民事法事情

民法など、企業法務に密に関連する法律以外の私法関係の記事です。

2009年10月29日 (木)

大阪高裁、マンション賃貸借の更新料を有効と判断

最近、判例が相次いでいる熱い分野である建物賃貸借の更新料の有効性の論点ですが、先日更新料を無効とする判断をした大阪高裁において、今度は有効とする判断が出されました。

無効とする判断が相次いでおり、流れができつつありましたが、流れを食い止める方向に作用する一石が投じられました。

賃貸マンション:更新料は「適法」 大阪高裁、異なる判断(毎日新聞2009年10月29日)

滋賀県野洲市の賃貸マンションを約6年半借りた男性会社員(33)=大阪市=が入居継続時に支払う更新料計26万円の返還を貸主に求めた訴訟の控訴審判決が29日、大阪高裁であった。三浦潤裁判長は「更新料は借り主にとって一方的に不利益とはいえず、消費者契約法に違反しない」と述べ、更新料を適法とする判断を示した。(略)

更新料について、1審判決は「賃料の一部前払いとしての性質がある」として適法と認定。これに対し、三浦裁判長は「賃貸借期間が長くなった際に支払われるべき対価の追加分ないし補充分」との判断を示し、「貸主にとって必要な収益で、更新料がなければ賃料が高くなっていた可能性がある」と指摘した。

(略)

まだ判決全文を確認できていませんが、上記報道からは追加の対価という認定をされた模様です。

これまで更新料を無効とした判決では、貸主側の主張で色々な対価であるとされていましたが、どれも否定されていました。

詳しくは以下のエントリーをご覧ください。

賃貸借の更新料を無効とした京都地裁判決全文が公開される(2009.08.17)

更新料を無効とした大阪高裁判決の検討(2009.09.03)

これらの裁判例で対価性を否定したのもどれも微妙な判断であるのは確かなので、評価がひっくり返ったとしてもおかしくはないのですが、どう判示しているのかについて確認したいと思います。

上記報道からははっきりしませんが、この賃貸借の特有の事実によって判断が変わったということも考えられないわけではないですが、一般的には定型的なフォームで行われていると思われますので、法的評価が一変したのではないかと思われます。

この判決に対しては借主側が上告するとのことですので、最高裁の判断が待たれます。

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2009年10月 7日 (水)

最高裁、貸金業者が借主の期限の利益喪失を主張することが信義則上許されない場合について二件の事例判断

何だかわからないタイトルで申し訳ありません。

サラ金の過払金請求で、請求を受けた貸金業者が、実は借主はすでに期限の利益を喪失しており、通常の分割弁済のつもりで返還してきたのは元本と遅延損害金であり、過払金は生じていない(または請求額よりも少ない)と主張した事案がいくつか出てきています。

この貸金業者の主張に対して、借主は期限の利益喪失とされる後でも、貸金業者の態度がはっきりしなかったので、通常の弁済であると信じていたのに、過払い金請求の段階になって言い出すのは信義則に反すると抗弁しています。

このような論点にかかわった事件で微妙に事実関係が異なる二件について最高裁は同日に判決を出して、結論をまったく逆にしました。

比較するとわかりやすいように思えますので、まとめて取り上げます。

最高裁判所第二小法廷平成21年09月11日判決 平成19(受)1128 貸金等請求本訴,不当利得返還請求反訴事件

最高裁判所第二小法廷平成21年09月11日判決 平成21(受)138 不当利得返還請求事件

便宜上、以下では上の方を第1事件、下の方を第2事件と呼びます。

第1事件では、期限の利益を喪失してからも貸金業者は特段の通告をせず、一括の弁済を求めることもなく、分割の弁済を受け続けたのですが、領収書兼利用明細書には、遅延損害金と元本に充当することがかかれており、期限の利益を喪失していることが実はわかるようになっていたという事実がありました。また、期限の利益を喪失しているにもかかわらず新たな貸付をしているという事実もありました。

しかし、最高裁は、一括弁済を求めるか、元本と遅延損害金の一部弁済を受領するかは貸主の自由であるとして、期限の利益喪失の主張をしないと思わせるような行為をしたとはいえないとしました。

追加の貸付についても、貸すかどうかは、同じく貸主の自由であるとして、従前の態度に反する行動とはいえないとしました。

以上を指摘して、期限の利益喪失を主張することが信義則に反して許されないとまではいえないとしました。

これに対して第2事件では、期限の利益喪失後の貸金業者の行動が異なります。

第2事件では、利息29.8%に対して遅延損害金36.5%と大きな違いがあるのですが、期限の利益喪失後でも毎月15日までに支払えば、遅延損害金が29.8%になるという約定があり、期限の利益を喪失していることがそもそも気づきにくくなっており、加えて期限の利益を喪失していた状況下における借主からの弁済額の問い合わせに対して、29.8%に依拠して計算した金額を答えたりしていました。

また、領収書兼利用明細書には、元本と利息に充当すると明記されており、遅延損害金も含まれていることがかかれていませんでした。

以上のような事実関係があり、期限の利益を喪失することはないと誤信しても無理からぬものがあるとして、貸金業者の主張を信義則で遮断しました。

本件は貸金業者が期限の利益喪失を主張できるのかについての重要な判断基準を提示する事例判断であると思います。

過払金請求は、社会問題にもなっている模様ですが、一方で不当利得法などの分野で、色々な判例を生み出しており、極めて深度化が進んできていることが改めてわかる一件です。

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2009年10月 6日 (火)

最高裁、事後的に過払金が生じたことだけをもって直ちに不法行為を構成するということはできないと判示

今年の9月の前半にはサラ金の過払金関係の最高裁判例が連続して出されたのですが、どれも理由をあまり述べずに短いものばかりです。

今回取り上げるのは、過払金を受け取ったことが不法行為になるかという点についてのものです。

判例により、みなし弁済の適用が認められず、過払金が生じていたことになると、不当利得になりますが、みなし弁済の適用があると認識してその認識を有するにいたったことにやむをえないといえる特段の事情がない限り、民法704条の悪意の受益者と推定され、利息をつけて過払金を返還しないといけなくなります。

第704条(悪意の受益者の返還義務等)

悪意の受益者は、その受けた利益に利息を付して返還しなければならない。この場合において、なお損害があるときは、その賠償の責任を負う。

これだけで過払金問題の財産的解決には十分に思えますが、不当利得返還請求権には消滅時効がありますので、10年で消滅してしまいます。そこでかなり昔の過払金は不当利得構成では消滅してしまいます。

そこで過払金の受領を不法行為と構成してまだ時効が来ていないと主張して返還を請求した事件で最高裁判決が出ました。

最高裁判所第二小法廷平成21年09月04日判決 平成21(受)47 不当利得返還請求事件

最高裁は、結果的に多額の過払金が生じても、そのことのみをもって不法行為を構成するということはできないとしました。

不法行為を構成するのは、特段の事情がある場合としており、以下のように言及しています。

不法行為を構成するのは,上記請求ないし受領が暴行,脅迫等を伴うものであったり,貸金業者が当該貸金債権が事実的,法律的根拠を欠くものであることを知りながら,又は通常の貸金業者であれば容易にそのことを知り得たのに,あえてその請求をしたりしたなど,その行為の態様が社会通念に照らして著しく相当性を欠く場合に限られるものと解される。この理は,当該貸金業者が過払金の受領につき,民法704条所定の悪意の受益者であると推定される場合において
も異なるところはない。

みなし弁済の要件を満たさないことは後からひっくり返されてしまった感じが強く、悪意の受益者ということも無理があるくらいですので、不法行為だったと評価するのはもっと難しい感じがします。よってこの判決のように判断するのももっともだと考えられます。

ここのところ、過払金返還請求を制限する判例が相次いでいますが、ゆれ戻しというよりは、当然の限界を確認しているに過ぎないと思われます。

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2009年9月29日 (火)

最高裁、過払金充当合意がある金銭消費貸借の場合でも、貸金業者は過払金発生時から悪意の受益者となると判示

貸金業者が過払金の返還する際に、利息を付する必要がでてくる民法704条の「悪意の受益者」にいつからなるかについては、最判平成19年7月13日民集61巻5号1980頁が、貸金業者がみなし弁済の適用があると認識しており、かつ、そう認識を有するに至ったことについてやむをえないといえる特段の事情があるときでない限り、悪意の受益者と推定されるとしています。

この過払金が生じたらその時点から原則悪意の受益者と推定されてその時点から利息を付さないといけないことは、金銭消費貸借の基本契約中に過払金を後の金銭消費貸借に充当するというような過払金充当合意がある場合でも異ならないとする判決が出ました。

最高裁判所第二小法廷平成21年09月04日判決 平成21(受)1192 不当利得返還請求事件

この判例は理由を述べていないのですが、単純に考えると、充当するにしても利息が生じなくなるというものではないでしょう。むしろ債権が生じているわけですから、充当するにしても利息が付いた過払金を充当するのが正当と思われます。

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2009年9月28日 (月)

セブンイレブンオーナーの一部が値引き制限で損害をこうむったとして本部を提訴

弁当の値引き制限で損害をこうむったとしてオーナーが本部を訴える訴訟がまた提起されました。

セブンイレブンを加盟店が提訴へ 値引き制限で損失(日本経済新聞2009年9月27日)

(略)加盟店経営者7人が29日に、本来得られた利益が減ったとし、同社に計約2億3千万円の損害賠償を求め東京高裁に提訴することが分かった。

原告側の経営者によると、訴えるのは北海道と千葉、大阪、兵庫、岡山各府県の経営者。値引き販売で消費期限切れによる廃棄が約8割減らせたとして損害額を算出、1人当たり約1400万~5200万円を求める。

(略)

把握している限りでは、値引き制限を理由とする損害賠償請求は二件目だと思われます。

先の提訴については以下の従前のエントリーをどうぞ。

セブンイレブンのオーナー、値引き販売制限で損害を被ったとしてセブンイレブンジャパンを提訴

先の提訴では一部請求だったのですが、この事件ではその点は不明です。

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2009年9月25日 (金)

京都地裁で再びマンション賃貸借の更新料を消費者契約法に反して無効とする判断

賃貸借の更新料を消費者契約法に照らして無効とする判断が再び京都地裁でしめされました。

賃貸「更新料」は無効、家主に返還命令…京都地裁(読売新聞2009年9月25日)

賃貸住宅の契約更新の際に支払いが求められる「更新料」を巡り、京都市内のマンションを借りていた熊本県と東京都の女性2人が、それぞれ家主側に支払い済み更新料(22万8000円と11万6000円)の返還などを求めた2件の訴訟の判決が25日、京都地裁であった。

滝華聡之裁判長は「更新料を定めた契約条項は、消費者の利益を一方的に害しており、消費者契約法に反して無効」として、双方の家主側に全額の支払いを命じた。家主側は控訴する方針。

(略)

まだ全文を確認していませんが、判断はこれまでの裁判例と同趣旨であるとの報道もあります。

京都から更新料無効の波が起きていますが、これが完全に確たるものになるかは最高裁の判断が注目されます。先日の大阪高裁判決が上告されたと聞いたのですが、もしそうならきわめて意義の大きなものになります。

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2009年9月 5日 (土)

ヤマト運輸の関連会社で就労していた自閉症の男性が自殺した事件で和解が成立

使用者には労働者に対して安全配慮義務があり、労働契約に起因して労働者に何か起きた場合、会社側が責任を負うことがあります。

もっともこれは債務不履行、不法行為といった民法上の責任として構成されるために、予見可能性などの要件が満たされないと、使用者に帰責することはできないことになります。

そこで、事例ごとにそれぞれの特性に左右された事例判断が多く積み重ねられているわけです。

そのような中で、知的障害を伴う自閉症の男性が自殺をしたという事例で職場の配慮不足が原因として使用者を相手取って損害賠償請求をしていた事件で控訴審で和解が成立しました。

従業員自殺巡る賠償請求で和解 ヤマト運輸系が見舞金(日本経済新聞2009年9月3日)

ヤマト運輸の関連会社(東京)に勤めていた知的障害を伴う自閉症の男性(当時46)が自殺したのは、上司の厳しい言葉など職場の配慮不足が原因として、母親がこの会社に6500万円の損害賠償を求めた訴訟は3日、東京高裁(大橋寛明裁判長)で和解が成立した。

和解条項には、会社側が見舞金として500万円を支払うほか、障害者を支援する人材を職場に配置したり、障害に関する社員教育を実施したりすることが盛り込まれた。和解後に記者会見した母親は「和解ができて肩の荷が下りた。今後の障害者の職場のあり方につなげてほしい」と話していた。

(略)

第一審は請求を棄却していたのですが、控訴審で見舞金という形で支払いを受けることになりました。

和解で終わったために、知的障害を持つ労働者を雇用した場合に使用者が負う安全配慮義務の具体的内容が判示されることがなくなってしまいました。

しかし、電通事件に照らして考えても、労働者の精神衛生に配慮する義務はあるでしょうから、障害に起因する者に対しても、しかるべき配慮義務を肯定できると思われます。

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2009年9月 3日 (木)

更新料を無効とした大阪高裁判決の検討

高裁レベルではじめて、賃貸借の更新料を無効と判断した大阪高裁平成21年8月27日判決の簡単な検討をしてみようと思います。

再掲になりますが、判決全文は京都敷金・保証金弁護団のウェブサイトで公開されておりますので、ご覧ください。

先日取り上げた京都地裁判決を前提として違いに注意してみていこうと思います。

Ⅰ 消費者契約法施行前の場合、公序良俗違反になるか

まず、この大阪高裁の案件はかなり長期の賃貸借であったため、消費者契約法の施行前からのものになります。これは京都地裁の事件では問題とならなかった点で、施行前に締結した賃貸借契約に基づく更新料に関しては、控訴人(原告)は民法90条違反を主張して不当利得であると主張していました。しかし、大阪高裁はそこまではいえないとして、否定しています。

Ⅱ 更新料の法的性質

この後は、検討の順番はやや異なるものの、枠組みは京都地裁判決と同じです。

以下では、更新料の法的性質の問題点に関する判示を見てみます。京都地裁判決と同じく、賃貸人が主張した正当化の理由ごとに検討しています。

1、更新拒絶権放棄の対価

大阪高裁判決でも、京都地裁判決でも言及された業として賃貸借を行う賃貸人には正当事由が具備されることはまずない以上、更新が強制されるので、更新拒絶権放棄の対価と考えることは困難だという理由を述べていますが、それに加えて契約条項にも注目して、いっそう補強しています。

それは賃貸人から更新拒絶の申し出期間が6ヶ月前までになっていることに注目して、賃貸借の期間が1年であることから、更新拒絶を申し出ることができるのは6ヶ月間しかなく、しかも正当事由が具備されることはまずないので現実化すると考えられないのにその対価として10万円を要するのは高すぎるとしています。

さらに契約文言に更新料をもって更新拒絶権放棄を結びつけるところがないことも指摘しています。

2、賃借権強化の性質

京都地裁判決では、正当事由が認められることはまずないので権利に変化がないとしていたのですが、大阪高裁はここのところでやや異なった判示をしています。

それは、正当事由が認められずに法定更新になってしまうと、借地借家法26条1項から期間の定めのない賃貸借になってしまうため、賃貸人がいつでも解約を申し出ることができるようになるが、それに比べると更新料を払うことで更新されて、期間の定めのある賃貸借になることは強化といえると判断しています。

しかし、そもそもの契約期間が1年間しかないので、借地借家法で認められる最短期間なので、更新料を払ってもこれになるだけでは権利が強化される程度はほとんど無視できるとして、賃借権強化の性質を否定しました。

3、賃料の補充の性質

この点については、当然に10万円全額を支払うことになっている点、中途で終了した場合に清算する規定がないことから後払いされる賃料の性質を持たないことは明白としています。

この後に、更新料を不払いをしても法定更新の要件を満たしているなら、債務不履行解除を認めるべき余地はないといって差し支えないとしています。

この点についてはやや引っかかるものがあったのですが、上記のように性質がよくわからないものであるから、債務不履行にはならないということなのでしょう。

そして最後に、更新料に関する慣習法、事実足る慣習は認められないとしています。

以上から対価性の乏しい給付であるとして、この後に続けて、消費者契約法10条に該当するとして無効としています。

最後には賃料を安く見せかけて誘引する効果があるとか、借地借家法の強行規定から目をそらせているなどと指摘しています。

全般的に、京都地裁判決よりも、より堅実な構成になっており、より説得力が増している感じを受けます。

ただ、慣習に関しては、やや引っかかるものがあるように思われます(もっとも更新料が広く授受されているとしてもなお無効とすることは可能です)。

賃貸人は上告する意向を示しているので最高裁の判断が注目されます。

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2009年8月31日 (月)

建物賃貸借の更新料を無効と判断した大阪高裁判決全文が弁護団のウェブサイトで公開される

先日お伝えした更新料を無効とした大阪高裁判決ですが、代理人の京都敷金・保証金弁護団のウェブサイトで全文が公開されています。直接リンクするのは悪いかと思いましたのでトップへのリンクを載せておきます。すぐ下に全文へのリンクがあります。

京都敷金・保証金弁護団

まだ、詳細を見ていないので検討は後日に改めてさせていただきます。

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2009年8月28日 (金)

大阪高裁、建物賃貸借の更新料を無効とする初判断 賃貸人は上告へ

京都地裁、賃貸住宅の更新料を消費者契約法違反で無効と判示 賃貸借の更新料を無効とした京都地裁判決全文が公開されるの件とは別件の事件ですが、同じ賃貸借の更新料の論点について無効とする高裁判決がでました。

大阪高裁は、27日にマンション賃貸借の事例で更新料を有効とした一審判決を破棄して、更新料は無効とする判断を示しました。高裁レベルでは初の判断となります。

まだ判決文は公開されていませんが、日経本紙面の記事によると、上記リンク先の京都地裁平成21年7月23日判決と同様の判示をしめしているとうです。

借地借家法によると、正当事由がないと賃貸借の更新を拒絶できないことから原則更新のはずなのに、更新に対価を要求するのは利益を一方的に害する契約といえるとしているという下りがあるようですので、京都地裁判決と同じ理由付けで消費者契約法10条に反して無効とした模様です。

また賃貸人側からの賃料の補充であるなどの反論も京都地裁判決と同様に退けているようです。

これだとやや論理が飛んでいることになりますが、特に重要な判示の部分だけ記事で注目したためで、実際には先日の京都地裁判決と同様の検討をしていると思われます。

そこまで検討すると細部の判断には違いがあるかもしれません。

賃貸人は上告するとしており、更新料が消費者契約法10条に反するかという論点について最高裁の判断が示されることになりそうです。

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2009年8月25日 (火)

セブンイレブンのフランチャイズ加盟店主が24時間営業と公共料金等の収納代行業務を強要するのは優越的地位濫用であるとして本部を提訴

セブンイレブンのオーナー店主のうち10名が、24時間営業と公共料金の収納代行を強要されており、これは優越的地位濫用に当たるとして、本部に対して訴訟を提起したことが明らかになりました。

どういう訴訟を提起したのがまず気になるところですが、報道で伝えられる限りでは、差止を求めているようですので、独禁法24条の差止請求をしている模様です。

第24条〔差止請求〕

第八条第一項第五号又は第十九条の規定に違反する行為によつてその利益を侵害され、又は侵害されるおそれがある者は、これにより著しい損害を生じ、又は生ずるおそれがあるときは、その利益を侵害する事業者若しくは事業者団体又は侵害するおそれがある事業者若しくは事業者団体に対し、その侵害の停止又は予防を請求することができる。

24条は、不公正な取引方法に相当する場合に当事者が差止を求められるというものです。

優越的地位濫用は一般指定14項にあがっているので、24条で差止を求めることができるわけです。

24条の趣旨は、公取委が取り上げないものでも私人による法の実現を期待するというところにあります。事実、本件で問題となっている24時間営業と公共料金の収納代行が義務付けられることについて公取委は独禁法の判断をしていません。したがって、一から店主が24時間営業等について優越的地位濫用であることを立証しないといけません。

さて、24時間営業を強要されたといわれると、強烈な感じがしますが、契約の内容について個々にこのような主張を受けると、いいとこ取りをされてしまいますし、統一的なサービスの提供がブランド価値の一部であるコンビニエンスストアの特性を害するように思えます。

交渉の余地がないというと押し付けということで優越的地位濫用になりそうですが、パッケージで売りつけるのがフランチャイズですから、そもそも違うということは本来はないはずということになります。

果たして優越的地位濫用に該当するかについてはもっと細かく検討しないといけませんが、難しい感じがします。

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2009年8月18日 (火)

最高裁、弁護士が債権回収の手段として係争物の債権の譲受をする行為は弁護士法28条違反であっても公序良俗に反しない限り私法上の効力は否定されないと判示

弁護士法28条に係争物の譲受の禁止の規定があります。

第28条(係争権利の譲受の禁止)

弁護士は、係争権利を譲り受けることができない。

よって弁護士は係争物を依頼人から譲り受けることはできません。弱みにつけ込むようなことになりかねないからですが、これに反することを正面からやってしまった事案があり、問題となりました。

最高裁判所第一小法廷平成21年08月12日決定 平成20(許)49 債権仮差押命令保全異議申立てについての決定に対する保全抗告棄却決定に対する許可抗告事件

この件は原告が日本国内に支店営業所がない外国法人であるために債権回収に難があることから弁護士が便宜のために債権譲渡を受けてしまったというものです。

そこで、弁護士法28条との関係でその譲渡の有効性が問題となり、訴訟要件を欠くのではないかという問題になってしまいました。

原審は、弁護士法28条に反する場合には債権譲渡の私法上の効力は否定されるという見解を示したのですが、最高裁はこれを否定して弁護士法違反と私法上の効力は別だとしました。

債権の管理又は回収の委託を受けた弁護士が,その手段として本案訴訟の提起や保全命令の申立てをするために当該債権を譲り受ける行為は,他人間の法的紛争に介入し,司法機関を利用して不当な利益を追求することを目的として行われたなど,公序良俗に反するような事情があれば格別,仮にこれが弁護士法28条に違反するものであったとしても,直ちにその私法上の効力が否定されるものではない

私法上の効力を否定するというのはよほどのことなのでこの判示が最高裁から出てくるのは当然でしょう。

なお宮川裁判官の補足意見がついており、弁護士法28条に違反しないとしても弁護士職務基本規程17条に同種の規定があることから係争物の譲受をすることは「品位を失うべき非行」に該当するとしています。すると懲戒処分を受けかねないということになりますので、絶対に行ってはいけないという厳しい規律を弁護士に課すことになりましょう。

(係争目的物の譲受け)

第十七条 弁護士は、係争の目的物を譲り受けてはならない。

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2009年8月17日 (月)

賃貸借の更新料を無効とした京都地裁判決全文が公開される

京都地裁、賃貸住宅の更新料を消費者契約法違反で無効と判示(2009.07.24)の続報です。

最高裁のウェブサイトで京都地裁判決の全文が公開されましたので検討してみたいと思います。

京都地判平成21年07月23日 平成20(ワ)3224 敷金返還請求事件

この件で問題となっているのは敷引特約と更新料の二点で、消費者契約法10条に照らして無効と判断して原告の請求を全部認容しています。

このエントリーでは更新料のところだけ検討します。

消費者契約法10条の条文は以下のようなものです。

消費者契約法

第10条(消費者の利益を一方的に害する条項の無効)

民法、商法(明治三十二年法律第四十八号)その他の法律の公の秩序に関しない規定の適用による場合に比し、消費者の権利を制限し、又は消費者の義務を加重する消費者契約の条項であって、民法第一条第二項に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するものは、無効とする。

10条の要件を検討する前に、まず本件が消費者契約法の適用を受けるかの確認を怠ってはいけません。

消費者契約法は消費者契約に関する規定をおいている法律で、事業者と消費者との間の契約が消費者契約と定義されています(2条3号)。

事業者とは法人すべてと事業をする個人のことです(2条2号)。消費者とは個人のことです(2条1号)。

本件の貸主は法人なのか個人なのかは定かではないのですが、物件がマンションですので個人であったとしても事業であることは明らかでしょう。京都地裁も弁論の前趣旨から簡単に認定しています。

そこで10条の要件ですが、上記の規定から分かるように、「民法、商法(明治三十二年法律第四十八号)その他の法律の公の秩序に関しない規定の適用による場合に比し、消費者の権利を制限し、又は消費者の義務を加重する消費者契約の条項であるか」と「民法第一条第二項に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するものか」の二点になります。

1、民法、商法(明治三十二年法律第四十八号)その他の法律の公の秩序に関しない規定の適用による場合に比し、消費者の権利を制限し、又は消費者の義務を加重する消費者契約の条項であるか

京都地裁は賃借人が賃料以外の支払を負担することは賃貸借契約の本質的内容ではないとしています。

その上で、更新料が賃料2か月分であるのに、賃料補充的な性格が乏しいこと、賃料補充の性格を認めるにしても支払時期が早いことから義務を加重するものであるとしています。

また、更新料が慣習化していると認める証拠はないとも付け足しています。

ここの部分についての判示は、民法所定の原則的な賃貸借に依拠している点が多分にあるように思われます。賃貸借契約で賃借人が支払わないといけないのは賃料だけだというのも敷金等は民法には規定がないことに根拠を有しているように思われますし、支払時期が早いので義務の加重になるという点も、民法の原則では賃貸借は賃料後払い(614条)であることを考慮しています。

しかし、敷金などは根拠はなくても広く行われていることですし、賃料後払いは任意規定で現実には賃料は前払いにしている契約がたくさんです。よってこれらの判断にはやや厳しいものがあるかもしれません。

また、事実認定を離れて、「慣習となっていない」という下りを法的に考えると、慣習になっているなら他と違いがないから加重しているとはいえないことになるという判断から、あえて言及したのだと思われます。しかし、民法91条に照らして考えると、慣習化していても、理由がないならなお公序良俗と判断するべきこともあるのではないかと思われますので、この点の考え方も気になります。下手をすると、更新料が日本中で行われているという証拠が出てきかねません。それよりも下記で検討する理由のない負担は無効だと端的に考えられるように解釈する方がよいのではないかと思われます。

2、民法第一条第二項に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するものか

一方的に害するかについては、京都地裁は規範を立てています。

消費者と事業者との間に情報の質及び量並びに交渉力の格差があること(法1条)にかんがみ,当事者の属性や契約条項の内容,そして,契約条項が具体的かつ明確に説明され,消費者がその条項を理解できるものであったか等種々の事情を総合考慮して判断すべきである。

概ね、消費者契約法の逐条解説もこれと同趣旨であり、通説的な解釈であるといえます。

一般的に、契約締結に至る交渉の経緯などを細かく検討することが指摘されているのですが、本件では、更新料がそもそも法的性質がよく分からないものであるという特殊事情があるために、被告主張の更新料の法的性質も検討して合理性があるかも検討しています。よって被告の主張する更新料の性格が妥当であるかを一方的に害するものかの要件で検討しています。

契約締結に至る過程に関する検討では、更新料まで考慮して契約を締結することは困難であることと、法定更新なら必要がないのに合意して契約を延長すると負担しないといけなくなるものである点を指摘して、「大きな負担」であるとしています。これは一方的に害するにつながる事情であるといえます。

また、被告は更新料の正当化のために、

  1. 更新拒絶権放棄の対価である
  2. 賃借権強化の対価である
  3. 賃料の補充である
  4. 中途解約権の対価である

という主張をしていました。

これに対しては、それぞれ

  1. 事業で賃貸借をしている以上、正当事由があり更新拒絶が認められるということはまずないので、放棄する更新拒絶権がそもそもない。
  2. 更新拒絶が認められることはまずないので、賃借人側からみて権利的に変化はない
  3. 使用期間に関係なく課されるので対価性がなく賃料と評価できない
  4. 本件契約では中途解約権は賃貸人にもあるがこちらには対価が予定されていないので、賃借人に側についてだけ対価を求めるのは合理性はない

という判断をして、更新料の性格に関する被告の主張を否定しました。

よって更新料の趣旨は不明瞭としました。

そこで京都地裁は、規範を再度敷衍して、(そのような不明瞭な性質であることを)賃借人にきちんと説明して合意したしたのでないと、「一方的に害する」に該当するとしました。

しかし、被告は自ら主張している上記4点の性質すら説明していないとして、上記基準を満たす合意はないとしました。

以上から、10条の要件を満たしており、無効と判断したわけです。

本件判決はかなり一般的な判示をしていることがわかり、影響は極めて大きいことが分かります。

上記検討からも明らかになるように、更新料の法的性格をどう考えるかがポイントとなり、合理性を肯定するか否かで判断が分かれることになりそうです。本件判決の合理性を否定する判断にはそれなりに説得力がありますが、違う判断も可能でしょう。

上級審の判断が注目されます。

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2009年8月15日 (土)

セブンイレブンのオーナー、値引き販売制限で損害を被ったとしてセブンイレブンジャパンを提訴

セブンイレブンのフランチャイジーであるセブン―イレブン福島塙店のオーナーが、これまで値引き販売が禁止されてきたことを不法行為と主張して、セブンイレブンの本部であるフランチャイザーを提訴しました。

見切り販売制限、セブン―イレブンオーナー提訴(読売新聞2009年8月15日)

コンビニエンスストア最大手「セブン―イレブン・ジャパン」(東京)が加盟店による売れ残り食品の「見切り販売」を制限していたことを巡り、「セブン―イレブン福島塙店」(福島県塙町)のオーナー鈴木一秀さん(59)が13日、同社に3000万円の損害賠償を求める訴訟を東京地裁に起こした。

(略)

訴状では、「(見切り販売を)妨害したのは組織的・継続的な不法行為」と主張。1985年からの損害の一部として3000万円の賠償を求めた。(略)

公取委が排除措置命令を出した件との連続で理解できる動きですが、独禁法上違法になりそうだからといって、民法に依拠した請求で損害賠償が認められるかは別問題でしょう。

原告側に損害額の立証が必要ですが、原告としては廃棄ロスの代わりに少しでも入ってきたはずだという計算をするのでしょう。

しかし本部側としては、コンビニでは発注はオーナーが店舗の状況にかんがみて自分でするものですので、発注がうまくないから廃棄になったということは損害軽減義務に違反するということで抗弁になりそうです。

また、値引きをすると、購入を手控える見合いが生じてしまいますから、それも控除の対象となりそうです。

これらコンビニ事業の特徴に依拠しての反論の主張立証責任はセブンイレブン側が負うことになりそうですが、請求がそのまま認められることは中々難しいということはいえそうです。一部請求にとどめているのはその辺の考慮もあるのでしょう。

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2009年7月24日 (金)

京都地裁、賃貸住宅の更新料を消費者契約法違反で無効と判示

建物賃貸借の契約更新において授受される更新料という名前の金銭があります。どういう意味の金銭なのかよく分からないために法的性質について色々と議論があるところなのですが、近時、無効であるとして賃貸人を提訴する事例が相次いでいます。

このたび、更新料を無効とする判決がはじめて京都地裁で23日に出ました。

賃貸更新料は無効 家主に返還命令…京都地裁が初判断(読売新聞2009年7月24日)

賃貸マンションの契約更新の際に「更新料」の支払いを求める契約条項は、消費者契約法に反するとして、京都府長岡京市の20歳代の男性会社員が、支払い済みの更新料など46万6000円の返還を家主に求めた訴訟の判決が23日、京都地裁であった。辻本利雄裁判長は「入居者の利益を一方的に害する契約条項」と認定、同法に基づいて、更新料の契約条項を無効とする初の判断を示し、家主に請求全額の支払いを命じた。

(略)

判決によると、男性は2006年4月、京都市下京区のマンションに、賃料月5万8000円、2年ごとの契約更新時に賃料2か月分の更新料を支払う、との契約で入居。08年の更新時に11万6000円を支払ったが、同5月末に退去した。

裁判で家主側は「更新料には賃料の補充的要素がある」などと主張したが、辻本裁判長は「更新後の入居期間にかかわりなく支払わなければならず、賃借人の使用収益の対価である賃料の一部とは評価できない」と指摘。そのうえで、「家主が主張する更新料の性質に合理的理由は認められず、男性に具体的かつ明確な説明もしていない」などとし、契約条項は無効と判断した。

男性は入居時に払った保証金(敷金)35万円の返還も求めており、判決は保証金も消費者契約法に照らして無効とし、請求を認めた。

(略)

さて、結論を導く構成ですが、消費者契約法10条です。

第10条(消費者の利益を一方的に害する条項の無効)

民法、商法(明治三十二年法律第四十八号)その他の法律の公の秩序に関しない規定の適用による場合に比し、消費者の権利を制限し、又は消費者の義務を加重する消費者契約の条項であって、民法第一条第二項に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するものは、無効とする。

10条の対象となる契約条項には、契約の主要目的に関する条項や物品・権利・役務の対価に関する条項は除外されると解されています。それは取引の結果であり介入は控えるものの、一方で無関係なものが付着する場合を無効とする趣旨ということです。東京地裁判決の全文はまだ見ていないのですが、上記の報道によると賃料の一部であるか否かが問題となっているのだと思われます。

よって問題は更新料なるものの法的性質如何で決まることになります。ここの賃貸借によって事実が異なる可能性もありますが、賃貸借契約での金銭の授受項目は定型的に行われているものなのでそのまま他の場合にも妥当する考え方もできます。よってこの訴訟の今後や同種訴訟の判断が注目されるところとなりましょう。

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2009年7月23日 (木)

最高裁、契約解除に伴う原状回復義務が信義則上、同時履行の関係にたたない場合について判示

契約を解除した効果として、既履行の分については原状回復義務が生じますが、その原状回復義務は民法546条から同時履行の関係に立ちます。

第533条(同時履行の抗弁)

双務契約の当事者の一方は、相手方がその債務の履行を提供するまでは、自己の債務の履行を拒むことができる。ただし、相手方の債務が弁済期にないときは、この限りでない。

第545条(解除の効果)

当事者の一方がその解除権を行使したときは、各当事者は、その相手方を原状に復させる義務を負う。ただし、第三者の権利を害することはできない。

2 前項本文の場合において、金銭を返還するときは、その受領の時から利息を付さなければならない。

3 解除権の行使は、損害賠償の請求を妨げない。

第546条(契約の解除と同時履行)

第五百三十三条の規定は、前条の場合について準用する。

これが大原則ですが、このたび判例で例外的に信義則の観点から原状回復義務が同時履行の関係に立たず、解除した原告に対して被告が引き換え給付判決を求めることは許されないと判示した事件がありました。

最高裁判所第二小法廷平成21年07月17日判決 平成19(受)315 自動車代金等請求事件

事案としては、中古車の売買契約の解除です。

車種はシボレーなのですが、実は車台が二台の車の分が接合されたもので、事故車でよくやられるような細工によってできているのに、それが隠されていたという事案です。

買主は錯誤を理由として解除して売買代金の返還を求めて提訴したのですが、これに対して被告は、同時履行の抗弁権を行使、当該車の返還と車の移転登録を主張しました。

原因は同時履行の抗弁を容れて、引き換え給付判決を出したのですが、最高裁は、移転登録まで引き換え給付を認めたのは認められないとしました。

その理由は、既登録の複数の車を接合しているため、実は複数の登録番号を保有しているのに、それを売買に伴って一台分だけ登録している状況であるために登録を移転することが困難であるということを指摘しています。まず複数登録を解消しないといけないために仮にできるとしても困難であると言及しています。

よって、困難なこととの同時履行を求めることは公平を欠くとして、同時履行の抗弁権を主張して引き換え給付を求めることは信義則上許されないとしました。

かなり事案の特殊性が作用しているものであり、むしろこのような極端な場合でない限り、原状回復は同時履行にたつということが確認できるように思えます。

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2009年7月20日 (月)

最高裁、期限の利益喪失特約のもとで利息制限法所定の制限を越える利息の支払の任意性を否定した平成18年判決以前に当該制限超過分を受領したことのみをもって悪意の受益者と推定することはできないと判断

訳のわからないタイトルですいません。

サラ金関係訴訟にさらに新しい1件が加わりました。

サラ金関係訴訟というと一連の流れのように思えますが、民法の分野としては債権総論と債権各論にまたがる部分であり、整理するのは中々難しいものがあるので、やや記述にも困難が生じているのでご了承ください。

タイトル中で言及している平成18年判決とは、最判平成18年1月13日民集60巻1号1頁のことで、利息の支払を一度でも遅れれば全債務について期限の利益を失うという期限の利益喪失約款によって支払ったものの、引きなおして計算すると利息制限法の制限を超過している分は、改正前の貸金業法43条のみなし弁済の要件である「任意に支払った」には該当しないと判示したものです。

平成18年改正前貸金業法

第43条(任意に支払つた場合のみなし弁済)

貸金業者が業として行う金銭を目的とする消費貸借上の利息(利息制限法(昭和二十九年法律第百号)第三条の規定により利息とみなされるものを含む。)の契約に基づき、債務者が利息として任意に支払つた金銭の額が、同法第一条第一項に定める利息の制限額を超える場合において、その支払が次の各号に該当するときは、当該超過部分の支払は、同項の規定にかかわらず、有効な利息の債務の弁済とみなす。

一 第十七条第一項(第二十四条第二項、第二十四条の二第二項、第二十四条の三第二項、第二十四条の四第二項及び第二十四条の五第二項において準用する場合を含む。以下この号において同じ。)の規定により第十七条第一項に規定する書面を交付している場合又は同条第二項から第四項まで(第二十四条第二項、第二十四条の二第二項、第二十四条の三第二項、第二十四条の四第二項及び第二十四条の五第二項において準用する場合を含む。以下この号において同じ。)の規定により第十七条第二項から第四項までに規定するすべての書面を交付している場合におけるその交付をしている者に対する貸付けの契約に基づく支払

二 第十八条第一項(第二十四条第二項、第二十四条の二第二項、第二十四条の三第二項、第二十四条の四第二項及び第二十四条の五第二項において準用する場合を含む。以下この号において同じ。)の規定により第十八条第一項に規定する書面を交付した場合における同項の弁済に係る支払

2 前項の規定は、次の各号に掲げる支払に係る同項の超過部分の支払については、適用しない。

一 第三十六条の規定による業務の停止の処分に違反して貸付けの契約が締結された場合又は当該処分に違反して締結された貸付けに係る契約について保証契約が締結された場合における当該貸付けの契約又は当該保証契約に基づく支払

二 物価統制令第十二条の規定に違反して締結された貸付けの契約又は同条の規定に違反して締結された貸付けに係る契約に係る保証契約に基づく支払

三 出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律第五条第二項の規定に違反して締結された貸付けに係る契約又は当該貸付けに係る契約に係る保証契約に基づく支払

3 前二項の規定は、貸金業者が業として行う金銭を目的とする消費貸借上の債務の不履行による賠償額の予定に基づき、債務者が賠償として任意に支払つた金銭の額が、利息制限法第四条第一項に定める賠償額の予定の制限額を超える場合において、その支払が第一項各号に該当するときに準用する。

すると、貸金業者が期限の利益喪失約款のもとで受け取った超過分は法律上の原因がないことになりますので不当利得ということになります。すると返還することになり、これがいわゆる過払い金の取り戻しという問題になるわけです。ここで民法の規定を眺めると、不当利得の返還には悪意の受益者であると利息をつけないといけません。よって利息をめぐる問題が浮上するわけです。

第704条(悪意の受益者の返還義務等)

悪意の受益者は、その受けた利益に利息を付して返還しなければならない。この場合において、なお損害があるときは、その賠償の責任を負う。

過払い金返還と悪意の受益者について判例があります。

最判平成19年7月13日民集61巻5号1980頁

この判例は、結果としてみなし弁済の適用が認められない場合には、貸金業者がみなし弁済の適用があると認識しており、かつ、そう認識を有するに至ったことについてやむをえないといえる特段の事情があるときでない限り、悪意の受益者と推定されるとしました。

以上のような判例法理を踏まえたうえで本件の検討です。

この事件では期限の利益喪失約款のあるもとでの過払い金返還が問題になっています。みなし弁済にはならないので返還は義務ですが、利息がどうなるかの争いであるわけです。

最高裁判所第二小法廷平成21年07月10日判決 平成20(受)1728 不当利得返還等請求事件

原審は、上記の平成19年判決に依拠して、期限の利益喪失約款に基づいて受領したということは、悪意の受益者という推定を覆す特段の事情はないと判断しました。

この理由付けが中々すごくて、平成18年判決ではじめて明らかになった解釈なので、それ以前は任意性があるという解釈が最高裁判例でもって裏付けられていたわけではないとして、平成19年判決のいう特段の事情があるとはいえないとしました。判例変更ではないため判例としてはブランクでした。よって確たるものがない以上、貸金業者が大丈夫だと認識する特段の事情があるとはえいないということです。

しかし、これはあまりに厳しいのは否定できません。本件に関してはこれまでの貸金業の政策的な態度から、明確に否定されていないならしていいものと期待しても仕方ない性格のものですし、確立した実務であったことも作用して、悪意の受益者とまでしてしまうのはあまりに過酷といえましょう。

そこで最高裁は以下のように判示して、原審を破棄、差し戻しました。

平成18年判決が言い渡されるまでは,貸金業者において,期限の利益喪失特約下の支払であることから直ちに同項の適用が否定されるものではないとの認識を有していたとしてもやむを得ないというべきであり,貸金業者が上記認識を有していたことについては,平成19年判決の判示する特段の事情があると認めるのが相当である。

このように、この判決は結論だけ見ると貸金業者よりですが、あくまで事実関係から妥当な解釈をしたにすぎず、サラ金関係訴訟で貸金業者に厳しい一連の流れに対してゆれ戻しなどの意図があるわけではないと思われます。

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2009年7月17日 (金)

最高裁、担保不動産収益執行のもとで抵当権設定前の保証金返還請求権と賃料の相殺について判示

担保不動産収益執行は、抵当権を設定した不動産が賃貸されている場合に賃料に抵当権者がかかっていくというのが代表例です。過渡的に物上代位で賃料にかかっていくことが行われていましたが、立法した以上担保不動産収益執行に収斂していくべきとされています。

抵当権者が物上代位で賃料にかかっていく場合に大問題となったのが、賃料を実際には払わずに敷金など賃貸人(抵当権者から見れば担保権設定者)に対して差し入れた金銭の返還請求権と相殺を主張することが起きた場合の物上代位との優劣でした。

この問題とほぼ同じことが担保不動産収益執行でも起きまして、最高裁判決がでました。

最高裁判所第二小法廷平成21年07月03日判決 平成19(受)1538 賃料等請求事件

問題となっているのは建物です。

平成9年11月20日 賃貸借契約締結 保証金敷金交付

平成10年2月27日 抵当権設定

平成18年5月19日 担保不動産収益執行開始決定

平成18年7月5日 平成19年4月2日 賃借人が相殺の意思表示

上記のような経過をたどりました。

抵当権に基づく物上代位の判例から考えると、上記のような時系列ですと、抵当権設定よりも前に賃借人が債権を取得しているので、物上代位よりも相殺が優先される場合になります。

しかし原審は、相殺を認めず、担保権者の請求を認容しました。その理由として担保不動産収益執行開始決定以降は管理人に賃料債権が帰属するので、保証金返還請求権と賃料は相殺適状にないと判示しました。そうでないとしても、相殺の意思表示は管理人に対してしないといけないので本件では有効な意思表示がないとしました。

この原審の考え方から行くと、物上代位よりも担保不動産収益執行の方が担保権者から見た機能が強化されていることになります。しかし、最高裁はこの解釈を否定しました。

担保不動産収益執行の管理人の権限について以下のように、権利を行使する権限にすぎないと述べています。

管理人が取得するのは,賃料債権等の担保不動産の収益に係る給付を求める権利(以下「賃料債権等」という。)自体ではなく,その権利を行使する権限にとどまり,賃料債権等は,担保不動産収益執行の開始決定が効力を生じた後も,所有者に帰属し
ているものと解するのが相当

よって、相殺は賃貸人に対してすることができるとしました。

すると規範は物上代位と同じになりますので、続いて、賃借人の債権の取得時期と抵当権の登記の時期を比較しています。結果、上記のような時系列ですので相殺を持って対抗できるとしました。

担保不動産収益執行は抵当権者の物上代位と近い効果になることが明らかになったわけですが、抵当権の公示がないうちに取得した債権なのに、担保権者が物上代位ではなく担保不動産収益執行を選択すると突然相殺が対抗できなくなるのは結論としてバランスを欠きますし、理論的にも収益執行をするのはあくまで抵当権者にすぎず、破産管財人等とは異なるという原理的なところから考えると最高裁の言うとおりだと思われます。

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2009年7月 6日 (月)

最高裁、相続人のうちの1人に相続させる遺言があり、相続債務もすべて承継した場合、遺留分侵害額の算定に当たっては法定相続分に応じた相続債務額を加算することは許されないと判示

これまた少し前の判例です。

相続人が複数いるときに遺言で1人に相続させてしまうと、他の相続人にとっては遺留分侵害がありますから、遺留分減殺請求権を行使することが出来ます。

しかし、相続財産だけではなく相続債務があるときには、相続人は遺言とかかわりなく相続債務の支払を請求される可能性があります。すると後でこれを唯一の相続人に求償することになりますが、これもまとめて遺留分減殺請求でやろうとした事案があり、最高裁判決がでました。

最高裁判所第三小法廷平成21年03月24日判決 平成19(受)1548 持分権移転登記手続請求事件

いくつかの論点が交錯している事件となっています。

  1. 相続させる旨の遺言は相続債務に関してはどのような意思であるのか
  2. 遺言によって示された相続債務に関する相続分の相続債権者に対する効力
  3. 上記2点を踏まえて、相続債務がある場合の遺留分の算定方法

1 相続させる旨の遺言は相続債務に関してはどのような意思であるのか

特段の事情がない限り、相続債務もすべて相続人に負わせる意思であると解するべきとしています。相続財産の中から支払うわけですから合理的な意思解釈だと思われます。

2 遺言によって示された相続債務に関する相続分の相続債権者に対する効力

1のように解すると、相続債務を負担するのは遺言で指定された相続人だけになりますが、これはあくまで相続人の間でしか効力がなく、相続債権者に対しては効力が及ばないとしました。

債権者が関与できない遺言で左右されてはたまりませんから相対効であるのも当然だと思われます。

もっとも相続債権者が積極的に遺言の内容を承認して履行を請求することは妨げられないとしています。これも当然のことで妥当でしょう。

3 上記2点を踏まえて、相続債務がある場合の遺留分の算定方法

すると、相続財産をもらえるわけではないのに、相続債権者からの請求を受けかねない相続人は財産的には困難なものがありますが、それでも最高裁は遺留分を計算するのに相続債務に法定相続分をかけたものを加えることはできないとしました。相続債権者から支払を求められても、遺言で指定された相続人に求償しうるにとどまるとしています。

判例は、これより前に、遺留分の額の計算方法について、当該遺留分権利者が負担すべき相続債務を加算することを認めています。(最判平成8年11月26日民集51巻10号2747頁

本件のような場合では遺留分権利者は、遺言による相続債務の負担割合の指定を債権者対抗できないために支払を求められるにすぎず、求償することができるために最終的に負担すべきとはいえず、加算することは許されないと判断したわけです。

単純に考えても、支払を求められるかも分からないのに、必ず遺留分算定の基礎にはできてしまうというのは変な話ですので、この判旨のいうとおりだと思われます。

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最高裁、譲渡禁止特約のある債権を譲渡した譲渡人は、譲受人に対して譲渡の無効を主張することは出来ないと判示

取り上げ損ねていた少し前の判例を扱います。

譲渡禁止特約のある債権を譲渡した譲渡人が後からその特約の存在を理由として譲渡は無効であると、譲受人に対して主張した事案で、最高裁は特段の事情がない限り無効を主張することは許されないと判示しました。

最高裁判所第二小法廷平成21年03月27日判決 平成19(受)1280 供託金還付請求権帰属確認請求本訴,同反訴事件

原審は譲渡人からの無効主張を認めていました。これは無効は絶対的であるという理解に立っていると思われます。

これに対して、最高裁は譲渡禁止特約は債務者の利益のためのものであり、譲渡人である債権者は自ら譲渡した以上無効主張する独自の利益はなく、無効主張は許されないとしました。

自分で譲渡しておきながら後から実は無効だと言い出すのはいかにも信義則に反しますので当然の判断でしょう。信義則ではなく独立の利益がないという言い方をしているところに注意がいりますが。

債務者が無効主張をする意思がある場合は特段の事情があるとしており、譲渡人による無効主張は一切認められないわけではないことも明らかにしています。これは錯誤無効の債権者代位による主張とパラレルな考え方と思われます。

本件においては債務者は債権者不確知を理由として供託しており、特段の事情はないとしています。

以上から、独自の利益がなく特段の事情もないために主張は認められないという結論になっています。

本件では譲渡された債権は建設請負の報酬債権なのですが、定形的な約款を用いており譲渡禁止特約がついている債権も多いのが現実です。世間的には譲渡が禁止されている債権がかなり多いわけですが、債務者の意向によっては特約のとおりの現実にはならないということになります。公共工事の報酬債権などを考えると、意義がそれなりにありそうな判断だと思います。

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2009年6月16日 (火)

最高裁、所有権留保が設定された動産に起因する不法行為責任について、被担保債務の弁済期以降は担保権者が責任を負うと判示

譲渡担保で所有権的構成と担保的構成のどちらをとるかが議論がされますが、これと似た問題として所有権留保の法的性質が問題となった事件がありました。

最高裁判所第三小法廷平成21年03月10日判決 平成20(受)422 車両撤去土地明渡等請求事件

この事件では、所有権留保されているのは自動車なのですが、貸し駐車場の賃料を払わないために、駐車場の貸主から自動車の撤去明け渡しと賃料相当額の損害金を請求されているという不法行為の事件です。この自動車の購入代金の割賦弁済は滞ってしまっており、所有権留保もされていることから、駐車場の貸主が、担保権者を訴えているというところが特徴的です。

原審は、担保権者には所有権は確かにあるものの実際には担保権であり撤去明け渡しの義務は負わないとして請求を棄却していました。

最高裁はこれに対して、所有権留保の内容を実質的に判断して、担保権者が所有者としての責任を負う時期を明示しました。

残債務の弁済期までは交換価値の把握にとどまるものの、弁済期後には目的物を占有処分することが出来るから本件のような場合には不法行為の責任を負うとしました。

その上で、原審が弁済期を徒過したかについての判断をしていないので差し戻しています。

なお、知らないうちに不法行為者になっていてはたまらないということで、不法行為が発生している事実を知らなければ不法行為責任を負わないとしています。知らせてから不法行為になるということなので損害金の算定に影響することになりましょう。

所有権留保で買っており、きちんと弁済しているかは外部からは容易には分からないでしょうから、誰を相手取って提訴すればいいかについては難しい問題になりそうです。両負けを防ぐために同時審判申出共同訴訟を提起するなどが有用に思えますが、本件では担保権者だけが被告になっています。資力が怪しくなっているからこそ不払いも生じているでしょうから、両方を訴えるというのは現実的ではないのでしょう。

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最高裁、継続的金銭消費貸借契約における過払金返還請求権の消滅時効が取引終了から進行する場合について判示

一連のサラ金関連訴訟に新しい内容が加わりました。

最高裁は、よくあるサラ金などの継続的な金銭消費貸借契約で、過払金が発生した場合には別口借入金債務に充当する合意がある場合に、過払金返還請求権の消滅時効は、特段の事情がない限り、取引終了から進行すると判断しました。

最高裁判所第三小法廷平成21年03月03日判決 平成20(受)543 不当利得返還請求事件

消滅時効は権利行使が可能となった時点から起算されますが、借入金が次々と発生して逐次返済していく消費貸借で過払金が発生した場合は、過払金返還請求権はいつから行使可能となるのかという問題です。

民法

第166条(消滅時効の進行等)

消滅時効は、権利を行使することができる時から進行する。

2 前項の規定は、始期付権利又は停止条件付権利の目的物を占有する第三者のために、その占有の開始の時から取得時効が進行することを妨げない。ただし、権利者は、その時効を中断するため、いつでも占有者の承認を求めることができる。

最高裁は、逐次借入金が発生するような契約で過払金の充当合意がある場合には、新たな借入金の発生が見込まれる限りそれに充当されることになると考えて、過払金返還請求権は行使されないことになるとして、過払金充当合意が法律上の障害となるとして、全体の取引が終了した時点から消滅時効が進行するとしました。

借り手がまだ借入金が発生すると思っている限り、過払金の返還請求はしないで充当のためにとっておこうとするだろうということで、結果としてそれ以降に借入金は生じなかったとしても、権利行使はそもそも期待できなかったので消滅時効は進行していないということでしょう。

この発想は、判例中でも引用されていますが、このブログでも以前取り上げた自動継続特約付定期預金の事件(最判平成19年4月24日判例時報1979号56頁)と共通しています。

この多数意見に対しては、田原裁判官の反対意見がついています。

充当することを考えるにしても過払い金返還請求権の権利行使自体は可能であり、法律上の障害とまではいえないとしています。さらに充当合意に消滅時効の進行を遅らせる合意まで含まれていると解するのは無理があるとしています。

田原裁判官は、このような解釈をすると、貸金業者が新規の貸付に応じないようになってしまうと実際的な問題点にも言及されています。

この田原裁判官の反対意見は説得的ですが、あまりに貸金業者に厳しくするとかえって借り手を縛ることになってしまうのは最高裁も当然承知しているでしょう。

しかし世論、立法からして貸金業に大変厳しくあたった以上、それでいいとするほかないと判断しているのでしょう。それによる社会的な不利益があるとしても民主的に選択した以上、国民全体で負うことだと考えているのでしょう。

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2009年6月 7日 (日)

最高裁、生命保険で指定受取人とその相続人が同時死亡した場合には、当該相続人またはその相続人の相続人は保険金を受け取る相続人には当たらないと判断

訳のわからないタイトルでかつ、最高裁判示を敷衍して記載したつもりの上記のタイトルが判旨と一致しているのか確信がもていないのですが、一応書いておきます。

生命保険の受取人(指定受取人といいます)は、その性質上、第三者ということになりますが、指定受取人が死亡したりした場合には保険契約者が新しく指定することが出来ます。しかし、それにしなかったときに保険契約者の死亡が生じると受取人がいないことになってしまいます。そこで商法の保険の規定(保険法に改正されました)では民法の相続の規定に従って受取人を定めるとしています。

商法

第676条〔保険金受取人の死亡〕

保険金額ヲ受取ルヘキ者カ被保険者ニ非サル第三者ナル場合ニ於テ其者カ死亡シタルトキハ保険契約者ハ更ニ保険金額ヲ受取ルヘキ者ヲ指定スルコトヲ得

②保険契約者カ前項ニ定メタル権利ヲ行ハスシテ死亡シタルトキハ保険金額ヲ受取ルヘキ者ノ相続人ヲ以テ保険金額ヲ受取ルヘキ者トス

保険法

第46条(保険金受取人の死亡)

保険金受取人が保険事故の発生前に死亡したときは、その相続人の全員が保険金受取人となる。

保険金を受け取るのは受取人の権利であることから考えるとこれは至極当然のことに思えます。

しかし、保険の受取人は近親者にしておくことが多いですから、受取人の死亡によって相続するのは保険契約者本人であったりすることが多くなります。

肝心の保険金は保険契約者の死亡によって生じるため、指定受取人→保険契約者の順で死亡した場合で保険契約者が受取人の相続人でもあるような場合には、自分の死亡による保険金を受け取る権利を相続してそれを保険事故の発生に伴ってさらに相続することになります。

よって、保険契約者と受取人が夫婦である場合で夫婦間に子供がいなかった場合には、子供がいない場合にはじめて直系尊属及び兄弟が相続できることを定めている民法899条1項から、夫側、妻側に保険金が分かれていくことになります。

上記の例のように順を追って死亡した場合ならこのようになることでいいのですが、問題となるのが保険契約者と指定受取人の同時死亡の例です。

同時死亡の場合にはその死亡した両当事者間では相続は発生しませんので、指定受取人のその他の相続人(直系尊属や兄弟姉妹)しか相続が発生しないことになります。

すると、保険金は指定受取人側のその他の相続人にしかいかないことになります。

これはあまりにアンバランスではないかということで、保険実務では双方に保険金を支払う扱いをしているようなのですが、最高裁がこの扱いを否定、同時死亡した相続人(これは保険契約者です)の相続人は保険金の受取人にはならないことを判示しました。

最高裁判所第三小法廷平成21年06月02日判決 平成21(受)226 死亡給付金等請求,民訴法260条2項の申立て事件

最高裁の理由付けは要するに、同時死亡ならその間では相続は発生しないからということです。

保険会社側は、同時死亡の場合でも商法676条2項の適用に当たっては指定受取人が先に死亡したと扱うべきであると主張したのですが、最高裁はそのようにする理由がないとしています。

条文だけ見れば確かに最高裁の言うとおりですが、保険会社の主張の根拠は公平にあるのでしょう。よって実務に大きな変更を求めることになるこの判例の影響は大きいと思われます。

この判例の結論を具体的な帰結に即して言うと以下のようになります。

夫婦のうち夫が生命保険契約をして妻を受取人にした場合で、夫婦に子供がいない場合で、夫婦が同時死亡した場合には、夫の死亡によって発生する保険金はすべて妻の相続人にいくということです。

この同時死亡の例は裁判例で同旨の判断がこれまでにもでていました。よって初の最高裁判決であるという点に意義があるのですが、公平の観点などからは異論もあると思われます。

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2009年5月24日 (日)

最高裁、保全執行で取り立てられた間接強制の金銭は、本案で被保全権利がないと判断されて仮処分が取消された場合には不当利得となると判示

本案で敗訴してもそれまでにしていた仮処分が当然に不法行為になるわけではないことは判例がありますが、仮処分が間接強制で、一定額の金銭の支払を命じるような場合に、本案で敗訴した場合に扱いがどうなるかについては判例がありませんでした。

このたび、そのような問題について正面から判示した判例が出まして、不当利得として返還請求が出来ると判示しました。

最高裁判所第二小法廷平成21年04月24日判決 平成20(受)224 損害賠償等請求事件

法律上の原因を欠くということは当然といえましょう。直接強制の場合なら原状回復に相当するということになりましょう。

ただ、間接強制の決定を得ていたこと自体が、不法行為になるのかというと、それは別問題で、判例のとおり当然に不法行為になるわけではないということになると思われます。

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2009年5月23日 (土)

最高裁、公訴時効成立後に発覚した殺人事件の犯人に対する損害賠償請求訴訟で除斥期間経過後にかかわらず適用を否定

東京高裁、公訴時効成立後に発覚した殺人の損害賠償請求訴訟で除斥期間の適用を否定して請求を認容(2008年2月2日)の続報です。

最高裁も原審までの判断を支持して上告を棄却しました。

最高裁判所第三小法廷平成21年04月28日判決 平成20(受)804 損害賠償請求事件

この事件の論点は上記の高裁判決のエントリーにまとめてあるのでご覧ください。

単純にいうと民法724条の不法行為の時効のうち20年の方は、平成元年判決によって除斥期間とされています。よって停止等はないはずなのですが、これだとあまりに不当な結果になるために例外を認めた平成10年判決で制限行為能力者の場合には、法定代理人等が選任されてから6ヶ月間は時効が停止する民法158条の趣旨を援用して、救済を図ったことがあります。

第158条(未成年者又は成年被後見人と時効の停止)

時効の期間の満了前六箇月以内の間に未成年者又は成年被後見人に法定代理人がないときは、その未成年者若しくは成年被後見人が行為能力者となった時又は法定代理人が就職した時から六箇月を経過するまでの間は、その未成年者又は成年被後見人に対して、時効は、完成しない。

2 未成年者又は成年被後見人がその財産を管理する父、母又は後見人に対して権利を有するときは、その未成年者若しくは成年被後見人が行為能力者となった時又は後任の法定代理人が就職した時から六箇月を経過するまでの間は、その権利について、時効は、完成しない。

この事件では、原告が制限能力者というわけではないので、平成10年判決からはさらに離れる感じがあるのですが、除斥期間の効果を制限することは同様に肯定しました。

その際、根拠について最高裁は民法160条に言及しています。

第160条(相続財産に関する時効の停止)

相続財産に関しては、相続人が確定した時、管理人が選任された時又は破産手続開始の決定があった時から六箇月を経過するまでの間は、時効は、完成しない。

条文の意味からは、やや離れるので、「民法160条の法意に照らし」としています。

平成元年判決に対して、158条による例外を認めたのが平成10年判決、同じ思考方法によって160条による例外を認めたのがこの判例という位置づけが出来るかと思います。

これでも十分な構成であるため、平成元年判決を変更する判断はしていませんが、田原裁判官は平成元年判決を変更するべきであるという意見を書かれており、債権法の改正作業に期待する旨もかかれています。

内田教授の行われている債権法の改正は、債権法にとどまらず、時効にも及ぶことになっていますので、立法的解決が図られるかもしれません。

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2009年4月19日 (日)

民法債権編改正について報道がされる

このブログでも何度か取り上げていますが、内田教授が取り組まれている民法債権編の改正の検討がさらに進展、法務省が改正の方針を固めたという報道が日経の紙面でなされました。

民法、2011年にも抜本改正へ 法務省、消費者の保護重視(日本経済新聞2009年4月19日)

法務省は民法が定める契約ルールを抜本改正する方針を固めた。主な内容は(1)企業や消費者が結ぶ「契約」に関する基本原則を明文化(2)契約違反などが起きた場合の賠償責任の考え方を最近の実態に合わせて改める――など。トラブル防止や紛争解決の迅速化、消費者保護につなげる狙いだ。

(略)

どういう内容になっているのかは東大で教授からちょくちょく聞いているのですが、本日の報道で取り上げられたのはごくごく一部にとどまっています。

上記引用の記事では載っていませんが、本紙面に掲載された内容では、原始的不能の契約についての改正内容が書かれていました。

原始的不能の契約は無効ですが、これを廃止して債務不履行責任に一本化するというものです。現在のドイツ民法に合わせることになります。

原始的不能は無効として、後発的な不能は債務不履行の問題になるという峻別の仕方はかつてのドイツ民法の内容で日本はそれを受け継いだのですが、母法が変わってしまい、日本も遅れてそれにあわせることになりました。

この点に限らず、日本民法では危険負担と債務不履行など連続している場面を細かく別々の制度にしていますが、これらが大胆に整理されると思われます。

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2009年2月23日 (月)

旧商工ファンドのSFCGが経営破たん

巨大かつ有名な貸金業者である旧商工ファンド、現SFCGが民事再生法の再生手続開始の申立てを東京地裁に行いました。

いわゆる強引な取立てが問題視された会社の一つです。

金融危機の影響が主な理由ですが、その他に過払い金の返還の負担も従来から経営の重荷になっていたことが指摘されています。

きっかけは金融危機ですが、これまでにとってきた一連のアンチ貸金業の態度が結実した結果でもあるでしょう。

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2009年2月15日 (日)

債権の消滅時効統一を検討へ

本日の日経朝刊の1面すみに掲載されましたが、現在、債権の内容によってばらばらになっている消滅時効を民法改正によって統一する旨の報道がなされました。

紙面では詳しく触れられていませんが、内田先生がやられている民法の債権編改正作業の内容の一部ではないかと思います。もっとも消滅時効は総則に規定があるので、民法の債権編改正作業は当然債権編だけではとどまらないことが伺われます。

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債権の時効、統一検討 法務省、人身被害の賠償は延長(日本経済新聞2009年2月15日)

法務省は債権を請求できる期限を示す「消滅時効」が債権の種類によって異なる現状を改め、統一する方向で検討に入った。現行の債権法は部分的な手直しはあったものの、根幹部分は制定から100年以上が経過。社会の変化や経済活動の多様化に対応できていないとの批判が根強かった。同省は2011年の通常国会に民法改正法案を提出することを目指し、抜本改正へ作業を進める。

 消滅時効は債権の権利行使が可能になる時点から10年が原則。ただ、実際の商取引などで多く使われる時効については10年より短く設定されている例も多い。法務省は消滅時効のバラツキを改め、3年などに統一する方向だ。殺傷事件や公害、薬害などで人身被害を受けた場合の損害賠償請求権の消滅時効は、延長する方向で検討する。 (10:18)

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民法債権編の抜本改正はきくところによるとかなりの量になりつつあり、しかもものによっては商法総則の内容の方に近づけてしまう部分もあるようなのですが、報道されるのはより一般性の強い内容だけですのでいまいち全体像が広く知られるようになっていません。今後の情報を待ちたいと思います。

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2008年4月12日 (土)

国土交通省、「マンション管理の新たな枠組みづくりに関する調査検討報告書」を公表

[関連したBlog]

マンション管理、全面委託を可能にの続報です。

国土交通省より「マンション管理の新たな枠組みづくりに関する調査検討報告書」が公表されました。

マンション管理の新たな枠組みづくりに関する調査検討報告書について

報告書をまとめたのは財団法人マンション管理センターですが、国土交通省はこれをうけて制度の見直しをするとしています。

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2008年3月29日 (土)

マンション管理、全面委託を可能に

マンションは建物区分所有法によって、所有者がみんなで自治会のような感じで管理組合を作り、多数決原理でもって管理を行うという仕組みをとっています。

これは共有財産を組合の法理で管理するという極めて自然な発想なのですが、投資や事業のために好き好んで組合を作るわけではなく、いやおうなく作らさせられるものですので、その管理の内実には極めて厳しいものがあります。

また、老朽化によって管理に問題を生じるであろうマンションが増えつつあるのに対して、その住人は団塊の世代が多く高齢化の問題から更なる困難が現実になりつつあります。

そこで国土交通省は、マンション管理を専門業者に全面委託することを認めることになったと報道されています。

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マンション管理、全面委託も可能に・国交省見直しへ(日本経済新聞2008年3月23日)

国土交通省は分譲マンションの管理制度を抜本的に見直す。所有者でつくる管理組合の理事会が担ってきた管理業務を全面的に外部委託するのを認める。高齢化などで運営が難しくなっている理事会がなくても、建て替えや修繕が円滑にできるようにするのが狙い。管理組合による修繕積立金の徴収を義務づけることも検討する。法改正も視野に入れ、2009年度から新制度導入を目指す。
(略)
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内容はいまいち定かではないのですが、多数決でもって管理をそっくり委託することを決議したらその後は任せるということのようです。
その後のガバナンスをどうするのかについては、詳しく触れられていないのでなんともいえませんが、単純に考えて利益相反を生みやすい構造であることは明らかです。

現在もマンション管理にかかる経費には不透明さがあるように思われますが、さらに助長しかねない内容ではないかと思います。しかし、実際の必要性も分かりますし、致し方ないのかもしれません。

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