3月期から(日本経済新聞2009年9月11日)

金融庁は2010年3月期から上場企業などに役員報酬の公表を義務付ける方針を固めた。現在は任意になっている有価証券報告書での公表について、役員報酬総額のほか、支払い形態や報酬額の決定方法を掲載するように求める。報酬の透明性を高め、経営陣が高額報酬を目的に短期的な利益追求に傾斜していないかを投資家が監視しやすくする。

(略)

具体的には有価証券報告書において公表することを義務付けるとされています。上記引用やリンク先では載っていませんが、本紙面の記事では個別の開示までは踏み込まないように思われます。

基本的な点ですが、会社法における取締役の報酬規制は、株主総会決議が必要ですが総額を決めればよく具体的な配分は取締役会にゆだねられています。

第361条(取締役の報酬等)

取締役の報酬、賞与その他の職務執行の対価として株式会社から受ける財産上の利益(以下この章において「報酬等」という。)についての次に掲げる事項は、定款に当該事項を定めていないときは、株主総会の決議によって定める。

一 報酬等のうち額が確定しているものについては、その額

二 報酬等のうち額が確定していないものについては、その具体的な算定方法

三 報酬等のうち金銭でないものについては、その具体的な内容

2 前項第二号又は第三号に掲げる事項を定め、又はこれを改定する議案を株主総会に提出した取締役は、当該株主総会において、当該事項を相当とする理由を説明しなければならない。

個々の報酬額を秘密にするのが日本の企業社会の大きな特徴なのですが、企業側の抵抗が大きいことからこの点を破るような開示にはならないようです。

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2009年9月 8日 (火)

セイクレスト、第三者割り当て後に割り当て先が直ちに株式を譲渡したことについて経緯を説明

セイクレスト、第三者割当増資後、直ちに割当先が株式を譲渡の続報です。

不動産業のセイクレストが第三者割当増資をした後に、割当先が直ちに株式を譲渡した件で、一連の経緯の説明を公表しました。

第三者割当株式の譲渡に関する一連の経緯について

この件では、有利発行ではないので、特別決議で承認した相手方から譲渡したという問題はないのですが、割当先選定方針を公表してそれに則って定めたことになっているので、説明の必要に迫られていました。

説明は上記リンク先のとおりです。これで説得力として十分でしょうか?

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2009年9月 7日 (月)

フュージョンパートナー、買収防衛策を廃止

データベース事業なで大証ヘラクレス上場のフュージョンパートナーが買収防衛策を廃止したことを公表しました。

当社株式の大規模買付行為に関する一定の合理的なルール(買収防衛策)の廃止について

取締役会決議でもって廃止したとのことです。

廃止の理由には社会情勢の変化を挙げていますが、今後、再び買収防衛策を導入する可能性について言及があり、これもまた今後の情勢をにらんでのことになりそうです。

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2009年9月 6日 (日)

レオパレス21、ESOP導入を発表

ESOPの導入は進んでいるようですが、新しい導入例とスキームの概略が公表されたのでここで記録の意味を込めて取り上げていきます。

賃貸で有名なレオパレス21が従業員持株会を発展させたESOPを導入することを公表しました。

「従業員持株会連携型ESOP」導入に関するお知らせ

上記リンク先のスキームの概要から行くと、従業員が株式を引出権を有しているのかがよくわからないのですが、特に明示されていないことから、退職時または信託の終了時まで株式を手にすることはできないのだとすると、判例裁判例で問題となったよくある従業員持株会と同じということになるかと思います。

株式の引出しが随時可能である従業員持株会もあり、大企業ではそういうのが多いと思われます。これをそのままESOPにする形もありますが、そちらではない従業員持株会のESOP版の実例もあるということになりましょう。

理念的にはESOPは、インセンティブ報酬のための従業員持株会型と、退職後の給付を目指すものの二種類が考えられていますが、これは引き出せない従業員持株会をESOPにするとどちらの性格も併せ持ったものになりそうです。

これは会社側から考えると、従来からの従業員持株会に比べると節税できますし、安定株主をつくるというガバナンスの観点、自己株式の安定消化の点でも意味があるものになります。

会社にとっても意義の大きいESOPの導入は今後も着実に進みそうに思われます。

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2009年9月 4日 (金)

ビューティ花壇、会社が監査役の交代を考えたところ、監査役続投の株主提案がでたため、会社提案の監査役選任議案に監査役の同意が得られない事態に

葬儀祭壇用の生花業で東証マザーズ上場のビューティ花壇で、株主提案をめぐり奇妙な状況が生じています。

株主提案をしているのは創業者であり大株主の名誉会長で、自らと子会社の役員の役員選任と、現在の監査役の再任の株主提案をしています。

これに対して、会社は現経営陣の役員選任と監査役の交代を提案する意向であるために、対立が生じています。

当社定時株主総会における株主提案権行使に対する当社の考え方について

役員選任議案に関する会社提案と株主提案の対立だけなら支配権をめぐる争いというだけですが、今回は監査役選任議案が関係しているために、対立がそのまま会社法の問題も生む事態になっています。

会社法の条文によると、監査役には会社提案の監査役選任議案に拒否権があります。

第343条(監査役の選任に関する監査役の同意等)

取締役は、監査役がある場合において、監査役の選任に関する議案を株主総会に提出するには、監査役(監査役が二人以上ある場合にあっては、その過半数)の同意を得なければならない。

2 監査役は、取締役に対し、監査役の選任を株主総会の目的とすること又は監査役の選任に関する議案を株主総会に提出することを請求することができる。

3 監査役会設置会社における前二項の規定の適用については、第一項中「監査役(監査役が二人以上ある場合にあっては、その過半数)」とあるのは「監査役会」と、前項中「監査役は」とあるのは「監査役会は」とする。

4 第三百四十一条の規定は、監査役の解任の決議については、適用しない。

具体的には、監査役(監査役設置会社の場合は監査役会)の同意を得ないと取締役は監査役選任議案を提案することができません。

これは平成13年の商法改正(議員立法)で監査役の強化のために入れられたもので会社法でも引き継がれ、適用対象を一般化したものです。

本件では、株主提案によると監査役は再任されるのですが監査役はこちらに賛同しており、会社提案に同意しませんでした。

よって会社は343条の要件を満たさないという状況になっています。

ビューティ花壇としては、監査役選任議案について株主提案しかない状況になり、それには当然反対しています。よって、株主提案の議案が否決されたら、一時監査役の選任を求めることで対処する意向とされています。

しかし、今回のことで監査役の同意権が案外強力であることが浮き彫りになったように思われます(以下の記述は本件におけるビューティ花壇の現監査役が自分の利益の観点から行動していると考えるものではなく、抽象的に検討しているだけです)。立法趣旨からいくと監査役の同意権は会社に都合のいい監査役に交代させようとするようなことを阻止するためのものでしょうが、支配権争いのもとで自由裁量で同意をされると大変なことになると思われます。

監査役も善管注意義務を負うので自分の利益の観点から同意権を行使した場合には、任務懈怠になりますが、それはあくまで監査役の責任の話で会社提案の方の要件はどうにもならないように思われます。そうなった場合、監査役の解任を諮るほかないのでしょうか。

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2009年9月 2日 (水)

トライアイズ、臨時株主総会に株主が提案していた監査役解任議案を会社提案すると発表

トライアイズの件の続報です。

株主提案で、訴訟提起など活発な活動をしている監査役の解任議案がでていることをトライアイズが公表したことをお伝えしましたが、トライアイズがこれを会社提案にすることを公表しました。

臨時株主総会の開催日変更及び議案追加に関するお知らせ

トライアイズは株主提案に賛同する旨を述べていたのですが、これを会社提案にしたことについては、承認を株主に求めるなら同一提案を会社からするのが一般的であり妥当だと考えたからとしています。

株主提案に会社が乗っかる場合には、改めて会社が出しなおすというのが一般的かはよくわからないのですが、体裁のような面以外に実質的な意味はあるでしょうか。いまいち浮かばないところです。

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2009年8月26日 (水)

住友信託銀行が株式持合解消の受け皿商品を開発

株式の持合がまた進みつつある昨今ですが、一方では解消の動きも出ています。

住友信託銀行が株式の持合解消に信託を活用した商品を開発しました。

持ち合い株、信託で解消 住友信託銀行が新型(日本経済新聞2009年8月26日)

(略)

住友信託の商品は保有株を同行が管理する信託勘定に譲渡するものの、信託期間中(1~5年を想定)は企業が議決権の行使を同行に指図できるようにして、議決権を事実上残す仕組み。同行の提携先であるドイツ証券が企業に株式の譲渡代金を支払い、信託期間の終了とともに同証券がこれらの株式を取得する。信託期間中に株式が市場で流通することはない。(07:00)

要するに一気に譲渡してしまうとハレーションが大きいので、経済的には譲渡するものの議決権行使はできるようにしておくことでショックを緩和をするというようなものです。

買い戻し権はついておらず、最終的には確定的にドイツ証券に移転するので、現在持合をしている企業がどう受け取るかは微妙ではないかと思ったのですが、30社強が検討しているということで反応は上々のようです。

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2009年8月24日 (月)

北陸ミサワホーム、全部取得条項を活用して非公開化

北陸ミサワホームが普通株式に全部取得条項をつける手法での非公開化を企画して、第一段階の定款変更が承認されました。

当社の非公開化等のための定款の一部変更及び 全部取得条項付普通株式の取得に関する承認決議のお知らせ

このスキームは、要するに牛角のレックスHDのMBO事案でも使われたものです。

具体的には以下のような手順になります。

  1. 定款変更で普通株式に全部取得条項をつける
  2. 特別決議で株式を取得。対価には交換比率を調整した株式をあてて、引き続き株主となる株主以外には端数のみの割当になるようにする
  3. 端数を現金交付で処理

本件特有のポイントではないのですが、いくつか確認しておきたい点があります。

まずは、1に関連してですが、既発行株式に会社法108条に規定されている種類株式の内容を付する場合には定款変更で行います。

また3についてですが、会社法234条により、1に満たない端数の株式は現金で処理することができます。これは極めて大きな意義を有して、少数株主の退場に活用されています。

その代わりに株主の保護のために、反対株主の買取請求権と価格決定の申立てが用意されているわけです。

この場合に、価格決定の申立てで適正対価をめぐって問題となったのが牛角事件であったわけです。

牛角事件の当否はともかくとして、これで使われたゴーイングプライベートの手法は実績を積み重ねていることが改めて分かる一件です。

さて、上記リリースでは全部取得条項をつけた後の株式を全部取得条項付普通株式と呼称されていますが、何だか妙なネーミングに感じます。

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2009年8月23日 (日)

東証、マザーズで株価9割下落で上場廃止へ

東証が改革案で、マザーズ市場において株価が9割下落したら上場廃止とすることを固めたことが明らかになりました。

マザーズ、株価9割下落で上場廃止 東証が改革案(日本経済新聞2009年8月23日)

東京証券取引所は新興企業向け市場「マザーズ」の改革案を固めた。上場時に株式を公募した価格に比べて株価が9割以上下落し、一定期間回復しなければ上場廃止の対象とする。一方、上場誘致の対象も広げ、企業のすそ野の拡大も目指す。株価を意識した経営を求めるとともに、上場企業の新陳代謝を促し、市場の活性化を目指す。

(略)

25日の取締役会で改革案を決定するとされています。

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2009年8月22日 (土)

エル・シー・エーホールディングス、定時株主総会の取締役選任議案に対して修正動議が可決され、候補を総入れ替えで可決

経営コンサルティングで東証二部上場のエル・シー・エーホールディングスで会社提案の定時株主総会の取締役候補に対して株主が修正動議を提出・可決され、候補がすべて入れ替えられて、その後、総会で可決されるということがありました。

これだけでも珍しいですが、さらに当該株主は事前に会社へ修正動議を提出することを予告しており、総会前に会社がリリースするという異例の展開に終始しました。

第45 期定時株主総会の決議および代表取締役の異動に関するお知らせ

第45 期定時株主総会における修正動議に関するお知らせ

なお、エル・シー・エーではこの直前に代表取締役が健康上の理由で解職されており、代表取締役が交代していました。この解職された代表取締役と新しい代表取締役はともに会社提案の取締役候補に入っていたのですが、この修正動議でどちらも外れることになりました。

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2009年8月14日 (金)

上場企業で株式の持ち合い傾向が復活

本日の日経に載っていた記事なのですが、上場企業で株式も持合が復活しているとのことです。

しかも従前は持合関係になかった企業間でも持合の実例が出ているようです。記録しておく意味があると考え取り上げます。

上場企業、新たな株持ち合い続々 東芝とキヤノンなど(日本経済新聞2009年8月14日)

上場企業の間で株式の持ち合いが増えている。東芝とキヤノン、三菱電機と三菱地所など有力企業が新たに株式を相互取得したことが明らかになった。持ち合い比率は3年連続で上昇。提携関係の強化などが目的で、発行済み株式総数の1%未満と小幅なケースが多い。ただ株式相場が低迷した2008年度は上場企業による保有株式の評価損計上が相次いだこともあり、株主の目は厳しさを増しそうだ。

(略)

ネットでは省略されていましたが、本紙面では代表的な持合関係について企業名が出ていましたので以下に引用します。

取引先との関係強化  
東芝 キヤノン
JR東日本 川崎重工
三菱電機
パナソニック ダイキン工業
日本製鋼所 東レ
住友金属
日本風力開発
大同特殊鋼
明電舎
電気化学工業
ローム 日本電産
オムロン
日本写真印刷 堀場製作所
日本電産
王子製紙 凸版印刷
日清紡HD オンワードHD
財閥系の関係強化  
三菱電機 三菱地所
東レ 三井不動産
敵対的買収・株主総会対策  
学研 富士ソフト
早稲田アカデミー
 
 

会社法的には株式の持合は、反対を気にしなくてよい議決権があるということでコーポレートガバナンスの機能を低下させるので問題があります。

またファイナンスの観点からも、会社が株式を持つというのはもっとも非効率な資本政策です。よって、グループ内関係の構築や支配権をめぐって持分を取得するのない限り、無駄遣いと言わざるを得ません。

株価対策などを考えてやっているのなら、かえって株価を下げかねません。もっとも取引関係を維持するために出資するというのは一定程度合理性がありますが、よく考えると少数持分しかない相手に遠慮することは資本多数決の考えからいくとあまり理由のあることではないので、やはり持合に積極的意義はないと考えるのが妥当でしょう。

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2009年8月12日 (水)

セイクレスト、第三者割当増資後、直ちに割当先が株式を譲渡

不動産業でジャスダック上場のセイクレストで、第三者割当増資後に、長期保有目的を割当先選定基準のひとつと公表していたにもかかわらず、当該割当先が割当後1ヶ月も経たないうちに株式譲渡を次々行っていることが明らかになりました。

第三者割当株式の譲渡に関するお知らせ(7月17日付)

8月6日付

8月10日付

譲渡制限がついているのでなければ、株式の譲渡は自由ですが、第三者割当増資は濫用がありうることから、非常に問題が起きうるものです。

本件では債務超過の解消を目的としており、株価の90%を基本にして発行価格を決めているので有利発行ではないといえそうなのですが、希釈化がかなり激しく、加えて一部がデッドエクイティスワップで債務を株式化するものであることから、既存株主にとっては大変な地位の変動をもたらすものです。

セイクレストは、第三者割当増資に関して、財務的に極めて危機にあるため他に手段がないように説明していたのですが、直ちに譲渡がされたことで長期保有を割当先の選定基準として掲げていたために、ジャスダックからも説明を求められる事態になっている模様です。

本件では株価が極めて下落局面であったため有利発行の問題が生じうることを別とすれば、現行の会社法の問題は正面からは生じてこないように一見は思われますが、色々と引っかかるもののある事案であるように感じます。

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2009年8月11日 (火)

東洋機械金属、選任した監査役が社外監査役の要件を満たしていなかったために選任を辞退したところ監査役の法定員数を割り込んだために、神戸地裁の決定によって一時監査役を選任

監査役の選任ついては会社法で会社の機関構成によって様々な規制が定められていますが、上場している大企業で考えると、(委員会設置会社ではない限り)監査役会設置会社であることが多いですから、監査役は3人以上で半数以上が社外監査役である必要があります。

第335条(監査役の資格等)

第三百三十一条第一項及び第二項の規定は、監査役について準用する。

2 監査役は、株式会社若しくはその子会社の取締役若しくは支配人その他の使用人又は当該子会社の会計参与(会計参与が法人であるときは、その職務を行うべき社員)若しくは執行役を兼ねることができない。

3 監査役会設置会社においては、監査役は、三人以上で、そのうち半数以上は、社外監査役でなければならない。

余談ですが短答のための知識としては、過半数ではなく半数以上であるところに注意が必要です。

本論ですが東証一部大証一部上場の東洋機械金属で、選任した社外監査役が社外監査役の要件を満たさないことが発覚して選任を辞退したことから、監査役が2名になってしまい上記の3名を割り込むことになるので、神戸地裁に一時監査役の選任を申し立てて決定を受けて選任したことがリリースされました。

一時監査役の選任に関するお知らせ

社外監査役の定義が会社法の定義規定にありますが、社外取締役と似ています。当該会社かその子会社の役員等や使用人でなかったことという一方通行的な規律になっています。

第2条(定義)

十六 社外監査役 株式会社の監査役であって、過去に当該株式会社又はその子会社の取締役、会計参与(会計参与が法人であるときは、その職務を行うべき社員)若しくは執行役又は支配人その他の使用人となったことがないものをいう。

東洋機械金属の件で具体的にどのようなことで要件を満たさなかったのかは不明なのですが、2条16号にあたらないのを失念したというのは、それほどあることではないと思います。

なお、一時監査役選任の根拠規定は以下の346条になります。

第346条(役員等に欠員を生じた場合の措置)

役員が欠けた場合又はこの法律若しくは定款で定めた役員の員数が欠けた場合には、任期の満了又は辞任により退任した役員は、新たに選任された役員(次項の一時役員の職務を行うべき者を含む。)が就任するまで、なお役員としての権利義務を有する。

2 前項に規定する場合において、裁判所は、必要があると認めるときは、利害関係人の申立てにより、一時役員の職務を行うべき者を選任することができる。

3 裁判所は、前項の一時役員の職務を行うべき者を選任した場合には、株式会社がその者に対して支払う報酬の額を定めることができる。

4 会計監査人が欠けた場合又は定款で定めた会計監査人の員数が欠けた場合において、遅滞なく会計監査人が選任されないときは、監査役は、一時会計監査人の職務を行うべき者を選任しなければならない。

5 第三百三十七条及び第三百四十条の規定は、前項の一時会計監査人の職務を行うべき者について準用する。

6 監査役会設置会社における第四項の規定の適用については、同項中「監査役」とあるのは、「監査役会」とする。

7 委員会設置会社における第四項の規定の適用については、同項中「監査役」とあるのは、「監査委員会」とする。

この346条についてはかなり判例裁判例など実例が出ていることはすでにこのブログで何回か取り上げているとおりです。

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2009年8月 6日 (木)

トライアイズの個人株主、監査役解任を求めて株主提案権行使

一連のトライアイズの件の続報です。

トライアイズが9月に予定している臨時株主総会の議題として個人株主がこれまでの一連の積極的な行動をしている監査役の解任を提案したことが明らかになりました。

株主提案権の行使に関するお知らせ

トライアイズが公表しているのですが、個人株主であるために名前は伏せられています。

株主提案権の行使は議題の提案とと議案の提案のの提案の二種類がありますが、本件では会社が示した目的に含まれていないので議題になります。

第303条(株主提案権)

株主は、取締役に対し、一定の事項(当該株主が議決権を行使することができる事項に限る。次項において同じ。)を株主総会の目的とすることを請求することができる。

2 前項の規定にかかわらず、取締役会設置会社においては、総株主の議決権の百分の一(これを下回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上の議決権又は三百個(これを下回る数を定款で定めた場合にあっては、その個数)以上の議決権を六箇月(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)前から引き続き有する株主に限り、取締役に対し、一定の事項を株主総会の目的とすることを請求することができる。この場合において、その請求は、株主総会の日の八週間(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)前までにしなければならない。

3 公開会社でない取締役会設置会社における前項の規定の適用については、同項中「六箇月(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)前から引き続き有する」とあるのは、「有する」とする。

4 第二項の一定の事項について議決権を行使することができない株主が有する議決権の数は、同項の総株主の議決権の数に算入しない。

トライアイズが定款で株主による議題提案の要件を下げているかもしれませんが、リリースからは400個の議決権を有しているとのことなので会社法の規定によっても議題を提案できるということがわかります。

株主提案権行使があったことは、その議題が要件を満たしている場合には召集通知に記載しないといけないわけですが、それ以外に別途リリースをするところにはやや意図があるかもしれません。

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2009年8月 1日 (土)

トライアイズ監査役、自ら提起した株主総会決議取消訴訟の弁護士費用を監査費用として会社に支払を求める仮処分を申立て

トライアイズ監査役、自らが行った仮処分申立ての弁護士報酬等の訴訟費用を監査費用として会社に請求する訴訟を提起(2009.07.01)の関連情報です。

監査役が監査費用を会社に請求する訴訟を提起ということ自体かなり珍しいですが、その訴訟提起後の7月10日に、同じ監査役が、すでに訴訟を提起したものとは別件に関する費用請求について、仮処分の申立てをしていたことがトライアイズから公表されました。

仮処分命令の申立てに関するお知らせ

本訴提起をしているのは、自分の解任議案の差止に関しての弁護士費用なのですが、同監査役は別に取締役選任決議等の総会決議取消訴訟を提起しており、この弁護士費用の仮払いの仮処分を申し立てています。

トライアイズは、取り消し訴訟への対応として再決議をすることを表明しており、監査役の訴訟追行の必要性を否定しています。真っ向から対立しています。

会社と監査役がここまで対立すること自体非常に想定しがたいものがありますが、しかも監査費用の支払をめぐる訴訟や仮処分という形で争われるというのも極めて珍しいように思えます。

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2009年7月31日 (金)

日立、グループ会社完全子会社化のTOBについて公表

日立、上場しているグループ会社5社にTOBで完全子会社化 親子上場解消へ(2009.07.27)の続報です。

27日時点では、まだ決定したものではないと日立は述べていましたが、翌日の28日に正式に公表をしました。

日立のリリース

今回の日立の動きは、親子上場の問題を自ら解消しようというコーポレートガバナンスの点から重大な意義を有する行為のように考えられますが、リリースではそのように述べておらず、事業強化策であるという言い方をしています。

ちなみにこれは海外でもそれなりに報道されたのですが、どれも親子上場の観点から取り上げていました。この違いが興味深いところです。

なお日立の親子上場に該当する上場関連会社はまだまだたくさんあります。16社あるとされているので、まだ11社残ることになります。これらについても憶測から買いが集まっているのですが、日立が親子上場を完全に解消する意図があるのかは、上記リリースの説明のしかたから行くと、まだ分からない感じがします。

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2009年7月27日 (月)

日立、上場しているグループ会社5社にTOBで完全子会社化 親子上場解消へ

親子上場については度々取り上げていますが、日立製作所が上場しているグループ会社5社に対して、公開買付で完全子会社化をして、親子上場状態を一部解消することが報道されました。

マクセルなど上場5社、日立が完全子会社化 8月からTOB(2009年7月27日)

日立製作所は日立マクセルなど東証に上場しているグループ5社を完全子会社にする。8月下旬に株式公開買い付け(TOB)を開始し、最大3000億円を投じ、それぞれ約5~7割の出資比率を全額出資へ引き上げる。日立は2009年3月期に国内製造業では最大となる7873億円の連結最終赤字に陥った。グループ戦略を転換し、上場子会社16社のうち社会インフラなど成長が見込める分野の5社を一斉に取り込み、経営再建を急ぐ。

完全子会社にするのは日立マクセルのほか、日立プラントテクノロジー、日立情報システムズ、日立ソフトウェアエンジニアリング、日立システムアンドサービスの計5社。週内に発表する。(10:01)

例によって、日立は「当社としては決定・公表したものではない」と述べています。

報道では経営基盤強化のように報道されていますが、批判が強い親子会社上場を解消する姿勢を市場にアピールするという意図があるのは明らかだと思われます。

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2009年7月25日 (土)

アールテック・ウエノ、取締役会の機能強化を図るとして執行役員制度を廃止

大証ヘラクレス上場の眼科向け医薬品製造開発のアールテック・ウエノが、執行役員制度を廃止することを表明しました。

執行役員制度の廃止および組織変更に関するお知らせ

理由としては、取締役の責任強化と取締役会の運営強化をあげています。

執行役員は、会社法に制定されている役員等ではなく、従業員の最上位に対して付している名称であることが多いです。取締役の人数を減らして取締役会の機能強化を図るとして一部取締役を執行役員に切り替えるという形で導入が進んできたものですが、これを見るとまるで逆です。

しかし、リリースには、経営の引き締めのために人員の効率化という下りがあり、執行役員の業務内容を取締役が行うようになり、取締役の直轄下になるようなイメージなのかもしれません。

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2009年7月24日 (金)

民主党が制定を目指す公開会社法の内容が明らかになる

昔から民主党が主張していた公開会社法の内容が報道されました。

概観すると内容の一部に理解しがたいものが含まれているように思われます。

社外取締役を義務化 民主公約 上場企業対象 従業員の監査役も(東京新聞2009年7月23日)

民主党が衆院選のマニフェストで掲げる「公開会社法(仮称)」の詳細が明らかになった。上場企業に対し、社外取締役の導入を義務付けて経営の監視を強化する。監査役会には従業員代表の選任を求め、雇用者の側からも経営陣の暴走を防ぐ。

株式を公開する企業の不祥事が相次げば、株式市場からの投資家離れを加速させる恐れがある。このため民主党は政権を獲得した場合、非上場企業よりも厳格な経営監視を上場企業に求める方針だ。

経営体制の強化には、社外取締役の導入義務化を柱とする。米英では既に義務化されているが、東京証券取引所に上場する55%の会社は社外取締役を一人も置いていない。東証の売買シェアの半分以上を占める海外投資家からの要望が強い。

民主党は取締役会のうち三分の一程度を社外役員とし、外部からの経営チェック機能を高めたい考えだ。

社外取締役の条件も厳しくする。親会社や重要な取引を行う企業から派遣された者は社外取締役になれないようにすることで、なれ合いを防ぐ。

一方、監査役会に従業員代表の選任を義務付け、監査役制度を強化する。雇用者側の視点を経営に反映させ、不当な従業員解雇や事業売却を経営陣が行えないようにする。

(略)

まず、ネーミングは、語感の問題なのかもしれませんが、上記報道からは上場会社を念頭にしているみたいなので、公開会社法という名前はどうなのでしょうか。

社外取締役の義務付けに関しては、アメリカの会社法に比べると人数が少なめで設置を義務付けるとしている点で現在の監査役設置会社にも受け入れられるように現実的になっているとはいえると思います。もっとも現行法で親会社から来たら社外取締役扱いになっているところは改めることが明らかになっています。もっともこれで困るのは委員会設置会社にしている子会社ですので上場していることはまずないので、現実にはそれほど問題にならないでしょうが。

さて最大の問題は、監査役に従業員代表をいれるというドイツ会社法のような点です。

しかも、その目的が、雇用者の視点を経営に反映させるためとしており、適法性監査に限られている監査役の機能を明らかに逸脱します。上場会社に関しては監査役はドイツ法のようにするということでしょうか。これは非常にハレーションが大きく、本当にやると大変なことになりそうです。

一方、適法性監査のままで、従業員代表を入れるなら、現行とあまり変わらないので、特段の成果はないでしょう。連合が、組合に事業再編に関する拒否権を与えるように元来から主張しているのでこれに応えるものにしようというのかもしれません。会社法の内容をかなり改正するものであり整合性の観点から、法制審議会を通すくらいの非常に慎重な検討を要するのではないかと思われますが、特別法だとすることに意図があるのかもしれません。

さて、肝心の労働者代表が監査役会に参加して経営に参加しているドイツ会社法ですが、実証研究によると、経営側に押し切られているということが明らかになっています。参加しているだけで満足してしまうのか、結果的には経営側の思い通りになっているとされています。また、監査役会を通すために要するコストが非常に大きいために、ドイツの会社はかなり競争力をそがれているともいわれています。

今回の公開会社法が、ドイツ会社法がすばらしいと思った結果なのかまでは分かりませんが、よくよく検討した方がいい点は多いかもしれません。

労働者の関与する機会を設けるなら、むしろ監査役に入るという不可解なことをするよりは、正社員だけではなく労働者が多様化してしまっている現実を直視して、従業員代表制度を労働法の方で正面から規定するようにしたほうが現実的だし、本当に働くもののためになると思われます。現在の連合は正社員の組合であり、正社員の労働条件の切り下げにつながる非正規社員の組織化は、建前はともかく本音では乗り気ではないですし、非正規社員の労働条件の改善には及び腰であろうと思われます。

監査役にいれるとなると、数は多くはないですから、正社員かつ多数労働組合から1人だけ選出ということになると思われます。多様化してしまった労働者の多様な利害を反映してすべての労働者のためを考えるなら、やはり労基法の改正に正面から取り組むべきではないでしょうか。

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2009年7月22日 (水)

旧カネボウ個人株主、産業再生機構からの種類株取得の際の価格の公表がなかったため普通株のTOBの価格が不当に低かったとしてトリニティを提訴

旧カネボウの個人株主が投資ファンドのトリニティ・インベストメントを新たに提訴しました。

本日の日経朝刊に記事があったのですが、ネット版には載っていないようなので引用はなしです。

今回の提訴は、トリニティが産業再生機構から種類株を相対で取得した対価は201円であるのに、そのことを開示しなかったために、一般株主の普通株式に対するTOB価格が162円になり、高く処分する機会を失ったというものです。

201円の方が公開されていれば、TOBに応じなかったとか、安く提示されたのでTOBに応じるわけに行かず売ることができなかったという趣旨のようです。

種類株と普通株とでは全く同じ価値とはいえませんから、普通株も201円で買うべきであったのだとはいえませんので、適切な価値は別途普通株について計算する筋合いのものでしょう。

ちなみにTOB後に少数株主からの買取価格に関する価格決定の申立てに関しては、東京地裁は360円が適当と判断しています。これはまだ確定していませんが、トリニティの提示した少数株主に対する買取価格はTOB価格と同じであったので、TOB価格も安すぎるといえるかもしれません。すると今度の訴訟にも理由は十分にあることになりそうです。

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株主総会の議決権行使結果を開示した会社は総計で27社に

議決権行使結果の開示がわずかながら始まる(2009.07.13)の続報です。

6月24日段階で、株主総会の議決権行使結果を開示した会社は7社と報道されていましたが、最終的には27社になったことが報道されました。

株主総会の議決権行使結果の開示、27社に拡大 09年、民間調べ(日本経済新聞2009年7月22日)

株主総会の議決権行使結果を開示する動きが広がっている。大和総研経営戦略研究所の集計によると、今年はすでに三菱商事や第一三共など27社がウェブサイトで議決権行使結果を開示した。昨年は通年で4社にとどまっていた。国内外の機関投資家が企業に対して結果を開示するよう働きかけを強めており、今後も開示に踏み切る企業が増えそうだ。

大半の企業が事前行使分のみの集計を開示した。取締役選任議案の結果については多くの企業が全候補者の最少得票と最多得票を幅で表示しており、誰がどのような理由で反対票を投じられたのかまでは分からない。個別の得票まで開示したのはアデランスホールディングスとイオン北海道だけだった。(07:00)

投票結果の数値的なの開示は法的な義務では全くありませんが、支配権争いや株主提案権の行使があるような会社では、今後も詳細な個別開示をするように働きかけが強まっていくことと思われます。

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2009年7月21日 (火)

東証が8月から施行する第三者割当に関するルールの内容が報道される

東証が上場企業に適用する第三者割当に関するルールを制定することはすでに報道されていましたが、そのとき検討されていた内容は以下のようなものがあげられていました。

第三者割当増資に規制(読売新聞2009年4月15日)

東京証券取引所がまとめる株式上場制度の見直し案の全容が14日、明らかになった。上場企業が大規模な新株発行を行う際などに、以前からの株主の権利を保護する内容で、日本企業が広く行う「第三者割当増資」に対する規制を盛り込んだ。一方で、企業の機動的な資本調達を制約する恐れもある。企業が取引先の金融機関や企業など、特定の「第三者」を引受先に新株を発行する第三者割当増資は、以前からの株主の持ち分が目減りする弊害が指摘されていた。

見直し案の柱は、〈1〉発行済み株式数の3倍を超える新株を発行する企業は原則、上場廃止〈2〉発行済み株式数の25%以上の新株を発行する企業などは、事前に株主総会での承認決議などが必要〈3〉10株を1株にするような「株式併合」で、保有株が1株未満となり議決権を失う株主が生じるような企業も原則、上場廃止――などとなっている。

(略)

ここにきて20日付の日経朝刊の法務面に、検討を経たルールの内容が報道されました。

希釈化率(第三者割当で増加する分の議決権を既発行の議決権総数で割ったもの)が300%を超える場合

株主の利益を侵害するおそれが少ないと認められる場合を除いて、上場廃止

支配株主が異動して、3年以内に支配株主との取引の健全性が著しく棄損された場合

株主の利益を侵害するおそれがあると認められるときは、上場を廃止

希釈化率が25%以上、または支配株主が異動する場合

第三者委員会の意見の入手か株主の意思の確認

第三者割当全般

適時開示、割当先が反社会的勢力と関係がない旨の確認書を提出

※7月20日付日本経済新聞による。

会社法から行くと、新株発行は発行済み株式総数の4倍までしかできないはずではないかと思えますが、株式併合と新株予約権を組合せることでこれを実質的に潜脱する事例が起きており、株式数に着目することに限界があることから、判断基準を希釈化率という概念を立てていることが分かります。

第113条(発行可能株式総数)

株式会社は、定款を変更して発行可能株式総数についての定めを廃止することができない。

2 定款を変更して発行可能株式総数を減少するときは、変更後の発行可能株式総数は、当該定款の変更が効力を生じた時における発行済株式の総数を下ることができない。

3 定款を変更して発行可能株式総数を増加する場合には、変更後の発行可能株式総数は、当該定款の変更が効力を生じた時における発行済株式の総数の四倍を超えることができない。ただし、株式会社が公開会社でない場合は、この限りでない。

4 新株予約権(第二百三十六条第一項第四号の期間の初日が到来していないものを除く。)の新株予約権者が第二百八十二条の規定により取得することとなる株式の数は、発行可能株式総数から発行済株式(自己株式(株式会社が有する自己の株式をいう。以下同じ。)を除く。)の総数を控除して得た数を超えてはならない。

第三者割当すべてについて株主総会決議を要求することも浮上したようですが、経済界の反対で見送りになった模様です。

色々な手法を組合せて使えるようになっていることで、既存株主をないがしろにする手練手管が色々と可能になっています。立法は機動性を欠くことから東証の繰り出すソフトローの意義は大きく、実質的に会社法の規制を補完するものとして機能すると思われます。

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2009年7月19日 (日)

最高裁、日本システム技術事件で代表取締役にリスク管理体制を構築する義務に違反した過失はないと判断

従業員が自分の営業成績をあげるために架空の売上げを計上したことから、同事実の公表によって株価が下落したとして代表取締役に責任があるとして、代表者の責任について会社に損害賠償責任を追及した(会社法350条)訴訟で最高裁判決が出ました。この事件は当該企業の名前を取って日本システム技術事件と通称されています。

最高裁判所第一小法廷平成21年07月09日判決 平成20(受)1602 損害賠償請求事件

取締役は善管注意義務と忠実義務を負っていますが、これだけでは抽象的に過ぎます。経営判断については経営判断原則によって判断されますが、このほかに具体的な義務がいくつか解釈で確立されてきました。

それが取締役相互間での監視義務とリスク管理体制構築義務です。リスク管理体制構築義務については、いわゆる日本版SOX法より前から裁判例(大和銀行株主代表訴訟事件において言及されました)によって認められていたことに注意が必要です。

リスク管理体制構築義務に反したか否かについては、判断がそれほどあるわけではないのですが、発生した不祥事と具体的にどのような体制を構築していたかの事実関係から判断することになります。

そこでこの事件の事実関係を見てみます。

この件の従業員の架空売上げ計上の手法は極めて巧妙です。

  • 販売の相手方が限定的である特殊な事業であるため、相手方の偽造印を作って注文書を偽造
  • 別の部署が販売に応じて相手方に送付する検収依頼書を相手方に渡らないようにして検収したように装う資料を作成
  • 財務部、監査法人が相手方に送付する売掛金残高確認書は相手方に虚偽を伝えて開封することなく回収して、残高を確認した用紙を作成して勝手に返信

このようにして、いくつか用意されている確認のための制度をすべて手を回してふさいでしまうことで発覚を防いでいました。

原審は、上記のように確認のための手段が、頑張って企図すれば不正ができてしまう程度のものでしかなかったことを捉えて、適切なリスク管理体制を構築していなかったと評価して過失があると判断しました。

これに対して最高裁は、判断を一変させて、過失はないと判断しました。

上記に出ている仕組みについては、一応、事業部門と財務部門の分離やチェックの仕組みが構築されていることから、

通常想定される架空売上げの計上等の不正行為を防止し得る程度の管理体制は整えていた

と評価しました。

これに対して当該従業員のした上記のような不正は巧妙を極めているとして、

通常容易に想定し難い方法によるものであったということができる

としました。

加えて、以前に同種の不正行為はなかったことと、架空売上げなので売掛債権が大量にたまっている状況になっていたのに疑問に持たなかったのはおかしいという批判がある点に配慮をして、相手方とは紛争を生じたことがなかったことを指摘して、すべてをまとめてリスク管理体制構築義務に違反した過失はないとしました。

原審の言うように、抜け穴があるような不正防止の仕組みしかできていないのは過失があるといえるように思えないでもないですが、完全な不正防止システムを構築したらどう考えても費用倒れでしょうし、ちゃんとしている会社でも多かれ少なかれ抜け穴のあるような仕組みにとどまっていると思われます。

よって、最高裁の判断は現実的な判断として妥当なものだと思われます。

この判例の射程を判断するのは難しいですが、リスク管理体制構築義務に関する判例として会社がどこまでシステム整備をすればいいかについて、重要な基準を示すものになるように思えます。通常容易に想定できる不正に対処できる程度の体制を構築すればよいという基準となるのではないかと考えられます。

余談ですが、これは代表訴訟や取締役に対する責任追及ではなく、代表者の責任を根拠に会社に損害賠償請求をした350条の事件です。勉強している分にはあまり注目されませんが、このような条文もあることを確認しておきましょう。

第350条(代表者の行為についての損害賠償責任)

株式会社は、代表取締役その他の代表者がその職務を行うについて第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。

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2009年7月18日 (土)

投資ファンドのエフィッシモ、出資先の日産車体を提訴

今日の日経朝刊に載っていたのですが、なぜかネットには載っていなかったので、引用はなしです。

日本では親子上場がよくあるということが世界と比較して珍しいことで、親会社が支配を続けながらの上場ですので、一般株主は少数株主となって閉じ込められたり、一般株主を犠牲にする傾向があるなどの問題が指摘されてきました。

親子上場については最近問題視される傾向にあり議論がおきつつあるのですが、そのような中で日産の関連会社で車体を作っている日産車体で興味深い事例がおきました。

日産車体は日産自動車が42.57%を保有しているのですが、一方で東証一部にも上場しており、親子上場の事例の一つといえます。現金をたくさん持っている極めて優良な会社です。

この日産車体の日産自動車以外の株主には投資ファンドのエフィッシモ・キャピタル・マネジメントが14.5%を保有する大株主となっています。

この日産車体は、よくあるグループ会社間の資金の一括管理によって資金を低利で別のグループ会社に貸し付けており、これが日産車体の利益を失わせているとして、エフィッシモが日産車体を提訴したことが明らかになりました。

逸失利益が出ているほか法令違反のおそれがあるとして差止を求めていると本紙面では言及されており、多分、360条の取締役の行為の差止めではないかと思われます。

第360条(株主による取締役の行為の差止め)

六箇月(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)前から引き続き株式を有する株主は、取締役が株式会社の目的の範囲外の行為その他法令若しくは定款に違反する行為をし、又はこれらの行為をするおそれがある場合において、当該行為によって当該株式会社に著しい損害が生ずるおそれがあるときは、当該取締役に対し、当該行為をやめることを請求することができる。

2 公開会社でない株式会社における前項の規定の適用については、同項中「六箇月(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)前から引き続き株式を有する株主」とあるのは、「株主」とする。

3 監査役設置会社又は委員会設置会社における第一項の規定の適用については、同項中「著しい損害」とあるのは、「回復することができない損害」とする。

親子上場の問題に投資ファンドが反対の動きを起こしたように見えますが、一方でグループ会社間での資金の融通はよくある手法で、グループ会社間で融通することで結果的に自らに仕事がまわってくるようにするということも考えられるので一概に悪いことと判断はできません。今後の動向が注目されます。

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2009年7月17日 (金)

トライアイズ、監査役によって株主総会決議取消訴訟が提起されている決議について臨時株主総会を開いて再び議案とすることを表明

監査役が監査費用の請求訴訟を会社に対して提起しているという珍しいことが大証ヘラクレス上場のトライアイズで起きていることはお伝えしましたが、そのエントリーでも少し触れましたが、監査役は株主総会決議の取消訴訟も提起しています。

このたびトライアイズは、事態の打開を目指してこれら取消訴訟の対象となっている決議について再び臨時株主総会を開催して議案として上程するとリリースしました。

株主総会決議取消訴訟に対する対応方針に関するお知らせ

何を狙っているのかは、基本的なことですが、明らかです。

判例(最判平成4年10月29日民集46巻7号2590頁【ブリヂストン事件】)によると、同一内容の再決議を、取消訴訟が確定した場合に遡及して効力が生じるという条件で行うと株主総会決議取消訴訟の訴えの利益はなくなるとされているために、これによって訴訟を一気に解決することを意図しているわけです。

上記リリースは監査役の行動を極めて厳しい表現で非難しており、この点でも異例です。

しかし、このトライアイズの一件を見ていると、少数株主の利益まで考慮しなくてはならないことからそういう意味で本質的に会社のために正しいことを考えて行動するべき(だと私は考えています)監査役の善管注意義務と、支配株主によって左右されうる株主民主主義との対立という深刻な問題が起きうることを痛感しました(別にトライアイズの株主ことを言っているのではなく対立することが起き得るという考えに至ったというだけです)。

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2009年7月16日 (木)

ビックカメラの有価証券報告書等の虚偽記載に基づく課徴金納付命令勧告について、ビックカメラは納付の意向を示すも元会長は争う姿勢を示す

証券取引等監視委員会がビックカメラの有価証券報告書等の虚偽記載及び同社役員が所有する同社株券の売出しに係る目論見書の虚偽記載について、6月26日に課徴金納付命令勧告を出しています。

株式会社ビックカメラに係る有価証券報告書等の虚偽記載及び同社役員が所有する同社株券の売出しに係る目論見書の虚偽記載に係る課徴金納付命令勧告について

これに対して、金融庁から審判手続き決定通知書がでていますが、ビックカメラは課徴金を納める意向を明らかにしました。

答弁書と課徴金納付について

一方、元会長の方は対照的に争う意向であることが報道で明らかになりました。

ビックカメラ相談役、勧告に不服の答弁書(読売新聞2009年7月16日)

家電販売大手「ビックカメラ」(東京都豊島区)の虚偽決算問題に絡み、証券取引等監視委員会が金融庁に対し、金融商品取引法に基づいて会長だった新井隆二相談役(63)に課徴金約1億2000万円を科すよう勧告したことについて、新井相談役が勧告を不服とする答弁書を金融庁に提出していたことがわかった。2005年4月に同法の課徴金制度が導入されて以来、初となる審判が開かれる見通しとなった。

(略)

これによって課徴金制度が導入されてはじめて、審判が開かれることになりました。

課徴金制度は平成16年の証券取引法改正で導入されました。

条文上は、課徴金を課すことができる開示違反などがあった場合に、すべからく審判手続き開始決定がされます(178条)ので、すべての場合において審判が行われるかのように思えますが、これに対して被審人は答弁書を出すことができ、これですべてを認めた場合には審判は開かれません(183条)。ビックカメラが提出したのはこれに当たります。

これに対して元会長は争ったために審判が開かれることになったわけです。

改正前独禁法の勧告審決や同意審決に良く似ていて、真似ていることがわかる制度設計であることが分かります。そのために審判に当たるのは金融庁の職員です。すると独禁法の場合と同じことが問題になりそうですが、証券取引等監視委員会という外部がきっかけを作っているところなど独禁法と異なります。あまり実例がないのでまだまだ議論になるような段階ではありませんが、いずれ問題になるときもあるかもしれません。

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2009年7月13日 (月)

楽天申立てのTBS株式の反対株主の株式買取請求で、楽天は3000円超を主張

TBSの認定放送持株会社への移行によって、一定以上の出資の道を閉ざされた楽天が、反対株主の買取請求権を行使しましたが、価格の主張を楽天が中々行わないために膠着状況でしたが、このたび1株あたり3000円超の価格を提示したことが13日の日経法務面で報道されました。

楽天主張の算定方法によると日経の推計で約3900円とされており、TBSは買い取り請求をした日の終値である1294円を主張しており、価格の開きは大きくなっています。

TBSの価格だと楽天は投じた資金の回収さえできませんが、自らが主張する価格だと利益が出ます。

すごいのは楽天の主張する価格の根拠は、認定放送持株会社を創設した改正放送法の成立した日の終値をベースにして、その上で認定持株会社に移行することが「なかりせば」の価格を加味するとしており、楽天とTBSが事業提携できていたら実現できた分まで加味することを主張している模様です。

この株式買取請求は、会社法785条の吸収合併等に反対した場合の反対株主の株式買取請求権であり、完全に会社法の問題です。

ただし、価格決定の申立ては、このブログでいくつか取り上げましたが事例が豊富とは言えず、判断基準が安定しているとは言いがたいのが現状です。どのような基準で算定するのかは非常に難しいものがあります。

先例から行くと、株価が下落局面だったとして、株式買取請求権を行使した日の終値よりも前倒しにして高めにする判断は可能でしょうが、事業提携していた分まで含めるのは無理のような感じがします。そのままの会社の実力を反映したものにとどまるように思われます。

ちなみに、なぜ785条なのかというと、認定持株会社への移行の仕方にポイントがあります。

それはテレビ事業などを組織再編の手法で外へ出して、従来からの法人は持株会社になるという手法を用いるためです。TBSの場合には歴史的経緯からすでに完全子会社を持っていましたので、吸収分割の手法で事業を切り出して移しています。そこで吸収合併等を使っているので、785条による権利行使ができるわけです。

価格の主張を不可解に遅らせた楽天に特に意図があるのかは分かりませんが、価格が決まるのが遅くなってしまうと利息がバカになりません。そこでTBSは一部の仮払いを申し出ている模様です。

これまでの価格決定の申立ての事案は、経営再建関連やMBO関連が多かったので、これらと比べると本件とは若干異質です。どのような判断がされるかが注目されます。

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議決権行使結果の開示がわずかながら始まる

昨今、株主総会において会社提案が否決される事態が生じることがありますが、これらを受けて、会社が自主的に議決権行使結果の開示を行う例が出ています。

産経新聞によると、今年は6月24日時点で7社が行ったことが確認されています。

株主総会「議決権行使」賛否割合 広がる開示 経営の透明性アピール(2009年6月24日)

報道によると7社とは以下のとおりです。

  • ソニー
  • マブチモーター
  • 資生堂
  • 角川グループHD
  • ニッセンHD
  • ローソン
  • バンダイナムコHD

議決権行使結果の開示は、当然ですが、会社法上の要求ではないので方式が定まっていることはありません。そのため賛成の議決権の数だけだったり、割合まで示したりとまちまちの模様です。

可決されるのか微妙な場合なら総会検査役がいたりするでしょうから、議決権行使結果の開示によって議事の公正を担保するという目的はあまりないのでしょうが、IRに意欲的な企業のあり方として今後も広がっていくと思われます。

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2009年7月 8日 (水)

日本ラッド、前会長兼社長の公開買付に対して賛同の意見を表明

株主総会における役員選任で一波乱があった日本ラッドですが、この変動を受けて、留保していた公開買付に対する意見表明を3日にようやく行い、賛同の意見を表明しました。

当社株式に対する公開買い付けの発表に関する当社意見の表明について

前会長兼社長が突然の公開買付を表明して始まった一連の騒動は、ようやく終結する模様です。

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2009年7月 1日 (水)

トライアイズ監査役、自らが行った仮処分申立ての弁護士報酬等の訴訟費用を監査費用として会社に請求する訴訟を提起

大証ヘラクレス上場のトライアイズの監査役が、3月に行った仮処分申立てに要した弁護士費用等の費用を監査費用であるとして会社に請求する訴訟を提起しました。監査役が監査費用の支払を求めて会社を訴えるというのは非常に珍しいのではないかと思います。

トライアイズによるリリース

監査役は会社とは委任の関係にありますから民法650条から当然、業務に必要な費用を会社に請求することが出来ます。それだけではなく、会社法388条に専用の規定が設けられています。

第388条(費用等の請求)

監査役がその職務の執行について監査役設置会社(監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定款の定めがある株式会社を含む。)に対して次に掲げる請求をしたときは、当該監査役設置会社は、当該請求に係る費用又は債務が当該監査役の職務の執行に必要でないことを証明した場合を除き、これを拒むことができない。

一 費用の前払の請求

二 支出した費用及び支出の日以後におけるその利息の償還の請求

三 負担した債務の債権者に対する弁済(当該債務が弁済期にない場合にあっては、相当の担保の提供)の請求

上記の条文より、この規定は意味するところは、監査役が請求にあたって必要性を立証しなくて良いというところに意味があります。費用のことを心配するあまりに監査役の権限行使を萎縮させないための仕組みであるわけです。

そして監査費用とは、監査に必要な一切の費用が含まれるとされています。

よって、請求できるかどうかは、どのような仮処分であったのかによって決まることになります。

監査役の義務は、監査ですが、それだけではなく、取締役の行為の差止も認められています。今回問題となっている仮処分もこれであるようです。

第385条(監査役による取締役の行為の差止め)

監査役は、取締役が監査役設置会社の目的の範囲外の行為その他法令若しくは定款に違反する行為をし、又はこれらの行為をするおそれがある場合において、当該行為によって当該監査役設置会社に著しい損害が生ずるおそれがあるときは、当該取締役に対し、当該行為をやめることを請求することができる。

2 前項の場合において、裁判所が仮処分をもって同項の取締役に対し、その行為をやめることを命ずるときは、担保を立てさせないものとする。

すると、当該仮処分が取締役の法令定款違反行為を差止ようとするものであったかが問題となるわけですが、この仮処分はなんと、会社が株主総会に当該監査役の解任を提案した議案の差止だったのです。

仮処分命令の申立てに関するお知らせ

この事案では385条にあたるとして何に該当するでしょうか。

仮に監査役に業務執行に問題がないのにそれを経営陣が煙たく思って解任しようとしたとかという場合なら、取締役の善管注意義務に反して385条で言うところの法令違反ということになるのでしょうか。

最近、監査役が頑張っている例がありますので上記のような想像をしてみましたが、事実関係の詳細が不明ですので逆である場合もありますので即断は出来ません。

とにかく監査役の解任の適否によって取締役の行為が違法であるかが左右されるように思われるのですが、すると解任は事由を問わないでできるので、結果として解任されたか否かで決まるのでしょうか。

本件では会社は結果として、議案を取り下げていますので、仮処分は直接には役に立ちませんでした。するとどう考えていいのか非常に難しいところです。

ちなみに、当該監査役は役員選任決議の取り消しの訴訟も提起しており、同社は経営をめぐって混乱していることが明らかになっています。

監査役が役員ではなく会社を訴えるなど非常に珍しいのですが、それゆえに難しい点をたくさん含んでいるように思えます。ちなみに仮処分では鳥飼重和弁護士に依頼をしており、中々な費用になっていることが上記リリースに載っています。

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2009年6月30日 (火)

日本ラッド株主総会、公開買付をしている前会長派の株主の動議により社長の取締役選任議案が否決される

前会長が突然の公開買付を開始して混乱の様相を呈していた日本ラッドの株主総会が29日に行われ、会社提案の役員の選任議案に修正動議が出されて、社長をはじめとする二名が賛成多数で差し替えられるという異例の事態となりました。

修正後の役員選任議案は承認されましたが、社長は交替せざるを得ず、それを受けてか、承認されたばかりの取締役が即日辞任するというこれまた異例の事態になっています。

日本ラッドのプレスリリース

修正動議で提案の一部を差し替えるというのは、役員選任議案に関して株主提案をしないで対案を出すことを可能にするために選ばれたのだと思いますが、総会当日に議決権を行使できる出席株主が多数いないといけないため、流動性が低い会社でないとできないことです。よって多用されるものではないですが、驚きました。

修正動議を出した株主は前会長の意向を受けた人物を報道では言及されており、公開買付とも関連がある行動であると思われます。

日本ラッドの株主総会、社長ら2人の取締役選任案を否決(日本経済新聞2009年6月30日)

システム開発の日本ラッドが29日に開催した株主総会で、大和喜一社長ら2人の取締役選任案が否決された。同社のTOB(株式公開買い付け)を発表している前会長の大塚隆一取締役側の株主が役員選任案の修正動議を提案。会社案への反対票は6割超を占めた。大和社長は総会の結果を受けて退任、新社長には子会社の日本ラッド情報サービス取締役の長岡均氏が就任した。

総会終了後に記者会見した大塚氏らは修正動議を提案した理由を「大和氏ら2人が(日本ラッドの買収を目指す)社外の勢力と連絡を取っている疑いが強まったため」とした。長岡新社長は「大塚氏が安定株主になることは好ましい」とTOBに賛成の意向で、近く会社側の意見を表明する。

(略)

こうして、日本ラッドは会社としては公開買付に賛成するということになりそうです。

その理由が、上記のとおりに社外の勢力と連絡を取っているということだとしたら、若干妙な感じを受けます。株主が役員を選解任するのは権利ですので、左右するものではありませんが、アメリカでは買収提案があったらもっとも高いところに売るようにすることが役員の株主に対する義務になりますので、社外と連絡をとったということで非難されると、アメリカでは取締役としての信認義務に反することになりかねません。取締役間での会社の方向性に関する意見の対立があったというのが実際のところなのでしょう。

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2009年6月26日 (金)

アルプス電気株主総会で単元未満株の買取等にかかわる定款変更の会社提案が外国人株主を主とした反対により否決される

株主総会シーズンですが、今年は業績の悪化でやや荒れ模様の総会が相次いでいるようです。それら一般的な動向とはやや異なる不思議な事象があったので取り上げます。

アルプス電気株主総会、一部議案否決 株券電子化巡る定款変更(日本経済新聞2009年6月26日)

アルプス電気は25日、同日に開催した株主総会で一部の議案が否決されたと発表した。株券電子化に伴う定款変更案の文言の一部が株主の権利行使を阻害しかねないとの懸念から、主に外国人株主が反対に回ったようだ。株券電子化に伴う事務に支障はないという。

否決されたのは、会社提案で株券電子化に伴う定款の一部変更を図った第1号議案。単位未満株の買い取りといった株式の取り扱い手続きについて、「取締役会の定める株式取り扱い規則による」と表記したのが反発を招いた。総会では議決権ベースで約4割が反対に回り、可決に必要な3分の2以上に届かなかった。「株主の権利がアルプス電気の取締役会によって制限されるとの懸念が出たようだ」(同社広報部)

過去にも06年に任天堂が配当など利益剰余金の処分を取締役会で決定できる議案を提出したが、総会で否決された例がある。株主の権利を巡る定款変更は、権利意識の高い外国人株主や機関投資家の関心が高いとされる。(00:30)

要するに、単元未満株の買い増しや買取に関する制度を定款で基本的な規定は設けるものの詳細は取締役会で定める別の規則によるとしたところ、株主権が取締役会によって制限されると思われて否決されてしまったということです。

定款変更は抱き合わせになっているので、電子化によって不要になった規定までもそのままになってしまいました。これらの規定は無効になるのでほっておいても変なことにはなりません。

さて、、「取締役会の定める株式取り扱い規則による」という定め方ですが、これはごく普通の定め方です。

否決してしまうと売り渡し請求は定款に規定をおかないと、設けられないので株主にとっては不利になります。

第194条

株式会社は、単元未満株主が当該株式会社に対して単元未満株式売渡請求(単元未満株主が有する単元未満株式の数と併せて単元株式数となる数の株式を当該単元未満株主に売り渡すことを請求することをいう。以下この条において同じ。)をすることができる旨を定款で定めることができる。

2 単元未満株式売渡請求は、当該単元未満株主に売り渡す単元未満株式の数(種類株式発行会社にあっては、単元未満株式の種類及び種類ごとの数)を明らかにしてしなければならない。

3 単元未満株式売渡請求を受けた株式会社は、当該単元未満株式売渡請求を受けた時に前項の単元未満株式の数に相当する数の株式を有しない場合を除き、自己株式を当該単元未満株主に売り渡さなければならない。

4 第百九十二条第三項及び前条第一項から第六項までの規定は、単元未満株式売渡請求について準用する。

単元未満株の買取請求権は定めをおかなくても会社法の規定から当然に請求権がありますので、定款変更の否決によっては特段の問題は生じません。

第192条(単元未満株式の買取りの請求)

単元未満株主は、株式会社に対し、自己の有する単元未満株式を買い取ることを請求することができる。

2 前項の規定による請求は、その請求に係る単元未満株式の数(種類株式発行会社にあっては、単元未満株式の種類及び種類ごとの数)を明らかにしてしなければならない。

3 第一項の規定による請求をした単元未満株主は、株式会社の承諾を得た場合に限り、当該請求を撤回することができる。

外国人株主や機関投資家が恐れたのは、よく分からないのですが、多分、取締役会が手続を定めることで請求権を実質的に制限できるのではないかということでしょう。

しかし、取締役会で請求権の行使を制限的にするような内容を定めることが出来るでしょうか。権利の内容については法定されたものを損なうことのないような手続しか定められないというところが妥当ではないでしょうか。

これらの株主の請求権に関する会社法の規定は強行規定でしょうから、定款で定めることも含めて会社が自治をすることは出来ないと思います。

もっとも、それは実体法上の話であり、争ってみなければ取締役会の定めた規定の当否はわかりません。そうなっては遅く、とりあえず会社が定められるという状況になること自体が許しがたいというなら、そうなのでしょう。

しかし、定款に単元未満株に関する請求権の手続きについて定めをおくのはいかにも場違いな感じがします。別に定めるとして、法的義務ではありませんが株主総会の承認を取ればいいのでしょうか。反対した株主に説明して納得してもらえばいいような気もしますが、この点はよく分からないところです。

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2009年6月24日 (水)

相模鉄道で会社分割を用いての鉄道事業の分社化をめぐり、労働組合が労働協約に基づく同意権を主張

相模鉄道が会社分割を用いて鉄道事業を分社化することを目指して、労働組合との事前協議を行っていますが、労働組合のうちの一方の相鉄労働組合が労働協約に関する争点について折り合えず、26日にストライキを構えるという事態になっています。

相鉄は神奈川県労働委員会にあっせんを申請しましたが、相鉄労組はこれに応じず、こう着状態が続いています。

神奈川県労働委員会に対するあっせん申請に関するお知らせ

相模鉄道労働組合のストライキについて

相鉄労組の主張は、会社側のリリースによると、労働協約で労働条件の変更にかかるないように関しては事前協議するという規定があり、それは事前に組合の合意を要するという意味であり、会社分割にも同じく組合の合意を要するというもので、合意するまで会社分割の手続を会社は進めることは出来ないというもののようです。

会社分割も労働協約の必要な事項に該当するので組合の合意が必要だということのようです。

しかし、事前協議という文言から、合意するまでが必要であるという解釈にはそもそも無理があります。

また、本来なら民法625条1項より、労働者の個別の同意が必要になる労働契約の使用者の変更を、個別の同意を不要とすることを実現するために会社分割が立法されたという経緯を考えると、会社分割に関して定めた労働協約を締結しているならまだしも、会社分割立法前からあるであろう普通の一般的な労働協約が、新しい立法を無意味にするというのはおかしな話です。

よって、労働組合に拒否権があるというような見解にはかなり無理があると思われます。

ちなみに最初に相鉄のリリースを読んだときには、組合はいわゆる労働契約承継法の7条措置について組合と行うときは組合の同意がいるのだと主張しているのかと思ったのですが、さすがにこれは無茶であるせいか、労働協約が適用されるのだという主張をしていました。

労働契約承継法

第7条(労働者の理解と協力)

分割会社は、当該分割に当たり、厚生労働大臣の定めるところにより、その雇用する労働者の理解と協力を得るよう努めるものとする。

会社分割に関する労働問題は、IBM事件などが明るみにでたくらいで、あまり多くの事例がなく、しかも事後的に紛争になっているものが主です。本件は総会決議の前の手続段階における労使間紛争であり、貴重なケースであるように思えます。

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2009年6月23日 (火)

日本ラッド、前会長による突然のTOBに関して、会社が前会長が送付した公開買付にかかる意見書を公開 取締役会は意見表明を留保

日本ラッドの件の続報です。

突然の公開買付に対して取締役会は意見を表明していませんでしたが(正式には一度なんらの見解は公表した後に撤回したようなのですが)、このたび、TOB対象会社が表明する意見ではなく、買付者が意見書なるものを会社に送付してきたためにこれを対象会社が公開しました。

公開買付者からの書面提出について

これに対して取締役会は情報不足として意見(これは金商法27条の10第1項でいうところのものです)の表明を留保しました。

当社株式に対する公開買い付けの発表に関する当社意見の留保について

本来なら27条の10第1項の意見の表明は公開買付から10営業日以内に行わねばならず、9日から公開買付が行われているので23日が期限になるのですが、意見を留保した意見を出して、同時に27条の10第11項に依拠して公開買付者に質問をすることで、公開買付者のこれへの返答に対して合わせて意見を表明するとしています。

端的に言うと公開買付者の返答の猶予である5営業日分の時間を稼いだ感じになっています。

こういう経過は珍しく、混乱気味の始まり方をした本件の特徴をよく表しているように思われます。

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2009年6月21日 (日)

株券電子化で株主提案に逆風

株主総会シーズンですが、今年の株主総会の特徴についての日経の連載記事にのっていたのですが、今年は株券電子化後の最初の株主総会ということで、株主提案が手続き的にやや面倒になり証券会社の不慣れもあって混乱していることが伝えられました。

株券電子化で株主提案をするには、株主が個別株主通知というものを証券会社に頼んで会社に送ってもらう必要があることになりました。

社債、株式等の振替に関する法律

第154条(少数株主権等の行使に関する会社法の特例)

振替株式についての少数株主権等の行使については、会社法第百三十条第一項の規定は、適用しない。

2 前項の振替株式についての少数株主権等は、次項の通知がされた後政令で定める期間が経過する日までの間でなければ、行使することができない。

3 振替機関は、特定の銘柄の振替株式について自己又は下位機関の加入者からの申出があった場合には、遅滞なく、当該振替株式の発行者に対し、当該加入者の氏名又は名称及び住所並びに次に掲げる事項その他主務省令で定める事項の通知をしなければならない。

一 当該加入者の口座の保有欄に記載又は記録がされた当該振替株式(当該加入者が第百五十一条第二項第一号の申出をしたものを除く。)の数及びその数に係る第百二十九条第三項第六号に掲げる事項

二 当該加入者が他の加入者の口座における特別株主である場合には、当該口座の保有欄に記載又は記録がされた当該振替株式のうち当該特別株主についてのものの数及びその数に係る第百二十九条第三項第六号に掲げる事項

三 当該加入者が他の加入者の口座の質権欄に株主として記載又は記録がされた者である場合には、当該質権欄に記載又は記録がされた当該振替株式のうち当該株主についてのものの数及びその数に係る第百二十九条第三項第六号に掲げる事項

4 加入者は、前項の申出をするには、その直近上位機関を経由してしなければならない。

5 第百五十一条第五項及び第六項の規定は、第三項の通知について準用する。この場合において、同条第六項中「第三項及び前項」とあるのは、「前項」と読み替えるものとする。

今までは特に必要なかったのになぜと思われるかもしれませんが、上記の154条1項のとおり、会社に対する対抗要件が異なるからです。これまでは会社法に定めのあるとおり株主名簿が対抗要件だったのですが、電子化によって振り替え株式になると、株主名簿の役割が小さくなってしまい、振替機関の通知が大きな役割を果たすようになるためです。会社法の条文では株主名簿がすべてになっているので分かりにくいですが、どういう株式かによって対抗要件が異なって定められており、教科書では「社債、株式等の振替に関する法律」に触れてきちんと書かれています。

さて、このように対抗要件が変わってしまったので面倒になったということ、そして証券会社の方の事務もはじめてということもありスムーズではないといったことがあるようで、今年の株主総会の株主提案は例年に比べて低調になっているとのことでした。

この問題は予想されたので一応対処されており、株主提案権の権利行使期間を2週間から4週間に伸ばす振替法施行令の改正が行われているのですが、それでもやはり株主提案権行使を断念する例がある程度でてしまったそうです。

このような問題は今年限りだと思われますが、上場会社の株式について対会社の対抗要件が一斉に切り替わり、会社法の原則がそのまま適用されるのは専ら閉鎖会社などに限られることになった点などはきちんと確認しておきたいところです。

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2009年6月20日 (土)

ライブドア有価証券報告書虚偽記載で株主による損害賠償請求でまたライブドアに賠償命令

ライブドアの有価証券報告書虚偽記載によって株価が急落して株主が損害を受けたとして、ライブドアの旧経営陣に損害賠償を請求した裁判は、個人株主ルートと機関投資家ルートがすでに判決が出ていますが、さらに18日に大阪の法人株主が提訴していた件で東京地裁で判決がありました。

旧ライブドアに賠償命令 東京地裁、虚偽記載認め6100万円(日本経済新聞2009年6月18日)

ライブドアによる有価証券報告書の虚偽記載で株価が急落し損害を受けたとして、大阪の建設機械製造会社など株主がLDH(旧ライブドア)や堀江貴文元社長(36)ら旧経営陣に計約1億5000万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、東京地裁(難波孝一裁判長)は18日、計約6100万円の支払いを命じた。

難波裁判長は判決理由で、有価証券報告書の虚偽記載があったと認定。そのうえで、虚偽記載が公表された場合、前後1カ月の平均株価の差額を損害額と推定する2004年の改正証券取引法(現金融商品取引法)の規定を適用した。

ライブドアによる虚偽記載の疑いが報道された06年1月18日を「公表日」として、公表日の前1カ月と後の1カ月の平均株価の差額1株585円を推定損害額と算出。ただ、株価の急落は堀江元社長の逮捕など虚偽記載以外の原因もあったとして、最終的に1株200円と損害額と判断した。(18日 20:01)

この裁判例でも、金商法21条の2の適用を肯定、ネックとなる公表日については報道がされた日として、すでに出ている裁判例と同様の判断をしました。

すでに何度も書いていることなので繰り返しませんが、詳しくは以下のエントリーをどうぞ。

東京地裁、ライブドアの有価証券報告書虚偽記載の損害賠償請求で、検察官による「公表」があったと判断

金商法21条の2については、下級審レベルでは積極的に活用する方向で落ち着いてきたように思われます。もっともライブドアの件しか実績がないのも確かであり、蓄積がそれほどあるわけではないということも十分に可能に思えます。

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日本興亜損保、経営陣による意図的な保険料支払先送りはなかったとする一方でこれに反する事実も報道される

経営統合を前に、内部紛争が勃発している日本興亜損保の件の続報です。

日本興亜損保の兵頭社長は、経営陣による意図的な保険料支払の先送りはなかったとする一方で、現場での先送りについては調査を継続することを表明しました。

保険金支払い先送り、日本興亜社長が経営の関与否定(日本経済新聞2009年6月19日)

日本興亜損害保険の兵頭誠社長は18日の記者会見で、保険金支払いを意図的に遅らせて収支をかさ上げする違法行為があったとする個人株主の訴えについて「経営が関与した事実はない」と改めて否定した。株主から請求を受けた同社監査役はすでに、「経営陣による意図的な支払い先送りはなかった」として取締役を提訴しないことを決めている。

監査役に訴えたのは同社元役員の株主。日本興亜は4月に社外の弁護士や公認会計士らによる第三者委員会を立ち上げ、調査を進めていた。経営が関与したかどうかを巡る問題とは別に、現場の判断による支払い先送りがなかったかについては調査を継続する方針。

(略)

すでにお伝えしていますが監査役はこれに先立って提訴しないことを表明しており、提訴請求をした元役員でもある株主は自ら責任追及の訴えを提起することを検討しているとされています。ちなみにこの元役員は経営統合に反対している前会長と関係の深い元常務であると報道されています。

なお、上記のような社長の公表にもかかわらず、以下のような報道もなされています。

日本興亜役員、保険金の支払い先送り示唆(日本経済新聞2009年6月17日)

日本興亜損害保険の保険金部門の担当役員が2月の会議で「保険金の支払い見込み額を担当ごとに1億円ずつ減らせば収支目標を達成できる」として、保険金の支払い先送りを示唆するとも受け止められる発言をしていたことが16日わかった。(略)

さて、これらが契約者との関係で問題となりうることは確かですが、会社法的に問題となるかには違法配当をしたとかさらにステップが必要であり、今のところそれらは顕在化していないようです。よって、経営統合を前にしての内部紛争の色彩が強いといえるのではないでしょうか。

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2009年6月19日 (金)

アデランス、買収防衛策を廃止

スティール・パートナーズが経営の主導権を握ったアデランスで、買収防衛策が廃止されました。

アデランスのリリース

経営権を獲得したので、買収防衛策に反対する必要はもうないようにも思えますが、従前の主張を一貫させたことになります。

もっとも買収防衛策のある会社は株価が低めになる可能性がありますので、経営を立て直して株式を売却して利益を得るという意図なら合理的な動きということになりましょう。

ただ、取締役会決議で導入して、株主総会の決議で承認を得て、さらにスティールが経営権を握ることになった先日の総会で延長まで承認された買収防衛策を、取締役会決議で廃止している点がややバランスを欠くようにも思えます。

もともとアデランスの買収防衛策には、総会決議のほかに、取締役会決議でもっても廃止できるとなっているのでそのとおりにしただけなのですが、株主総会を尊重する場合が片面的なのはやや問題になるかもと思いました。

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アデランス、買収防衛策を廃止

スティール・パートナーズが経営の主導権を握ったアデランスで、買収防衛策が廃止されました。

アデランスのリリース

経営権を獲得したので、買収防衛策に反対する必要はもうないようにも思えますが、従前の主張を一貫させたことになります。

もっとも買収防衛策のある会社は株価が低めになる可能性がありますので、経営を立て直して株式を売却して利益を得るという意図なら合理的な動きということになりましょう。

ただ、取締役会決議で導入して、株主総会の決議で承認を得て、さらにスティールが経営権を握ることになった先日の総会で延長まで承認された買収防衛策を、取締役会決議で廃止している点がややバランスを欠くようにも思えます。

もともとアデランスの買収防衛策には、総会決議のほかに、取締役会決議でもっても廃止できるとなっているのでそのとおりにしただけなのですが、株主総会を尊重する場合が片面的なのはやや問題になるかもと思いました。

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2009年6月16日 (火)

最高裁、株主代表訴訟で追及の対象となる取締役の責任には、取締役の地位に基づく責任のほか、取締役の会社に対する取引債務についての責任も含まれると判示

会社法では責任追及の訴えという名前になっていますが、これは旧商法から引き継いでいる株主代表訴訟のことです。

この代表訴訟で追及するのは、「役員等の責任」となっています。旧商法では「取締役の責任」となっていましたが、取締役の責任追及の局面では同じ内容です。

さて、この取締役の責任の意義については従来から議論があり、二つの見解が対立していました。法律で定められた責任に限られるとする見解と、広く役員等が会社に対して負う債務全般が対象となるとする見解の二つです。

有力説と裁判例は、後者の全債務説をとっていました。

全債務説としてよく参照されるのが、大阪高判昭和54年10月30日高民集32巻2号214頁【会社法百選74】でして、これは会社の有する所有権に基づく登記移転請求権を代表訴訟で追求したもので、真正な登記名義の回復義務も追及の対象となるとしています。

この論点については判例は無かったのですが、このたび、最高裁が正面から判示をしました。

最高裁判所第三小法廷平成21年03月10日判決 平成19(受)799 所有権移転登記手続請求事件

この事件も上記の大阪高裁判決とほぼ同じ状況です。

会社が買い受けた土地の登記名義が取締役のものになっているために、株主が真正な登記名義の回復を原因とする所有権移転登記手続きを代表訴訟で追及したものです。

原審は、有力説や裁判例とな異なり、代表訴訟で追及できるのは旧商法266条1項各号など商法が取締役の地位に基づいて負わせている責任に限られるとして却下したので、上告がされたものです。

最高裁はこれに対して、次のように一般論を述べています。

同法267条1項にいう「取締役ノ責任」には,取締役の地位に基づく責任のほか,取締役の会社に対する取引債務についての責任も含まれると解するのが相当である。

理由としては旧商法266条に列挙されているものに着目しています。

【会社に対する責任】
第266条

左ノ場合ニ於テハ其ノ行為ヲ為シタル取締役ハ会社ニ対シ連帯シテ第一号ニ在リテハ違法ニ配当又ハ分配ノ為サレタル額、第二号ニ在リテハ供与シタル利益ノ価額、第三号ニ在リテハ未ダ弁済ナキ額、第四号及第五号ニ在リテハ会社ガ蒙リタル損害額ニ付弁済又ハ賠償ノ責ニ任ズ

第二百九十条第一項ノ規定ニ違反スル利益ノ配当ニ関スル議案ヲ総会ニ提出シ又ハ第二百九十三条ノ五第三項ノ規定ニ違反スル金銭ノ分配ヲ為シタルトキ

第二百九十五条第一項ノ規定ニ違反シテ財産上ノ利益ヲ供与シタルトキ

他ノ取締役ニ対シ金銭ノ貸付ヲ為シタルトキ

四 前条第一項ノ取引ヲ為シタルトキ

五 法令又ハ定款ニ違反スル行為ヲ為シタルトキ

3号では、取締役に対する貸付が入っており、「地位に基づくもの」に限られるというのに無理があること、取締役は会社との間で取引をした場合にもなお忠実に履行する義務を負うと解されることをあげています。

忠実に履行する義務というのは、取締役である以上、委託信任関係とは別の会社との取引でも、会社のために最善に行動する義務があるというような意味ではないかと思います。

よって、法定されている責任以外にも代表訴訟で追及できる責任を広げる判断を指示したことになります。会社法では、旧商法266条のようになったおらず、423条で任務懈怠という形で抽象的に一本化されていますが、それでもなお妥当する判断でしょう。

ただ、よく見ると有力説や裁判例をそのまま採用したわけではありません。

「取引債務」といっており、所有権に基づく所有権移転登記手続を請求した主位の請求に関する上告は棄却すべきとしており、所有権移転手続の委託と名義借用契約の終了に基づく所有権移転登記手続の請求である予備的請求の方の上告を認容して差戻しをしているからです。

取引債務に限られるという以上、債権的登記請求権でないと代表訴訟で追及することはできないということでしょう。

上記の大阪高裁判決は、登記回復義務の発生根拠を明示していないのですが、所有権に基づく所有権移転登記請求の場合も含んでしまうことになりそうです。この点において、この判例は新しい判示を行っているように思えます。

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2009年6月13日 (土)

日本興亜損保監査役、株主からの提訴請求には応じないことを決定

日本興亜損保の株主、保険金の支払を意図的に遅らせて収支をかさ上げをしたとして取締役を提訴するように監査役に提訴請求の続報です。

これに対して日本興亜損保の監査役は提訴しないと決定したこととが公表されました。

日本興亜損害保険、監査役は取締役提訴せず(日本経済新聞2009年6月13日)

日本興亜損害保険は12日、保険金支払いを意図的に遅らせて収支をかさ上げする違法行為があったとの個人株主の訴えについて、監査役が「違法行為の事実は認められない」と判断して取締役を提訴しないことを決めたと発表した。社外の弁護士らによる調査で違法行為が認められなかったという。監査役に訴えた同社元役員の株主は、株主代表訴訟も含めて対応を検討する方針。同社を巡っては、筆頭株主の米投資ファンドが兵頭誠社長の再任に反対する意向を表明するなど、損害保険ジャパンとの統合を前に一部株主との不協和音が目立っている。(12日 20:01)

日本興亜損保のプレスリリース

提訴請求から一ヶ月ほどでの決定ということになりました。

会社法の規定からは、60日以内に監査役が提訴しないと株主が自ら提訴できることになっています(原則)ので、ぎりぎりまで検討する場合も結構あるのですが、今回はスピード決着となりました。

第847条(責任追及等の訴え)

六箇月(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)前から引き続き株式を有する株主(第百八十九条第二項の定款の定めによりその権利を行使することができない単元未満株主を除く。)は、株式会社に対し、書面その他の法務省令で定める方法により、発起人、設立時取締役、設立時監査役、役員等(第四百二十三条第一項に規定する役員等をいう。以下この条において同じ。)若しくは清算人の責任を追及する訴え、第百二十条第三項の利益の返還を求める訴え又は第二百十二条第一項若しくは第二百八十五条第一項の規定による支払を求める訴え(以下この節において「責任追及等の訴え」という。)の提起を請求することができる。ただし、責任追及等の訴えが当該株主若しくは第三者の不正な利益を図り又は当該株式会社に損害を加えることを目的とする場合は、この限りでない。

2 公開会社でない株式会社における前項の規定の適用については、同項中「六箇月(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)前から引き続き株式を有する株主」とあるのは、「株主」とする。

3 株式会社が第一項の規定による請求の日から六十日以内に責任追及等の訴えを提起しないときは、当該請求をした株主は、株式会社のために、責任追及等の訴えを提起することができる。

4 株式会社は、第一項の規定による請求の日から六十日以内に責任追及等の訴えを提起しない場合において、当該請求をした株主又は同項の発起人、設立時取締役、設立時監査役、役員等若しくは清算人から請求を受けたときは、当該請求をした者に対し、遅滞なく、責任追及等の訴えを提起しない理由を書面その他の法務省令で定める方法により通知しなければならない。

5 第一項及び第三項の規定にかかわらず、同項の期間の経過により株式会社に回復することができない損害が生ずるおそれがある場合には、第一項の株主は、株式会社のために、直ちに責任追及等の訴えを提起することができる。ただし、同項ただし書に規定する場合は、この限りでない。

6 第三項又は前項の責任追及等の訴えは、訴訟の目的の価額の算定については、財産権上の請求でない請求に係る訴えとみなす。

7 株主が責任追及等の訴えを提起したときは、裁判所は、被告の申立てにより、当該株主に対し、相当の担保を立てるべきことを命ずることができる。

8 被告が前項の申立てをするには、責任追及等の訴えの提起が悪意によるものであることを疎明しなければならない。

 

損保ジャパンとの統合を控えているので、偶発の事象に対して早期に決着を図る必要があるからと考えられます。

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2009年6月11日 (木)

金融庁、金融審議会スタディグループ、我が国金融・資本市場の国際化に関するスタディグループ報告案を公表

昨今の コーポレートガバナンスには色々な問題がありますが、色々なところで同時並行的に検討が行われています。その成果はソフトローとなって一部成果をあげていることは、先日の牛角事件最高裁決定でも伺われるところです。

それらのうち、投資の観点から検討している金融庁の金融審議会のスタディグループの報告案が公表されました。

第23回我が国金融・資本市場の国際化に関するスタディグループ議事次第

金融審議会 我が国金融・資本市場の国際化に関するスタディグループ報告(案)~上場会社等のコーポレート・ガバナンスの強化に向けて~

この報告案は金商法と会社法の交錯するような領域における昨今の問題点を整理したもので横断的な内容になっています。もっとも対策や提言についてはあまりなく、整理の色彩が強いものです。

問題点は大別して3つの分野について整理がされています。

  • 資金調達
    • 新株発行
      • 第三者割当増資
      • 希釈化・支配権の移転を招く第三者割当増資
      • MSCB
      • 当局と取引所の連携強化
    • キャッシュアウト
    • グループ化
    • 子会社上場
    • 株式持合い
  • ガバナンス
    • 取締役会
    • 監査役の機能強化
    • 社外取締役・監査役の独立性
    • 監査役の選任議案・報酬の決定権
    • 役員報酬の開示
  • 機関投資家の議決権行使

最近、問題となっていることが目白押しなのですが、いくつかの点についてのみ言及しておきたいと思います。

キャッシュアウトについてなのですが、案では日本では特別決議の3分の2さえ取れればキャッシュアウトが出来て、諸外国の9割程度を要するのと比べて低いという指摘がありました。

日本の会社法でも略式合併は90%の議決権を要することになっているので同じはずなのですが、全部取得条項付種類株式の活用で対価をいじってしまい単位未満株主になるようにしてしまえば現金処理が出来るので事実上ハードルが下がっているということを指摘しているわけです。

すでに牛角事件など複数おきてきていますが、MBOの事例で株主に脅迫的に作用したTOBが見受けられるように思われます。

これに対処するのが株式買取請求権ということになりますが、色々と問題が多く使い勝手が重文が疑問があります。

牛角事件最高裁決定では株主にとって朗報になりましたが、価値を決めないといけないわけで鑑定の問題等は依然として残っているといえるでしょう。このいばらの道があるとするとTOBに応じざるを得ない判断になるかもしれません。

この辺の問題は、運用で何とかなるように思えるので、会社法を大規模にいじることまでは必要はないように思えますが、株主の権利を迅速に救済できる体制が整っていないと、少数株主をないがしろにする事例が相次ぐことになってしまいかねないことが痛感されます。

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2009年6月 9日 (火)

日本ラッド、会長が取締役会の賛同なしに突然公開買付を表明

システム開発の日本ラッドの会長が、突然取締役会の賛同はおろか事前協議すらなしに同社への公開買付を表明しました。

日本ラッドに会長がTOB 社内で事前協議せず(日本経済新聞2009年6月9日)

システム開発の日本ラッドの大塚隆一会長は8日、同社に対してTOB(株式公開買い付け)を実施すると発表した。同氏は資産管理会社保有分を含め発行済み株式数の21.2%を所有しており、議決権の51%の取得を目指す。会見した大塚氏は「新事業に対する社内の抵抗に乗じた外部からの干渉があった。乗っ取りを危惧した」としている。
買い付け価格は1株193円で前週末終値(157円)を23%上回る。買い付け期間は9日から8月4日。既に29日の株主総会で代表権を返上することが決まっている大塚会長は、「新事業を進める環境をつくり、後進に代表を譲りたい」としているが、他の取締役との事前協議がなかったため、社内は混乱しているという。日本ラッドでは「早急に取締役会を開き意見を表明したい」としている。

同社はかなり混乱しており、取締役会が見解を表明したプレスリリースは一旦公開されたのですが、現在は見られなくなっています。

社内紛争になりそうな気配があり、きな臭い感じがします。

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2009年6月 5日 (金)

シャルレ、委員会設置会社から監査役設置会社へと移行

MBOに関して創業家出身の経営者による不適切な事象があったシャルレですが、経営再建に伴って機関設計をそれまでの委員会設置会社から監査役設置会社へと改めると公表しました。監査役会まで設けるようですが重要なのは伝統的な監査役に回帰するという点でしょう。

委員会設置会社がだめだということで監査役設置会社に戻るのは極めて珍しいことです。

機関設計変更(監査役会設置会社への移行)に関するお知らせ

監査役会設置会社への移行に伴う代表者および役員の異動に関するお知らせについて

単純な理解としては、ガバナンスを重視すると委員会設置会社というイメージがあります。

社外取締役の設置が義務付けられるなどの点があり、監視が行き届くように思われるからです。

しかし、何度も指摘していますが、社会取締役の定義は極めて片面的です。親会社の取締役などは社外取締役になれるからです。

会社法

第2条(定義)

十五 社外取締役 株式会社の取締役であって、当該株式会社又はその子会社の業務執行取締役(株式会社の第三百六十三条第一項各号に掲げる取締役及び当該株式会社の業務を執行したその他の取締役をいう。以下同じ。)若しくは執行役又は支配人その他の使用人でなく、かつ、過去に当該株式会社又はその子会社の業務執行取締役若しくは執行役又は支配人その他の使用人となったことがないものをいう。

シャルレで問題を引き起こしたのは親会社の取締役ではないのですが、社外取締役の定義がやや不十分であるためという点では共通します。

創業家出身者がすべて社外取締役となっていたために不十分な働きしかしなかったためです。MBOをしようというのですから監視の不十分を通り越して、むしろお手盛りに加担するようなこともありるでしょう(加担したかについては事実認定はされていません)。

上記リンク先のリリースでは以下のように言及しています。

当社の普通株式に対する公開買付け(MBO)における利益相反行為が生じた一因としては、創業家以外の取締役が全て社外取締役であり、かつ、非常勤であったため、社外取締役らに対する情報伝達が不十分であったことも挙げられる

他にも縷々理由を挙げていますが、決定的なのは上記の点ではないかと感じました。

委員会設置会社の現実の利用は意外なことにグループ企業の子会社で盛んなことといい、委員会設置会社の真実についての認識を持たせてくれる一件ではないかと思えます。

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2009年6月 2日 (火)

アデランス、会社提案で承認された社外取締役が辞任

先日のアデランスの株主総会では会社提案の取締役候補でもユニゾンの関係者以外は承認されました。そのために会社提案の取締役とスティール提案の取締役が両方含まれる取締役が混在しています。

取締役の過半数をスティール提案の取締役で締めることになったので、完全に身動きが取れなくなることはあまりないと思われますが、逆に言うと十分な行動が取れないと思われる会社提案の取締役にとっては非常に難しい立場になります。

対立する立場でありながら善管注意義務などの取締役の義務を果たすにはどのように振舞えばいいのかは非常に難しいものがあるでしょう。

そのためか、十分な経営改革が遂行できないとして、会社提案の社外取締役が、選任から間もないですが、辞任したことが明らかになりました。

アデランスのリリース

またユニゾンの撤退も公表されています。

アデランスは完全に、スティールの下で事業の建て直しを図ることになりました。

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2009年6月 1日 (月)

買収防衛策新規導入が激減 廃止の例も

金融恐慌によってファンドの動きが鈍ったせいで、日本企業の買収防衛策導入の動きが一気に沈静化ことが明らかになりました。一度導入した買収防衛策を継続しないという形で廃止する例も出ており、風向きが完全に変わったことが伺われます。

買収防衛策、新規導入が激減 直近1年、9分の1に(日本経済新聞2009年5月31日)

買収防衛策を新たに導入する企業が急減している。5月末までの1年間で新規導入を決めた企業は23社と、前の年の約9分の1に減った。江崎グリコやDOWAホールディングスなど6月の株主総会を機に廃止する企業も相次いでいる。世界的な金融混乱で投資ファンドの活動が低迷、敵対的買収への警戒感が後退したことが背景にある。

(略)

一方で、ファンド対策ではなく、国内企業同士による敵対的買収に対抗するための導入が起きているのも事実であり、買収防衛策の廃止に方向が変わったわけではないことも事実です。

早稲田アカデミー、買収防衛策を導入(日本経済新聞2009年6月1日)

早稲田アカデミーは買収防衛策を導入した。発行済み株式の20%を超える取得を目指す買収者には事前に取得目的などの説明を求め、要求に応じない場合は新株予約権を既存の株主に無償で割り当てる。大手予備校「東進ハイスクール」を運営するナガセが早稲アカ株の買い増しに動いており、防衛策は同社への対抗策とみられる。

(略)

景気後退で事業再生型の企業再編が増えるのは当然ですが、その際に敵対的になることも場合によってはあるでしょうから、景気後退局面でもなお買収防衛策の出番はあるのでしょう。

 

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2009年5月31日 (日)

最高裁、レックスHDのMBO時に反対株主の株式買取請求権が行使されたことに伴う価格決定の申立てで、レックス側の許可抗告を棄却

牛角などを経営しているレックス・ホールディングスが2006年にMBOをして非公開会社になった際に、TOBに続いて定款変更などを組合せて普通株式を全株取得条項付種類株式にして取得対価を1株未満の普通株式にする方法でTOBに応じなかった株主を追い出して100%取得を実現しました。

この際に反対株主に株式買取請求権が生じて、行使されましたが、会社との協議では公正な価格とされる買取価格について合意することができず、価格決定の申立てが東京地裁に申し立てられていました。

会社側の1株23万円の主張に対して、東京地裁はその価格を妥当としましたが、東京高裁は33万円の決定を行いました。

このたび、レックス側からの許可抗告を最高裁が棄却したために1株33万円で決着することになりました。

最決平成21年5月29日←アドバンテッジ被害者牛角会ホームページへのリンクです。リンク先に決定全文へのリンクがあります。直接リンクできなかったので迂遠なことになっておりますがご了承ください。

MBOの買い取り価格、レックスの抗告棄却 最高裁(日本経済新聞2009年5月30日)

「牛角」などを展開するレックス・ホールディングスの経営陣による企業買収(MBO)をめぐり、株主らが株式買い取り価格が低すぎるなどと申し立てていた許可抗告審で、最高裁第三小法廷(近藤崇晴裁判長)は29日、レックス側の許可抗告を棄却する決定をした。1株約33万円を公正な価格とした東京高裁決定が確定した。最高裁が会社法に基づく株式の買い取り価格について判断を示したのは初めて。

レックスは2006年11月にMBOを発表し、買い取り価格を23万円と設定。レックスは06年8月に業績予想の下方修正を発表しており、株主らが「発表で急落した株価を基に価格を決めており不当」として裁判所に適正価格の決定を申し立てていた。

東京地裁はレックスの提示価格を妥当と判断。株主側の抗告を受けた東京高裁は、下方修正について「MBO実施を念頭に、決算内容を下方に誘導することを意図した会計処理がされたことは否定できない」として、適正価格を約33万円に引き上げた。(00:33)

株主が問題としていた会社のMBO実施前にわざと下方に業績を誘導したことも考慮して価格が決定された判断が最高裁で維持されたことになり、この点において意義があると思われます。

しかし一方で、鑑定等で株主に金銭的な負担を強いるなどの問題点も指摘されて、最後の砦だとされる株式買取請求権の存在意義に大きな疑問がついた一件でもありました。今後は経済情勢を反映して再編のためのMBOも起きてくる可能性がありますが、株主の犠牲の上に実行するようなことのないように工夫が必要だといえるでしょう。

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2009年5月29日 (金)

日本興亜損保の株主、保険金の支払を意図的に遅らせて収支をかさ上げをしたとして取締役を提訴するように監査役に提訴請求

日本興亜損保の元役員である株主が、日本興亜損保が保険金の支払を意図的に遅らせて収支をかさ上げをした違法行為があるとして、全取締役を提訴するように監査役に提訴請求したことが明らかになりました。

第847条(責任追及等の訴え)

六箇月(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)前から引き続き株式を有する株主(第百八十九条第二項の定款の定めによりその権利を行使することができない単元未満株主を除く。)は、株式会社に対し、書面その他の法務省令で定める方法により、発起人、設立時取締役、設立時監査役、役員等(第四百二十三条第一項に規定する役員等をいう。以下この条において同じ。)若しくは清算人の責任を追及する訴え、第百二十条第三項の利益の返還を求める訴え又は第二百十二条第一項若しくは第二百八十五条第一項の規定による支払を求める訴え(以下この節において「責任追及等の訴え」という。)の提起を請求することができる。ただし、責任追及等の訴えが当該株主若しくは第三者の不正な利益を図り又は当該株式会社に損害を加えることを目的とする場合は、この限りでない。

2 公開会社でない株式会社における前項の規定の適用については、同項中「六箇月(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)前から引き続き株式を有する株主」とあるのは、「株主」とする。

3 株式会社が第一項の規定による請求の日から六十日以内に責任追及等の訴えを提起しないときは、当該請求をした株主は、株式会社のために、責任追及等の訴えを提起することができる。

4 株式会社は、第一項の規定による請求の日から六十日以内に責任追及等の訴えを提起しない場合において、当該請求をした株主又は同項の発起人、設立時取締役、設立時監査役、役員等若しくは清算人から請求を受けたときは、当該請求をした者に対し、遅滞なく、責任追及等の訴えを提起しない理由を書面その他の法務省令で定める方法により通知しなければならない。

5 第一項及び第三項の規定にかかわらず、同項の期間の経過により株式会社に回復することができない損害が生ずるおそれがある場合には、第一項の株主は、株式会社のために、直ちに責任追及等の訴えを提起することができる。ただし、同項ただし書に規定する場合は、この限りでない。

6 第三項又は前項の責任追及等の訴えは、訴訟の目的の価額の算定については、財産権上の請求でない請求に係る訴えとみなす。

7 株主が責任追及等の訴えを提起したときは、裁判所は、被告の申立てにより、当該株主に対し、相当の担保を立てるべきことを命ずることができる。

8 被告が前項の申立てをするには、責任追及等の訴えの提起が悪意によるものであることを疎明しなければならない。

 

支払の意図的遅らせがあるか否かがまず問題になりそうで、日本興亜損保自身は否定している模様です。

また、かりに支払を遅らせたことがあったとして、それが違法であるのはともかくとして、それだけで会社に損害が生じているといえるでしょうか。利益をかさ上げして違法に配当をしたとか、保険契約者から訴えられたとかいうことがあって取締役の会社に対する損害賠償責任が生じるでしょうから、違法行為をしたというだけで責任追及の訴えをしろというのは飛躍があります。報道では意図的な支払遅延があるとして提訴請求をしたとだけ言及されているのですが、もう少し細かい構成をして提訴請求をしているのだと思われます。

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2009年5月28日 (木)

【アデランス定時株主総会】スティールの株主提案が承認される ユニゾンとの提携は白紙に

本日、28日に行われたアデランスの株主総会ですが、スティールの株主提案の役員選任議案が承認され、会社提案のうちユニゾンからの役員受け入れは否決されました。

スティールとの対抗のために会社が打ち出したユニゾンとの提携は、その前提となる役員受け入れが株主の支持を得られなかったことから白紙撤回されると思われます。

アデランスのリリース

スティールの勝因ですが、ユニゾンの買付価格が低めであることから、アデランスの過半数を占める外国人株主が反対したことと、一部の個人投資家も会社提案に反対であったことが報道されています。

業績の低迷に株主が反発をしていることになり、またもや人事をめぐって波乱が発生してしまったことになります。

しかし会社内の混乱は解消されていないため、この株主総会をもって安定軌道に入るなんてことは全くなく、今後も業績は低迷を続ける可能性があるといわざるを得ません。

さて、会社法的な問題点ですが、役員選任議案は、候補一人に対してそれぞれ賛否を明らかにする形で行われます。

今回は会社提案のうち、ユニゾンからの派遣分についてのみ否決され、会社提案のほかの候補は承認されました。一方スティールの提案した候補はすべて承認されたため、合計して11名の取締役がいることになってしまいました。この総会の前は9名の取締役がいたので、増えてしまっています。

定款の定めはこれよりも多めにしていることからこういうことが可能になるわけですが、定款所定の定数と、過半数の承認という二重のハードルがあるためにやや不可解な分かりにくさを生みかねないことが分かります。経営権をめぐる対立事例が増えてくると役員選任の結果が問題となるかもしれません。

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2009年5月27日 (水)

アデランス28日に定時株主総会 ユニゾンとスティールの対決へ

いよいよ明日28日にアデランスの定時株主総会が行われます。

会社提案の議案とスティール提案の役員選任議案が対立しているだけで、ユニゾンの提案はでていないのですが、会社提案の役員選任提案とユニゾンの公開買付の自己株式を応募することの承認議案でもって、ユニゾンの提案を支持するか否かを判断することになります。

アデランスの召集通知

アデランスは外国人持株比率が高く5割を超えているため、情勢は予断を許さない感じです。

アデランスが28日に株主総会、ファンド同士の対決決着へ(ロイター)

(略)

スティールは、アデランス株を約27%保有する筆頭株主。アデランスは、約7%の自己株式を保有しているほか、創業者の根本信男氏が約9%を有している。アデランスによると、外国人が51.1%、個人その他が20.9%、金融機関が12.6%、その他国内法人が7.5%などとなっている。昨年5月の株主総会での議決権行使率は約85%だった。

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2009年5月26日 (火)

経済産業省、社外取締役の設置義務付けを見送り

最近の日経朝刊の法務面でも取り上げられましたが、経済産業省は上場企業に社外取締役の設置義務付けを目指していました。しかし結局、設置義務付けは見送られることになりました。

経産省、社外取締役設置義務化を見送り 経営監視策求める(日本経済新聞2009年5月26日)

経済産業省は、上場企業のコーポレートガバナンス(企業統治)向上策として検討していた社外取締役の設置義務付けを見送る方針を固めた。設置は任意のままとするが、設置しない場合は独自の経営監視制度を導入するよう求める。2008年末から義務付けを検討してきたが、日本経団連などが「機能しているかどうか疑問がある」などと反対していた。
日本では現在、欧米型の委員会設置会社を採用した企業に社外取締役導入を義務付けている。上場企業のほとんどを占める監査役設置会社については社外取締役を義務付けておらず、外部監視機能強化が課題となっていた。

日本で従来から言われてきた反対論は、社外取締役の候補者がいないというものなのでした。やったことがないのでいるわけないのは当然といえば当然でした。

現在は監査役設置会社でも任意で導入している例は多いと思いますが、そのうちに人材の蓄積がなされたら、義務付けるような土壌が出来るかもしれません。

社外取締役をガバナンスの中心としているアメリカでもガバナンスはしっかりしていたわけではなかったことが明らかになってしまった今日ですので、義務付けの方向に持っていくのはそもそも雰囲気としても無理だったのでしょう。

ちなみに社外取締役というのは、部外者であることを意味しません。当該会社から見てその会社の役員であるかその会社の子会社の役員ではないことと定義されています。

第2条(定義)

十五 社外取締役 株式会社の取締役であって、当該株式会社又はその子会社の業務執行取締役(株式会社の第三百六十三条第一項各号に掲げる取締役及び当該株式会社の業務を執行したその他の取締役をいう。以下同じ。)若しくは執行役又は支配人その他の使用人でなく、かつ、過去に当該株式会社又はその子会社の業務執行取締役若しくは執行役又は支配人その他の使用人となったことがないものをいう。

このような定義から行くとなおさら、義務付けてもあまり意味がないことになりましょう。

ちなみにこの定義のおかげて、子会社の役員に親会社役員を登用することで子会社に委員会設置会社の形態をとることが良くあります。委員会設置会社は役員等に関して最低3人の取締役だけいればいいので、役員の人数を少なくすることが出来るからです。委員会設置会社はガバナンスとは別の観点からよく利用されているのが現状なので、社外取締役をガバナンスの観点から義務付けようというのにもやはり無理があるといえるかもしれません。

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北陸電力、原発の停止に起因する損害賠償請求を納入の日立に対して訴訟提起

北陸電力の志賀原子力委発電所が低圧タービン羽根の損傷によって停止したことからコスト高の火力発電所の稼動を増やしたことによるコスト増を損害として納入した日立に対して請求していたところ、合意が得られなかったことから、訴訟を提起したことが発表されました。

志賀原子力発電所2号機 低圧タービン羽根損傷に伴う日立製作所に対する損害賠償請求訴訟の提起について

重電メーカーと電力会社が訴訟を構えるなど、ずっと付き合いを続けていかざるを得ない間なので信じられない感じがしないでもないですが、最近は安直に合意すると代表訴訟のリスクがあるために、激しい対立がないのに訴訟でエクスキューズにすることが結構あります。

サブリース訴訟もこの気があるらしいのですが、訴訟提起の敷居が下がったという意味で企業社会の変化が伺われることが分かる一件なのではないかと思われます。

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エフィッシモ、コーエーテクモホールディングスの成立にかかる共同株式移転に関する株式買取請求権行使で価格で合意できなかったため、価格決定の申立て

この4月にコーエーとテクモは共同株式移転を用いて、持株会社の親会社を作って経営統合をしましたが、テクモの16.52%を保有していたエフィッシモ・キャピタル・マネージメントはこれに反対をして株式買取請求権を行使しました。

しかし、その後の買取価格で合意に至ることが出来ず、東京地裁に価格決定の申立てをしたことが明らかになりました。

コーエーテクモからリリースがされています。

当社の設立に係る共同株式移転に対する反対株主からの株式買取請求に関する価格決定の申立てについてのお知らせ

第806条(反対株主の株式買取請求)

新設合併等をする場合(次に掲げる場合を除く。)には、反対株主は、消滅株式会社等に対し、自己の有する株式を公正な価格で買い取ることを請求することができる。

一 第八百四条第二項に規定する場合

二 前条に規定する場合

2 前項に規定する「反対株主」とは、次に掲げる株主をいう。

一 第八百四条第一項の株主総会(新設合併等をするために種類株主総会の決議を要する場合にあっては、当該種類株主総会を含む。)に先立って当該新設合併等に反対する旨を当該消滅株式会社等に対し通知し、かつ、当該株主総会において当該新設合併等に反対した株主(当該株主総会において議決権を行使することができるものに限る。)

二 当該株主総会において議決権を行使することができない株主

3 消滅株式会社等は、第八百四条第一項の株主総会の決議の日から二週間以内に、その株主に対し、新設合併等をする旨並びに他の新設合併消滅会社、新設分割会社又は株式移転完全子会社(以下この節において「消滅会社等」という。)及び設立会社の商号及び住所を通知しなければならない。ただし、第一項各号に掲げる場合は、この限りでない。

4 前項の規定による通知は、公告をもってこれに代えることができる。

5 第一項の規定による請求(以下この目において「株式買取請求」という。)は、第三項の規定による通知又は前項の公告をした日から二十日以内に、その株式買取請求に係る株式の数(種類株式発行会社にあっては、株式の種類及び種類ごとの数)を明らかにしてしなければならない。

6 株式買取請求をした株主は、消滅株式会社等の承諾を得た場合に限り、その株式買取請求を撤回することができる。

7 新設合併等を中止したときは、株式買取請求は、その効力を失う。

第807条(株式の価格の決定等)

株式買取請求があった場合において、株式の価格の決定について、株主と消滅株式会社等(新設合併をする場合における新設合併設立会社の成立の日後にあっては、新設合併設立会社。以下この条において同じ。)との間に協議が調ったときは、消滅株式会社等は、設立会社の成立の日から六十日以内にその支払をしなければならない。

2 株式の価格の決定について、設立会社の成立の日から三十日以内に協議が調わないときは、株主又は消滅株式会社等は、その期間の満了の日後三十日以内に、裁判所に対し、価格の決定の申立てをすることができる

3 前条第六項の規定にかかわらず、前項に規定する場合において、設立会社の成立の日から六十日以内に同項の申立てがないときは、その期間の満了後は、株主は、いつでも、株式買取請求を撤回することができる。

4 消滅株式会社等は、裁判所の決定した価格に対する第一項の期間の満了の日後の年六分の利率により算定した利息をも支払わなければならない。

5 株式買取請求に係る株式の買取りは、設立会社の成立の日(新設分割をする場合にあっては、当該株式の代金の支払の時)に、その効力を生ずる。

6 株券発行会社は、株券が発行されている株式について株式買取請求があったときは、株券と引換えに、その株式買取請求に係る株式の代金を支払わなければならない。

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ユニゾン・キャピタル、アデランスの公開買付価格を引き上げ

アデランス経営陣の同意を得てアデランスに対して公開買付を表明しているユニゾン・キャピタルグループですが、1株当たり1000円としていました。

この価格に対しては直近の株価よりは高めであるものの、1株あたりの純資産額を下回るために安すぎるとして、筆頭株主であるスティール・パートナーズは反発をしていました。

ここに来て、ユニゾンは買付価格を1200円に引き上げるほか、公開買付の条件を一部撤回して、定時株主総会で会社提案の取締役等の選任議案と剰余金配当の議案が承認されることだけを条件にすることに改めました。自己株式で公開買付に応募することが承認されることという条件は撤回されました。

自己株式の応募は一般株主に強圧的に作用するとスティールが批判していたところでした。自己株式の応募によって希釈化が生じることを問題視していたわけです。

しかし、これでもなお1株あたり純資産額(1582円)は下回っています。なおもスティールの批判している問題点は完全には解消されておらず、スティールとの対立構造は解消されないのではないかと思われます。

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2009年5月24日 (日)

最高裁、取締役会決議が必要な業務執行について取締役会決議を欠く場合に、当の会社以外が無効を主張することは原則不可と判示

会社法の基本的な論点ですが、会社法362条で取締役会決議が必要とされる重要な業務執行について、取締役会決議を欠く場合の効力という問題があります。

第362条(取締役会の権限等)

取締役会は、すべての取締役で組織する。

2 取締役会は、次に掲げる職務を行う。

一 取締役会設置会社の業務執行の決定

二 取締役の職務の執行の監督

三 代表取締役の選定及び解職

3 取締役会は、取締役の中から代表取締役を選定しなければならない。

4 取締役会は、次に掲げる事項その他の重要な業務執行の決定を取締役に委任することができない。

一 重要な財産の処分及び譲受け

二 多額の借財

三 支配人その他の重要な使用人の選任及び解任

四 支店その他の重要な組織の設置、変更及び廃止

五 第六百七十六条第一号に掲げる事項その他の社債を引き受ける者の募集に関する重要な事項として法務省令で定める事項

六 取締役の職務の執行が法令及び定款に適合することを確保するための体制その他株式会社の業務の適正を確保するために必要なものとして法務省令で定める体制の整備

七 第四百二十六条第一項の規定による定款の定めに基づく第四百二十三条第一項の責任の免除

5 大会社である取締役会設置会社においては、取締役会は、前項第六号に掲げる事項を決定しなければならない。

 

これについては端的に判例があり、相手方が取締役形決議を欠くことについて、知っていたか、知りうべかりし場合には、会社は無効を主張することが出来るものの、原則として有効としています。要するに心裡留保の枠組みを転用しているわけです。

さて、破産に瀕した会社が、唯一の財産である債権(これは重要な財産にあたります)を取締役会決議を経ずに債権譲渡をしたという事例で、譲受人は取締役会決議を欠くことを知っていたという事実の下で、債務者が当該債権譲渡の無効主張をしたという事件があり、原審までは債権譲渡を無効と判断したのですが、最高裁は破棄差し戻しをしました。

最高裁判所第二小法廷平成21年04月17日判決 平成19(受)1219 約束手形金,不当利得返還等請求事件

その理由としては、

株式会社の代表取締役が取締役会の決議を経ないで重要な業務執行に該当する取引をした場合,取締役会の決議を経ていないことを理由とする同取引の無効は,原則として会社のみが主張することができ,会社以外の者は,当該会社の取締役会が上記無効を主張する旨の決議をしているなどの特段の事情がない限り,これを主張することはできないと解するのが相当である

としています。

原則有効であるということを重く見て、利益相反取引と同じく相対的無効のように解したということになります。

特段の事情としては、当該会社が無効であることを決議していることなどが例示されていまして、債権者代位で本人が主張しない錯誤無効を代位債権者が主張できる場合と同じようなことが念頭に置かれているようです。

古典的な論点に新展開を付け加えた重要な判例ではないかと思います。

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2009年5月23日 (土)

最高裁、会社が破産手続開始決定後も当該会社の取締役選任決議不存在確認訴訟の訴えの利益は失われないと判示

取締役からの解任決議と新たな取締役選任決議の不存在確認を解任された取締役が請求していたところ、当該会社に破産手続き開始決定がされてしまったという事例で、最高裁が、破産しても当該決議不存在確認の訴えの利益は失われないと判示しました。

最高裁判所第二小法廷平成21年04月17日判決 平成20(受)951 株主総会等決議不存在確認請求事件

取締役と会社の関係は委任ですが、すると民法653条から委任者の破産は委任契約の終了事由である為に、取締役は当然に契約終了になり、選任決議の不存在を争うまでもなく地位を失うので訴えの利益がないように思えます。事実、原審はそのように判断していました。

しかし、最高裁は、民法653条の趣旨を、破産が委任の終了事由となるのは財産の管理処分権が破産によって委任者には出来なくなるので受任者にも当然出来なくなるというところにあると解して、会社の場合には財産の管理処分権のほかに会社組織にかかわる行為があり、これは管財人には帰属しないために会社は破産後もなお行うことができるとしました。よって取締役との委任契約は当然には終了しないと判断しました。

この破産しても取締役は当然には地位を失わないというのは、これがはじめての判示ではなく、保険法に関連してすでに判示したことがあります。

最判平成16年6月10日民集58巻5号1178頁

この事件では、保険約款に記載されている取締役に、会社が破産した後の取締役も該当するとしたもので本件とは若干事案が異なりますが、判断の実質は同じです。

会社関係訴訟の訴えの利益の消滅については判例法理がかなりあるのでおさえておかないといけませんが、さらに一件加わったといえるでしょう。

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2009年5月22日 (金)

東京地裁、個人投資家提起のライブドアの有価証券報告書の虚偽記載の損害賠償請求訴訟で一部認容

ライブドアの有価証券報告書の虚偽記載で株価が下落したとして株主が役員似損害賠償を請求している訴訟が複数提起されています。

機関投資家が提起した方では、平成20年6月13日にすでに判決が出ており、損害賠償請求が認定されています。

詳しくは以下のエントリーをどうぞ。

東京地裁、ライブドアの有価証券報告書虚偽記載の損害賠償請求で、検察官による「公表」があったと判断

 

このたび、別ルートの個人株主が同じ請求をしていた事件で東京地裁は賠償を認める一方で66%もの減額をして、堀江元社長をはじめとする旧経営陣に76億2800万円の損害賠償を命じました。

この二件の訴訟の最大の争点は、金商法21条の2の適用をめぐる問題です。

民法709条で損害賠償請求をすると、損害額の立証が非常に難しいという問題があるために、金商法21条の2では、株価の下落分を損害額とすることができるという特則が設けられています。

しかし、この規定の適用の要件として、虚偽記載があったとする公表が必要という規律になっています。

金融商品取引法
第21条の2(虚偽記載等のある書類の提出者の賠償責任)
第二十五条第一項各号(第五号及び第九号を除く。)に掲げる書類(以下この条において「書類」という。)のうちに、重要な事項について虚偽の記載があり、又は記載すべき重要な事項若しくは誤解を生じさせないために必要な重要な事実の記載が欠けているときは、当該書類の提出者は、当該書類が同項の規定により公衆の縦覧に供されている間に当該書類(同項第十二号に掲げる書類を除く。)の提出者又は当該書類(同号に掲げる書類に限る。)の提出者を親会社等(第二十四条の七第一項に規定する親会社等をいう。)とする者が発行者である有価証券を募集又は売出しによらないで取得した者に対し、第十九条第一項の規定の例により算出した額を超えない限度において、記載が虚偽であり、又は欠けていること(以下この条において「虚偽記載等」という。)により生じた損害を賠償する責めに任ずる。ただし、当該有価証券を取得した者がその取得の際虚偽記載等を知つていたときは、この限りでない。
2 前項本文の場合において、当該書類の虚偽記載等の事実の公表がされたときは、当該虚偽記載等の事実の公表がされた日(以下この項において「公表日」という。)前一年以内に当該有価証券を取得し、当該公表日において引き続き当該有価証券を所有する者は、当該公表日前一月間の当該有価証券の市場価額(市場価額がないときは、処分推定価額。以下この項において同じ。)の平均額から当該公表日後一月間の当該有価証券の市場価額の平均額を控除した額を、当該書類の虚偽記載等により生じた損害の額とすることができる。
3 前項の「虚偽記載等の事実の公表」とは、当該書類の提出者又は当該提出者の業務若しくは財産に関し法令に基づく権限を有する者により、当該書類の虚偽記載等に係る記載すべき重要な事項又は誤解を生じさせないために必要な重要な事実について、第二十五条第一項の規定による公衆の縦覧その他の手段により、多数の者の知り得る状態に置く措置がとられたことをいう。
4 第二項の場合において、その賠償の責めに任ずべき者は、その請求権者が受けた損害の額の全部又は一部が、当該書類の虚偽記載等によつて生ずべき当該有価証券の値下り以外の事情により生じたことを証明したときは、その全部又は一部については、賠償の責めに任じない。
5 前項の場合を除くほか、第二項の場合において、その請求権者が受けた損害の全部又は一部が、当該書類の虚偽記載等によつて生ずべき当該有価証券の値下り以外の事情により生じたことが認められ、かつ、当該事情により生じた損害の性質上その額を証明することが極めて困難であるときは、裁判所は、口頭弁論の全趣旨及び証拠調べの結果に基づき、賠償の責めに任じない損害の額として相当な額の認定をすることができる。

ライブドア自身は正式には虚偽記載をしていたなどと公表をしていないために、適用が認められるのかが問題となったわけです。

上記の機関投資家ルートでは、検察官が報道機関に情報を流して報道がなされたときを公表と認定しました。

これは実質的な結論には納得が出来るものの、条文の文言上はかなり無理があるのですが、今回の個人投資家ルートでも、公表の日を「報道機関が東京地検の捜査状況を報じた06年1月18日」として、金商法の適用を肯定しました。金商法21条の2の「公表」に関しては先の裁判例と同様の判断といえます。

その代わりというわけではないでしょうが、大幅に減額して一部認容にとどめており、原告の多くは不服として控訴するとしています。

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2009年5月20日 (水)

スティール・パートナーズ、アデランスとユニゾンの提携に反対

スティール・パートナーズとアデランスの経営権をめぐる攻防にユニゾンキャピタルがホワイトナイトのような役割で登場して(買い付けの局面ではないので本来の意味のホワイトナイトとはいえませんね)新たな局面を迎えています。

これに対してスティールは、ユニゾンの買い付け価格が安すぎるとして反対をしており、取締役選任議案についても自らの案への賛同を募っています。

スティール・パートナーズ「アデランスホールディングス株主様への重要なお願い」

また議決権行使助言会社大手のグラスルイスがユニゾンの提案への反対と、スティールの提案への賛成を呼びかけているとスティールが公表しています。

議決権行使アドバイザーのグラス・ルイスとリスクメトリックス、スティール・パートナーズの候補者を取締役に選任し、ユニゾンの提案を拒絶することをアデランス株主に推奨

ユニゾンの提案している買い付け価格は1株1000円なのですが、これは株価の推移からみるとやや高めになっています。しかし一株あたりの純資産額を大幅に下回っており、その点をスティールは批判しています。もっとも、極度の経営不振にあることを考えると、一株あたり純資産を下回っているとはいえ、買付価格としてはその程度になるのも合理的ではないかとも思われます。

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2009年5月19日 (火)

三洋電機株主、違法配当に関して旧経営陣に対して責任追及の訴えを提起

三洋電機がかつて不正経理によって違法配当をしていたことが明らかになっていますが、会社が責任追及をしないということで株主が当時の経営陣に対して責任追及の訴えを提起しました。

 

三洋電機株主が旧経営陣を提訴 「違法配当」で278億円請求(日本経済新聞2009年5月19日)

三洋電機が不適切な会計処理で違法配当を繰り返し会社に損害を与えたとして、西日本在住の男性株主が18日、創業家一族の井植敏・元会長を含む旧経営陣ら17人に計約278億円の損害賠償を求める株主代表訴訟を大阪地裁に起こした。

訴えなどによると、同社は2007年12月、不適切な会計処理があったとして01年3月期以降の決算を訂正。株式評価損などを計上し直し、01年3月期は908億円の赤字に転落。その後も赤字が続き違法配当が判明した。

男性株主は昨年12月、02年9月中間期から04年9月中間期までの5期分、計約278億円について、配当可能な利益が無いのに実施した違法配当だったとして、井植元会長らに賠償請求の提訴をするよう同社側に請求した。(00:59)

 

会社法で株主代表訴訟は、責任追及の訴えを名前が改められましたが、実質は同じです。むしろ責任追及だけではなく不公正な発行価格の場合の差額支払の追及もあるので、名称はやや不適当かもしれません。

さて、違法配当をすると役員等は会社法462条の責任を追うことになります。

よって責任追及の訴えの対象になるわけですが、847条1項から原則はいきなり株主が提起するのはなく、提訴請求を会社に対してすることになります。上記引用から分かるように、提訴請求をした上でのことであるために、原則どおりの経緯をたどっていることが分かります。

会社法

第462条(剰余金の配当等に関する責任)

前条第一項の規定に違反して株式会社が同項各号に掲げる行為をした場合には、当該行為により金銭等の交付を受けた者並びに当該行為に関する職務を行った業務執行者(業務執行取締役(委員会設置会社にあっては、執行役。以下この項において同じ。)その他当該業務執行取締役の行う業務の執行に職務上関与した者として法務省令で定めるものをいう。以下この節において同じ。)及び当該行為が次の各号に掲げるものである場合における当該各号に定める者は、当該株式会社に対し、連帯して、当該金銭等の交付を受けた者が交付を受けた金銭等の帳簿価額に相当する金銭を支払う義務を負う。

一 前条第一項第二号に掲げる行為 次に掲げる者

イ 第百五十六条第一項の規定による決定に係る株主総会の決議があった場合(当該決議によって定められた同項第二号の金銭等の総額が当該決議の日における分配可能額を超える場合に限る。)における当該株主総会に係る総会議案提案取締役(当該株主総会に議案を提案した取締役として法務省令で定めるものをいう。以下この項において同じ。)

ロ 第百五十六条第一項の規定による決定に係る取締役会の決議があった場合(当該決議によって定められた同項第二号の金銭等の総額が当該決議の日における分配可能額を超える場合に限る。)における当該取締役会に係る取締役会議案提案取締役(当該取締役会に議案を提案した取締役(委員会設置会社にあっては、取締役又は執行役)として法務省令で定めるものをいう。以下この項において同じ。)

二 前条第一項第三号に掲げる行為 次に掲げる者

イ 第百五十七条第一項の規定による決定に係る株主総会の決議があった場合(当該決議によって定められた同項第三号の総額が当該決議の日における分配可能額を超える場合に限る。)における当該株主総会に係る総会議案提案取締役

ロ 第百五十七条第一項の規定による決定に係る取締役会の決議があった場合(当該決議によって定められた同項第三号の総額が当該決議の日における分配可能額を超える場合に限る。)における当該取締役会に係る取締役会議案提案取締役

三 前条第一項第四号に掲げる行為 第百七十一条第一項の株主総会(当該株主総会の決議によって定められた同項第一号に規定する取得対価の総額が当該決議の日における分配可能額を超える場合における当該株主総会に限る。)に係る総会議案提案取締役

四 前条第一項第六号に掲げる行為 次に掲げる者

イ 第百九十七条第三項後段の規定による決定に係る株主総会の決議があった場合(当該決議によって定められた同項第二号の総額が当該決議の日における分配可能額を超える場合に限る。)における当該株主総会に係る総会議案提案取締役

ロ 第百九十七条第三項後段の規定による決定に係る取締役会の決議があった場合(当該決議によって定められた同項第二号の総額が当該決議の日における分配可能額を超える場合に限る。)における当該取締役会に係る取締役会議案提案取締役

五 前条第一項第七号に掲げる行為 次に掲げる者

イ 第二百三十四条第四項後段(第二百三十五条第二項において準用する場合を含む。)の規定による決定に係る株主総会の決議があった場合(当該決議によって定められた第二百三十四条第四項第二号(第二百三十五条第二項において準用する場合を含む。)の総額が当該決議の日における分配可能額を超える場合に限る。)における当該株主総会に係る総会議案提案取締役

ロ 第二百三十四条第四項後段(第二百三十五条第二項において準用する場合を含む。)の規定による決定に係る取締役会の決議があった場合(当該決議によって定められた第二百三十四条第四項第二号(第二百三十五条第二項において準用する場合を含む。)の総額が当該決議の日における分配可能額を超える場合に限る。)における当該取締役会に係る取締役会議案提案取締役

六 前条第一項第八号に掲げる行為 次に掲げる者

イ 第四百五十四条第一項の規定による決定に係る株主総会の決議があった場合(当該決議によって定められた配当財産の帳簿価額が当該決議の日における分配可能額を超える場合に限る。)における当該株主総会に係る総会議案提案取締役

ロ 第四百五十四条第一項の規定による決定に係る取締役会の決議があった場合(当該決議によって定められた配当財産の帳簿価額が当該決議の日における分配可能額を超える場合に限る。)における当該取締役会に係る取締役会議案提案取締役

2 前項の規定にかかわらず、業務執行者及び同項各号に定める者は、その職務を行うについて注意を怠らなかったことを証明したときは、同項の義務を負わない。

3 第一項の規定により業務執行者及び同項各号に定める者の負う義務は、免除することができない。ただし、前条第一項各号に掲げる行為の時における分配可能額を限度として当該義務を免除することについて総株主の同意がある場合は、この限りでない。

第847条(責任追及等の訴え)

六箇月(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)前から引き続き株式を有する株主(第百八十九条第二項の定款の定めによりその権利を行使することができない単元未満株主を除く。)は、株式会社に対し、書面その他の法務省令で定める方法により、発起人、設立時取締役、設立時監査役、役員等(第四百二十三条第一項に規定する役員等をいう。以下この条において同じ。)若しくは清算人の責任を追及する訴え、第百二十条第三項の利益の返還を求める訴え又は第二百十二条第一項若しくは第二百八十五条第一項の規定による支払を求める訴え(以下この節において「責任追及等の訴え」という。)の提起を請求することができる。ただし、責任追及等の訴えが当該株主若しくは第三者の不正な利益を図り又は当該株式会社に損害を加えることを目的とする場合は、この限りでない。

2 公開会社でない株式会社における前項の規定の適用については、同項中「六箇月(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)前から引き続き株式を有する株主」とあるのは、「株主」とする。

3 株式会社が第一項の規定による請求の日から六十日以内に責任追及等の訴えを提起しないときは、当該請求をした株主は、株式会社のために、責任追及等の訴えを提起することができる。

4 株式会社は、第一項の規定による請求の日から六十日以内に責任追及等の訴えを提起しない場合において、当該請求をした株主又は同項の発起人、設立時取締役、設立時監査役、役員等若しくは清算人から請求を受けたときは、当該請求をした者に対し、遅滞なく、責任追及等の訴えを提起しない理由を書面その他の法務省令で定める方法により通知しなければならない。

5 第一項及び第三項の規定にかかわらず、同項の期間の経過により株式会社に回復することができない損害が生ずるおそれがある場合には、第一項の株主は、株式会社のために、直ちに責任追及等の訴えを提起することができる。ただし、同項ただし書に規定する場合は、この限りでない。

6 第三項又は前項の責任追及等の訴えは、訴訟の目的の価額の算定については、財産権上の請求でない請求に係る訴えとみなす。

7 株主が責任追及等の訴えを提起したときは、裁判所は、被告の申立てにより、当該株主に対し、相当の担保を立てるべきことを命ずることができる。

8 被告が前項の申立てをするには、責任追及等の訴えの提起が悪意によるものであることを疎明しなければならない。

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2009年5月17日 (日)

楽天、東京地裁にTBS株式の価格決定の申立て

楽天は結局、TBSから撤退することになりましたが、株式買取請求権の行使に対して、価格で折り合うことが出来ず、東京地裁に価格決定の申立てを行いました。

楽天のプレスリリース

株式会社東京放送ホールディングス株式の買取請求に関する価格決定の裁判所への申立について

まずは当事者間で話し合い、それでもだめなら裁判所に決定してもらうということで、会社法の立法担当者によると、価格決定の申立ては最後の砦とされています。

もっともそれが若干機能不全ではないかという指摘はすでに出てきています。もっともそれは個人株主の追い出しのような事例で個人株主には資力がないために大変なことになるということでして企業間での場合なら状況は異なるのでしょう。しかし、楽天とTBSも対立しているわけですから、不穏当な個人株主追い出し事例でやったように鑑定合戦になったりするかもしれません。

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2009年4月25日 (土)

NowLoading、取締役会議事録の閲覧謄写許可請求を起こされる

NowLoadingについては以前もお伝えしたことがありますが、騒動はまだ続いている模様です。

検査役の選任と取締役会議事録の閲覧謄写許可請求を東京地裁に申し立てられたことがリリースされました。

株主による検査役選任の申立てに関するお知らせ

株主による取締役会議事録閲覧謄写許可の申立てに関するお知らせ

検査役は総会検査役ではなく、業務を検査する方のです。

近時の閲覧請求というと、株主名簿が多かったことから、取締役会議事録が対象になるというのは珍しく注目されます。

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2009年4月16日 (木)

アデランス、ユニゾン・キャピタルと提携 スティールに対抗

こう着状態が続いているアデランスとスティール・パートナーズの件で動きがありました。

アデランスが国内のファンドであるユニゾン・キャピタルと資本提携をするとのことで、ユニゾン・キャピタルはTOBをして特別決議を阻止できる分を保有する筆頭株主を目指すとしています。

アデランスHD、ユニゾンと資本業務提携 米スティールに対抗(日本経済新聞2009年4月16日)

かつら最大手のアデランスホールディングスは16日、国内投資ファンドのユニゾン・キャピタルと資本業務提携すると正式発表した。会社側提案の新役員案が5月の定時株主総会で承認されることを前提に、ユニゾンはTOB(株式公開買い付け)により重要議案に拒否権を持つ35.2%以上の株式取得を目指す。アデランスはユニゾンから役員を受け入れ経営再建を急ぐとともに、役員退陣などを求める筆頭株主の米スティール・パートナーズ(約27%の株式を保有)に対抗する。

(略)

アデランスの業績は低迷を続けており、スティールも大不況で身動きが取れない事態になってまさに膠着状態です。

スティールはアデランスに対しては役員の退陣を求めるなどをしており、まだ対決姿勢のままですので、ユニゾンのTOBの行方も含めて、事態が動くかもしれなくなってきました。

しかし、アデランスの株価は長期低落傾向です。今回のユニゾンのTOB価格は現在の株価に近い1000円とされていますので、この価格では(確認はしていませんが)スティールには損が出るように思われますのでこれを機に撤退をするのも難しいかもしれません。

 

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2009年4月 4日 (土)

シャルレ株主、MBO失敗で株価が低迷して損害を被ったとして旧経営陣を提訴へ

以前お伝えしたシャルレMBOが流れた件の新展開です。

株主がMBOの失敗で損害を被ったとして、騒ぎの後退陣した旧経営陣に損害賠償請求訴訟を提起する方向であると報道されました。

シャルレ株主、賠償請求訴訟へ  TOB失敗で旧経営陣に(47NEWS)

女性下着販売シャルレ(神戸市)の株主が、旧経営陣の不正行為による株式公開買い付け(TOB)の失敗で株価が下落し、損害を被ったとして、同社と、創業家の前社長、林勝哉氏ら当時の経営陣を相手に、損害賠償請求の集団訴訟を来月上旬にも起こすことが3日、分かった。

林氏はTOBに不当介入したとして社長を解任されており、今後は同氏を含む当時の経営陣の責任の有無が法廷で争われることとなった。

(略)

TOB発表後に800円近くまで上がった株価は急落し、現在は300円前後にとどまっている。

(略)

代表訴訟ではなく、株主が賠償を求めるものなので、会社法で行くなら429条、民法で行くなら709条が考えられます。

会社法429条の第三者に株主が含まれることはよいとしても、直接損害があるかについては問題になりそうです。

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2009年4月 1日 (水)

東京地裁、機関投資家提起の西武鉄道有価証券報告書虚偽記載による損害賠償請求訴訟で237億円の賠償を命じる

西武鉄道による有価証券報告書の虚偽記載による株価下落に対して、株主がそれぞれ損害賠償を西武鉄道に対して求めて訴訟が複数起こされていますが、そのうち、機関投資家が提起した分の第一審判決と信託銀行が提起した分の控訴審判決が出ました。

西武株虚偽記載、237億円賠償命じる 東京地裁(日本経済新聞)

西武鉄道による有価証券報告書の虚偽記載発覚で株価が下落して損失を被ったとして、企業年金連合会などが損害賠償を求めた訴訟の判決で、東京地裁(綿引穣裁判長)は31日、同社などに計約237億円の支払いを命じた。同社側は控訴する方針。

一方、昨年4月に信託銀行が敗訴した訴訟の控訴審判決で、東京高裁(稲田龍樹裁判長)は同日、一審・東京地裁判決を取り消し、計約9億5000万円を支払うよう同社などに命じた。

(略)

上記報道によると、機関投資家分と信託銀行分でも算定基準が異なっているようですし、先日お伝えした個人投資家の控訴審判決でも、一審の算定を大幅に減額する判断が示されています。

判決全文を見ていないのでなんともいえないのですが、規定の適用の可否についてゆれがあるようで、せっかく設けた規定が活かされていない様に思えてしまいますが、問題は虚偽記載の内容が株主構成についてであるというところにもあり、判断を難しくしています。

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2009年3月27日 (金)

サッポロホールディングス総会、スティールの反対にもかかわらず取締役再任

今年のサッポロホールディングスの株主総会が開催されましたが、スティールの提案はまた支持を集められず、役員は再任される一方、買収防衛策も継続されました。

サッポロ:株主総会で役員選任可決 スティールの反対退け

サッポロホールディングス(HD)は27日、東京都内で定時株主総会を開き、取締役選任や買収防衛策の継続など会社側提出の全5議案を可決した。株式の18.6%を持つ筆頭株主の米系投資会社「スティール・パートナーズ」が、取締役選任議案などへの反対を事前表明したが、他の株主の賛同を得られなかった。

賛成票の割合は、取締役選任議案が昨年とほぼ同じ約75%、買収防衛策継続議案は外国人株主の反対票が増え、1ポイント減の約64%だった。

(略)

当社株券等の大規模買付行為への対応方針(買収防衛策)の継続承認及び独立委員会の委員選任に関するお知らせ

サッポロの業績は低迷を続けており、スティールが手詰まりであることからサッポロ経営陣は昨年に続いてしのぐことが出来ましたが、会社の将来像という点では全く視界が開けません。

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2009年3月 7日 (土)

全日空、ESOPを導入

新しい従業員持株制度のスキームであるESOPは、日経でよく取り上げられていることから導入旗振りが官民で行われていますが、この流れの中で導入事例が報道されました。

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全日空、新型従業員持ち株制度を導入 リストラ協力に報いる(日本経済新聞2009年2月26日)

全日本空輸は信託の仕組みを使った新しい従業員持ち株制度を導入する。米国で普及している従業員持ち株制度(ESOP)の日本版で、株価が上昇すれば従業員に利益配分し、下落した場合は損失分を会社が負担する。同社は業績の急激な悪化を受け賃金カットを含む大規模なリストラを計画しており、社員の協力に報いる方策として新制度を活用する考え。信託の株購入による株価の下支え効果も期待する。

 3月上旬に従業員を受益者とする期間5年の信託を設定する。信託は金融機関から約70億円を借り入れ、全日空株を3月末にかけて市場で購入。4月以降、毎月一定の株式を従業員持ち株会に時価で売却する。(17:12)

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従来からある従業員持株会の論点に加えて、ESOPだとそのスキームゆえにさらに新しい問題が想起されます。

さらに金商法の問題も生みそうな気がするのですが、おいおい取り上げていこうと思います。

さしあたり、事案を取り上げておきます。

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2009年3月 3日 (火)

東京高裁、西武鉄道による有価証券報告書虚偽記載で個人株主が株価下落の損害賠償を求めた訴訟で賠償を減額

個人株主ルートと信託銀行ルートの二つの訴訟が係属している西武鉄道有価証券報告書虚偽記載による株価下落についての損害賠償事件ですが、個人株主について東京地裁は、画期的な判断をして賠償を認めたのですが、控訴審判決が26日にあり、東京高裁は賠償額をかなり減額しました。

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西武株虚偽記載、個人株主への賠償減額 東京高裁(日本経済新聞2009年2月26日)

西武鉄道による有価証券報告書の虚偽記載事件で株価が下落して損失を被ったとして、個人株主約240人が損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決で、東京高裁(宗宮英俊裁判長)は26日、同社などに対して計約7800万円を支払うよう命じた。一審・東京地裁が認定した計約2億3000万円の約3分の1に賠償を減額。株主にとって厳しい判決となった。

 支払いを命じられたのは同社と堤義明・元代表のほか、プリンスホテル(旧コクドを吸収合併)など。

 一審・東京地裁は虚偽記載公表直前の株価1株1081円と売却額との差額を損害と認定していた。だが同高裁は今回の虚偽記載が粉飾決算ではなく、株主構成に関する内容だったことを重視。「財務状況や企業価値に与える影響は少なかった」と指摘し、175人の個人株主の損害額について「1株160円」と認定した。(01:12)

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第一審判決についてのエントリー

西武鉄道有価証券報告書虚偽記載で株価下落で損害を被った一部の個人株主の賠償請求が認容される

上記リンク先のエントリーでも述べたのですが、虚偽記載は株主構成についての部分であり会社の財務などについてのものではありませんでした。東京高裁はこの点を重視した模様です。

株価の下落から算出するのではない手法を用いた模様で、かなりの減額となる結論が導かれたようです。

虚偽記載の内容が本質的なところではないのは確かなのですが、金商法判例の流れからいうとかなり画期的な第一審判決だったため、変わるかという感じで注目された風向きに水をさした感じがします。

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2009年2月23日 (月)

最高裁、日経新聞の従業員持株会で社員が譲渡する場合に額面で持株会が取得する仕組みを有効と判断

最近、このブログで従業員持株会について述べることがありますが、それとは性格の異なる従業員持株会について最高裁で判例が出ました。

すでに取り上げたことがありますが、新聞社は報道機関として公正中立な立場を保つため、特別な法律があります。

日刊新聞紙の発行を目的とする株式会社の株式の譲渡の制限等に関する法律

(株式の譲渡制限等)

第一条  一定の題号を用い時事に関する事項を掲載する日刊新聞紙の発行を目的とする株式会社にあつては、定款をもつて、株式の譲受人を、その株式会社の事業に関係のある者に限ることができる。この場合には、株主が株式会社の事業に関係のない者であることとなつたときは、その株式を株式会社の事業に関係のある者に譲渡しなければならない旨をあわせて定めることができる。

これによって新聞社は株式の譲渡制限を設けることが出来、株主を一定のものに限定することができます。

実際には、従業員が在職中に従業員持株会を通じて株式を保有して、退職するときに指定されたものに譲渡するまたは持株会が取得するなどの扱いがされています。

その制度を有している日経で、元従業員が社外の人に日経の株式を譲渡したために問題となった事件で最高裁判決がありました。

最高裁判所第三小法廷平成21年02月17日判決 平成20(受)1207 株主権確認等,株主名簿名義書換等,株式保有確認等請求事件

結論は上記のような法律がある以上端的に、譲渡は無効ということで落ち着いています。

かなり特殊な世界なのであまり先例としての意味も内容に思えますが、最高裁は興味深いことを述べて手厚く理由を述べています。

「上告人X2は,上記のような本件株式譲渡ルールの内容を認識した上,自由意思により被上告人Y2から額面額で本件株式を買い受け,本件株式譲渡ルールに従う旨の本件合意をしたものであって,被上告会社の従業員等がY1株式を取得することを事実上強制されていたというような事情はうかがわれない。さらに,被上告会社が,多額の利益を計上しながら特段の事情もないのに一切配当を行うことなくこれをすべて会社内部に留保していたというような事情も見当たらない。」

この上記の言及は一般的な社員持株会の当否を考えるときにも重要な観点になる気がします。

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2009年2月14日 (土)

サッポロホールディングス、買収防衛策を一部修正

大株主スティール・パートナーズとの関係がこう着状態になっているサッポロHDですが、このたびすでに導入している買収防衛策について一部修正がなされたことが発表されました。

サッポロHDのリリース

修正されたのは7項目にわたりますが、重要なのは6番目に挙げられている買収者に現金の交付は行わないことという項目でしょう。

ブルドックソース事件以来、対価を交付すれば不公正発行の問題の相当性はクリアできる実例ができたということで、対価を交付する内容の買収防衛策が相次いでいます。

神田先生がこれを非常に問題視されまして、企業価値研究会の報告書にも対価の交付のない買収防衛策について言及されてくるくらいです。

今回のサッポロの手直しはこの考えに沿うものといえるでしょう。

世界中で経済が大混乱にある中ですので当面敵対的買収が再び活性化することはないと思いますが、時期を問わずグリーンメーラーを惹起しかねない制度の導入は阻止されるべきですので、この動きは妥当なのではないでしょうか。

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2008年4月11日 (金)

ダイエー、補欠監査役候補者を公表

会社法329条2項より役員等の補欠者を選任しておくことが可能です。

第329条(選任) 
役員(取締役、会計参与及び監査役をいう。以下この節、第三百七十一条第四項及び第三百九十四条第三項において同じ。)及び会計監査人は、株主総会の決議によって選任する。
2 前項の決議をする場合には、法務省令で定めるところにより、役員が欠けた場合又はこの法律若しくは定款で定めた役員の員数を欠くこととなるときに備えて補欠の役員を選任することができる。

会社法では役員等の法定の定数がいくらかありますが、それらを欠くことになる場合に備えて選任しておくものですが、実際の活用の実例があったので取り上げておきます。

ダイエーのプレスリリース

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2008年4月 3日 (木)

私的録音録画補償金制度、縮小へ

以前から何度も取り上げている私的録音録画補償金制度ですが、文化庁が縮小の方向になったと報道がなされました。

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ネット配信の音楽や映像、私的複製の課金見直し・文化庁(日本経済新聞2008年4月3日)

文化庁は2009年度にも、音楽や映像などの私的デジタルコピーに課金する制度を抜本的に見直す方針を固めた。著作権料を録音機器などの価格に上乗せする「私的録音録画補償金制度」を縮小。インターネット配信の著作物については、利用者が複製回数に応じて個別に料金を支払う方法に改める。

(略)
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私的録音録画補償金制度について取り上げた以前のエントリーの一部

私的録音録画補償金制度見直し、結論を先送りへ

デジタル放送のコピーワンス緩和で、権利者団体が私的録音録画補償金の対象化を求め家電メーカーと対立

私的録音録画補償金制度の概要については上記リンク先のエントリーをご覧ください。

権利者団体からはまだ拡充を求められているところなので、果たしてこのまま実現できるのかはよく分からないのですが、代行納付をするメーカー側の抵抗で制度対象が拡大できず、補償金全体は減少しつつあります。
よって身動きが取れない状態から脱却するのもある意味合理的な動きかもしれません。

ひとまず、複製するかどうかも分からないのに一律に課金されているあやしげな制度は縮小されることになるようです。

しかし、上記報道内容だと、媒体や機械を使わない場合でも課金することで制度の移行を図るように読めますが、何に課金するのでしょうか。
ダウンロード販売ならすでに権利処理の分の対価を払っているはずですので、購入者の望む複製回数に応じて値上げという感じになるのでしょうか。

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2008年3月29日 (土)

サッポロ定時株主総会で買収防衛策継続が決議される

スティール・パートナーズによる買収提案が修正され協議に入ることになったところのサッポロ・ホールディングスですが、28日に開催された定時株主総会で買収防衛策を継続が議決権の65%の多数で決議されました。

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サッポロHD、買収防衛策継続を株主総会で可決(日本経済新聞2008年3月29日)

サッポロホールディングスが28日午前に都内で開いた定時株主総会で、会社側が提案していた買収防衛策の継続に関する議案が賛成多数で可決された。同議案を巡っては発行済み株式数の約18%を保有する筆頭株主で、株式の買い増しを求めている米投資ファンドのスティール・パートナーズが反対していた。
(略)
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サッポロ・ホールディングスのリリース

上記引用では載っていませんが、本紙面の記事では65%ということで、3分の2を下回ったことが指摘されました。
しかし、現時点における先例であるブルドック事件の事案としての特殊性から考えると、具体的な発動を取締役会に委ねる形の買収防衛策を決議することには、どれだけの多数であっても微妙な意味しかないのではないでしょうか。

ブルドック事件後の買収防衛策実務はまだまだ暗中模索のような感じで進行している感じがします。

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