労働法務事情

労働法に関連する記事です。

2015年5月 4日 (月)

日本マイクロソフト、性的マイノリティーへの支援の一環として、同性婚を前提とした規定を就業規則に追加

性的マイノリティーへの理解が日本でも徐々に進みつつありますが、企業においては性的マイノリティーへも各種制度において同様に取扱うことで対応する例が出てきています。

そのような対応はまだ、先進的な部類に属するとは思われますが、日本マイクロソフトにおいて、この4月に配偶者に準じるものとしてのパートナーの定義として、同性婚を前提としたパートナーも含める形で就業規則に明記したことが明らかになりました。

日本マイクロソフト、性的少数者支援 就業規則に明記 :日本経済新聞 2015/5/2 21:59 日本経済新聞 電子版

日本マイクロソフトは同性愛者など性的マイノリティー(少数派)の社員に対する支援策の拡充に乗り出した。4月に就業規則における配偶者関連の記述を同性婚も認める表現に改定した。

具体的には「パートナー」を「事実婚または同性婚において配偶者に準ずるもの」と定義し、このパートナーを一般的な配偶者と同列に扱うように記述した。

(略)

私自身も性的マイノリティーに配慮した就業規則は手がけたことがありますが、先進的な取り組みといった印象です。

今後も徐々に理解と対応が広がっていくことと思われます。

 

 

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2015年3月15日 (日)

厚生労働省労働政策審議会、労働基準法等の一部を改正する法律案要綱についておおむね妥当とする答申 答申を踏まえて今国会に労働基準法改正案提出へ

遅れての取り上げですが、今月2日にかねてから取り上げている労働基準法の改正ですが、労働政策審議会から、改正案要綱についてそのままの内容でおおむね妥当と厚生労働大臣に対して答申されました。

「労働基準法等の一部を改正する法律案要綱」の答申 |報道発表資料|厚生労働省

労働条件分科会からの答申においては、巷で大きな話題となっているホワイトカラーエグゼンプションの方ではなく、企画業務型裁量労働制の対象業務の拡大について労働者側委員から反対意見があったことが付記されているところが注目されます。

とにかく答申が出されましたので、当初の予定通りの内容で改正法案が今国会に提出されることになりますが、答申後、本日までの間に、国会の情勢がやや流動的になってきており成立するか、若干微妙になってきました。

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2015年3月 1日 (日)

最高裁、職場におけるセクハラ行為で警告や注意を受けることなく懲戒したのを無効とは言えないと判断 懲戒を受けたことを理由とする人事上の降格事由も有効と判断

セクハラについての処分が争われて最高裁判例が出ましたので取り上げます。

かなり程度のひどいセクハラ態様であることから事例判断の側面が強く感じられますが、人事労務に関する非常に重要な判示が行われており、その点に注目して取り上げます。

最高裁判所第一小法廷平成27年2月26日判決 平成26(受)1310 懲戒処分無効確認等請求事件

すでに報道で明らかになっていますが、大阪市にある有名な水族館である海遊館の管理職の社員2名が派遣の女性従業員に1年以上にわたって執拗なセクハラ行為を行い、当該派遣労働者は派遣元を退職してしまいました。

運営会社である第三セクターである株式会社海遊館(上告人)は、セクハラ防止を重要課題と位置付けていたことから、本件で問題となったセクハラ行為より以前にセクハラを禁止する文書を出しており、様々な取り組みを行っていました。

退職した被害従業員からの申告によりセクハラの事実を把握した上告人は、セクハラをした社員(被上告人)を懲戒処分とし、出勤停止としました。

このときの就業規則の規定の適用関係は、禁止行為として定められていた「会社の秩序又は職場規律を乱すこと」と懲戒事由としての「就業規則に違反したこと」であり、懲戒の種類は行為の軽重によって、戒告、減給、出勤停止、懲戒解雇が定められていました。

上告人は上から二番目の重さの懲戒をしたということになります。

また、上告人は、職能等級制度を採用している模様ですが、その中の人事権としての降格の事由に懲戒処分を受けたときという定めがあったことから、上告人は被上告人を降格させたものです。

これによって当然、賃金の減少を招いたわけですが、被上告人から懲戒処分の無効確認請求訴訟が提起されました。

原審は、請求を認めて、懲戒処分を無効としました。

その判断の骨子は以下の通りになります。

  • 被害者から明確な拒否をされていないことから許されていると誤信していたこと
  • 事前に警告や注意等を受けていなかったこと

セクハラは客観的に判断されるものであり、受け手によって左右されるのは妥当ではないことは一般化してきていますので、セクハラに当たらないといっているのではなく誤診していたのでやむないという情状事由としての捉え方をしているとはしても妥当とは受け取れませんが、二点目には相当な重みがあります。

確かに懲戒の有効性判断においては、注意や指導をしてもそれでもなお懲戒事由該当行為をしたことという補充性の原則のようなものを求める考え方がありますので、その点に考慮をして重すぎると大阪高裁は判断したことになります。

しかし、最高裁はこの点について、以下のようにいきなり懲戒することを許容しました。

原審は,被上告人らが懲戒を受ける前にセクハラに対する懲戒に関する上告人の具体的な方針を認識する機会がなく,事前に上告人から警告や注意等を受けていなかったなどとして,これらも被上告人らに有利な事情としてしんしゃくするが,上告人の管理職である被上告人らにおいて,セクハラの防止やこれに対する懲戒等に関する上記(1)のような上告人の方針や取組を当然に認識すべきであったといえることに加え,従業員Aらが上告人に対して被害の申告に及ぶまで1年余にわたり被上告人らが本件各行為を継続していたことや,本件各行為の多くが第三者のいない状況で行われており,従業員Aらから被害の申告を受ける前の時点において,上告人が被上告人らのセクハラ行為及びこれによる従業員Aらの被害の事実を具体的に認識して警告や注意等を行い得る機会があったとはうかがわれないことからすれば,被上告人らが懲戒を受ける前の経緯について被上告人らに有利にしんしゃくし得る事情があるとはいえない。

上記のとおり、注意する機会がなかったということとと、さんざん取組をしていたので、具体的注意を待たずに知っていて当然という二点から根拠づけています。したがって会社が重要な方針として周知を図っていることで注意の機会が期待できないような場合にはいきなりの懲戒処分も許容されることがあるということになりましょう。

また、この件では、出勤停止の後に降格されていることから、二重処罰のようになり、その点から降格が無効と考える余地がありそうですが、この点についても最高裁は以下のように述べて有効としています。

本件資格等級制度規程は,社員の心身の故障や職務遂行能力の著しい不足といった当該等級に係る適格性の欠如の徴表となる事由と並んで,社員が懲戒処分を受けたことを独立の降格事由として定めているところ,その趣旨は,社員が企業秩序や職場規律を害する非違行為につき懲戒処分を受けたことに伴い,上記の秩序や規律の保持それ自体のための降格を認めるところにあるものと解され,現に非違行為の事実が存在し懲戒処分が有効である限り,その定めは合理性を有するものということができる。

判示から見る限りでは、上告人は職能等級制度をとっている模様ですので、懲戒処分を受けたことが職務遂行能力の欠如を意味するのかは若干疑問の余地はないではないところがあります。もっとも、懲戒されるような行為をすることは職場秩序まで含めて考えると職務遂行能力を欠いているといえないわけでもないように思えますので、そのような趣旨から最高裁は人事権としての降格事由を有効としています。

この降格についての判断は、重要な判断であり、職能等級制度について人事権の裁量の範囲を画する意味で本件を超えて通用する判示であるように思われます。

大変ひどい態様のセクハラであり、事案限りでも解決を図る必要は極めて高い件ではありますが、判示の内容はそれに限定するものではないことから実務に大変大きな示唆を与えるものではないかと思われます。

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大阪高裁、阪神バスの障害のある運転手が配慮したシフトを打ち切られたため、新シフトで働く義務がないことの確認を求めた訴訟の控訴審で和解が成立

このブログでは取り上げるのを失念しておりましたが、阪神バスの障害のある運転手が、障害に配慮したシフトを打ち切られたことから、新しいシフトで働く義務がないことの確認請求訴訟を提起して、第一審で新シフトが公序良俗に反するとして請求が認められた事件の控訴審で和解が成立したことが明らかになりました。

報道によると会社が配慮を続けるということを内容とする和解である模様です。

この件では訴訟に先立って、仮処分も申立てられており、勤務ごとの時間を14時間あけることも認められていましたが、第一審判決ではその内容は命じられませんでした。確認請求訴訟なのである意味当たり前ですが、仮処分でシフト作成についても介入があったという点できわめて衝撃的な事態であったわけですが、配慮をするという内容で終わった模様です。

もっとも、本件は阪神電鉄が分社化して阪神バスが誕生した際に、勤務作成上の配慮がなされなくなったというものであり、経緯からして合理性が難しかった点が伺われる事案だったというところも作用しているように思われます。

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2015年2月18日 (水)

厚生労働省、労働政策審議会に対して「労働基準法等の一部を改正する法律案要綱」を諮問

厚生労働省、労働政策審議会「今後の労働時間法制等の在り方について」を建議 | Japan Law Expressの続報です。

「今後の労働時間法制の在り方について」についてにもとづいて、同内容の労働基準法等の改正案がまとまり、労働基準法等の一部を改正する法律案要綱」が労働政策審議会に諮問されました。

労働政策審議会に対して「労働基準法等の一部を改正する法律案要綱」を諮問しました |報道発表資料|厚生労働省

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2015年2月15日 (日)

厚生労働省、労働政策審議会「今後の労働時間法制等の在り方について」を建議

労働基準法の改正につながる労働時間制度に関する検討が、厚生労働省労働政策審議会労働条件分科会で行われてきましたが、2月13日、「今後の労働時間法制等の在り方について」を建議しました。

労働政策審議会建議「今後の労働時間法制等の在り方について」を公表します |報道発表資料|厚生労働省

この建議の内容は多岐にわたりますが、非常に重要な点が含まれていますが、現在の国会情勢から行くとこのまま労働基準法の改正につながっていくと思われます。

以下、論理的な整理と実務上の重要ポイントという観点から、「今後の労働時間法制等の在り方について」の内容を取り上げます。

 

月60時間超の時間外労働の割増率を5割以上にすることを中小企業には猶予してきた措置の撤廃

時間外労働の割増率は、時間外労働が月60時間を超えた分については5割以上にすることが法定されていますが、中小企業には猶予されていました。これが撤廃されます。もっとも平成31年度からの実施とされています。

時間外労働に関する監督指導の強化の内容の一部として時間外労働の特別条項の様式化

36協定には特別条項を定める場合が多いと思われますが、この内容について様式化して、指導しやすくすることが打ち出されました。

年次有給休暇について、使用者による時季指定が創設

年休の取得推進のため、使用者による時季指定という計画年休からさらに進んだ仕組みが誕生することになりました。10日以上の年休が付与されるなら、5日を指定しなければならず、労働者が主体的に年休を取得したらその日数分だけ使用者の義務の分が控除されることになるという仕組みとされています。

年次有給休暇だけとするのか、有休にしている他の特別休暇でも控除を認めるのかなどが実務的には関心事項になるように思われます。

フレックスタイム制の清算期間の上限を1カ月から3か月に延長

フレックスタイム制は、使用者の側から見ると、月をまたいで労働時間を寄せるような効果がありますが、この清算期間が短いと管理が大変なだけで実利があまりないというところがありました。このたび、清算期間を3カ月に延長して、合計4カ月の間で労働時間の枠を考えることがでいる仕組みが打ち出されました。

しかし、労働時間の集中を防ぐため、週平均50時間を超えたら、(総労働時間の枠の中でも)時間外と扱うことも打ち出されています。

企画業務型裁量労働制に新しい業務を追加

企画業務型裁量労働制は、個別の営業は入らないということが大原則でしたが、課題解決型提案営業などを含めることが打ち出されました。

ホワイトカラーエグゼンプションとして高度プロフェッショナル制度が創設

労働時間管理、休日深夜労働管理の対象から外す、新しい労働時間の仕組みであり高度プロフェッショナル制度が提言されました。

対象業務は専門業務型裁量労働制の対象業務の一部(金融商品の開発、アナリスト、コンサルタント、研究開発)などが例示されているほか、年収の要件について1075万円という数字が示されています。

 

社会的にはホワイトカラーエグゼンプションが注目されていますが、これは専門業務型裁量労働制の発展形態というくらいの内容が妥当なところで、それよりも適用対象が広く多くの実務対応が必要とされるのは、上記で言及した内容であるように思われます。

建議自体は上記の他にも多様な内容を含んでいますが、特に企業の人事労務実務的に関わりがありそうなのは上記のような点になると思われます。

労働基準法の改正案の内容とその後の省令まで含めて極めて大きな意義を有するものと思われます。

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2015年1月29日 (木)

厚生労働省、平成26年度「過重労働解消キャンペーン」の結果を公表 重点監督を実施した過半数の2304事業場で違法な残業があり是正勧告を行ったことが明らかに

労働基準監督署が調査にやってくることをいわゆる労務監査などと呼ぶことがありますが、この労務監査には色々なパターンがある中で、そのうちの一つにキャンペーン的なものがあります。

特定業界に絞っての監査などがこれに当たりますが、昨年、このカテゴリに位置づけてよいと思われる、長時間労働が疑われる事業場を抽出して重点的に監督を行うという種類の労務監査が行われ、その結果が公表されました。

平成26年度「過重労働解消キャンペーン」の重点監督の実施結果を公表 |報道発表資料|厚生労働省

単純に言うと、4561事業場に監督を行い、うち2304事業場に違法な残業があり是正勧告を行ったとのことです。

是正勧告というのは、労働基準監督官が法令違反(とはいっても所管している労働基準法違反と労働安全衛生法違反になりますが)を認定した際に、是正を促す行政指導になります。従わないと、労働基準法違反には罰則がついていますので、刑事事件への展開が予想されるというもので、かなりの重みにある事態です。

この違法な残業というのは、36協定なしでの残業などであり、かなり初歩的な法令に違反しているものであるようです。

ホワイトカラーエグゼンプションが立法化されようというときにこの結果が公表されるのも憶測を呼ぶところですが、健康維持のための労働時間の把握という問題は裁量労働制と同じくついてくるという結論に落ち着くための補強材料になるのは必至と思われます。

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2015年1月12日 (月)

スカイマーク、転職するパイロットに訓練費用の返還を求めて提訴していることが明らかに

国内航空3位のスカイマークが、転職するパイロットに訓練費用の返還を求めて提訴していることが報道で明らかになりました。

転職なら「訓練費返還を」 スカイマーク、操縦士を提訴:朝日新聞デジタル 2015年1月12日05時07分

国内航空3位のスカイマークが、他社へ転職する複数のパイロットに、社内での「教育訓練費」約400万円を返すよう求めていることがわかった。一部で裁判にも発展し、パイロット側は「労働基準法違反だ」と反発する。パイロット不足の中、引き抜き防止策の一環とみる関係者もいる。

(略)

教育訓練費」とは何か。航空会社のパイロットは操縦士の国家資格に加え、機種ごとに国のライセンスがいる。さらに各社ごとに社内訓練があり、副操縦士になるには社内の審査、機長になるには国の審査に合格する必要がある。それぞれ一定の飛行時間も求められる。

スカイマークが訴えている裁判の記録によると、国家資格を持って2011年に入社した40代の男性パイロットは、7カ月の社内訓練でボーイング737型機のライセンスを取り、副操縦士の審査に合格。同8月の人事発令で副操縦士の乗務を始めた。さらに訓練を受けて国の機長審査に受かり、13年8月には機長に昇格。だが14年2月に退職し、国内の別の航空会社に移った。

同年4月、スカイマークは、副操縦士の人事発令から3年以内に自己都合で退職した場合は教育訓練費を請求する、と定めた就業規則などに基づき、男性に約407万円を返すよう求めて東京地裁に提訴した。

上記の報道からではよく笑かいところが多々ある上、情報が若干混乱しているように読み取れるため判然としないのですが、会社からの請求にかかる部分がどの訓練に関する費用なのか、しかもどのような算定根拠で支出されているのかが定かではありません。

したがって一概には言えないのですが、一般的に労働基準法には損害賠償の予定の禁止が定められているため、就業規則に基づいて返還を求めているとのことですが、当該規定の有効性はかなり問題となる可能性があります。

労働基準法

第16条(賠償予定の禁止) 
使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償額を予定する契約をしてはならない。

また、実質的に転職を抑制する仕組みとして作用する可能性が相当程度ありますが、そうなると職業選択の自由は憲法上も定められている内容であることからも、合理性を困難にすると思われます。

報道の情報からでは非常に限定的であることと、訴えられたパイロット側からの情報提供で記事が書かれていると思われることから、事案の全容がわからないのですが、労働法的には難しい問題があるように思われます。

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日本テレビ、アナウンサーの内定取消をめぐる訴訟で和解 アナウンサー部配属予定の内定者に戻すという内容であり、4月入社の見込み

ミス東洋英和で日本テレビにアナウンサーとして内定していた大学4年生の女性が、クラブでのアルバイト経験を申告していなかったことを理由に内定を取り消されたところ同社を相手取って訴訟提起していた事件で、8日、和解が成立したことが明らかになりました。

日テレ女性アナ内定取り消し訴訟和解 4月入社へ :日本経済新聞 2015/1/8 20:42

日本テレビのアナウンサー採用が内定した後、東京・銀座のクラブでのアルバイト経験を理由に内定を取り消されたとして大学4年の笹崎里菜さん(22)が地位確認を求めた訴訟は8日、東京地裁で和解が成立した。日テレが笹崎さんを「アナウンス部に配属予定の内定者」に戻すとの内容で、4月に入社する。

(略)

日本テレビが内定取り消しの理由としてアナウンサーとしての清廉性などとしたため、クラブでホステスとしてのアルバイトに対する見方などが話題となってしまいましたが、そこから離れて内定をめぐる教科書的な法的整理をまとめておこうと思います。

内定とは、やや意外に思われるかもしれませんが、判例によるとすでに労働契約が成立しているとされています。

正確には、将来の日付である入社日を開始日とする始期がついており、内定事由に書かれている事由が生じたら解約できる解約留保権もついている労働契約が成立しているとしています。

そのため、内定取消の問題は、内定事由に書かれている取消事由に該当するかという問題になるので、日本テレビがどのような内定取消事由を示していたのかが第一義的には問題となります。

しかし、実際には内定取消事由は広めに書いているものですし、バスケット条項も入っているのが普通です。したがって清廉性がバスケット条項などに照らして該当するのかという問題になりますが、判例は内定取消事由そのままではなく社会通念上許容されるものに限定しますので、その意味では、清廉性とホステスとしてのアルバイト経験、そしてそれを申告していなかったことの当否が問題となったのは結論としては裁判所の判断とそれほど異なるものではなかったと思われます。

もっとも、内定取消を争った場合で無効と判断された場合の効果も損害賠償とすることで一般的な理解がありますし、上記のような理解では内定の地位は比較的強いものといえそうですが、世の実態としては内定取消の事態はかなり労働者にとって厳しいものであることが多いと思われます。

そういう意味では、かなり異例な結論になった一件ということができましょう。

ちなみに興味深いのは和解に含まれている文言である「アナウンサー部の配属予定」ということですが、文言の用い方からも、これは職種限定契約であることを示すものではなく、最初の配属部署を明示しているに過ぎないと思われます。

本件からは離れますが、求人において担当してもらう職務を示すことはよくありますが、裁判例的にはそれでもって職種限定契約であると解釈することには極めて制限的です。本件も当然そのような労働契約であるものと思われます。

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2015年1月11日 (日)

厚生労働省、介護休業の複数回取得を可能とするように育児・介護休業法を改正へ

介護休業は、会社が認めることが法律上義務づけられている内容としては、対象家族一人当たり要介護状態になるごとに通じて93日となっています。

育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律

(介護休業期間)

第十五条 介護休業申出をした労働者がその期間中は介護休業をすることができる期間(以下「介護休業期間」という。)は、当該介護休業申出に係る介護休業開始予定日とされた日から介護休業終了予定日とされた日(その日が当該介護休業開始予定日とされた日から起算して九十三日から当該労働者の当該介護休業申出に係る対象家族についての介護休業等日数を差し引いた日数を経過する日より後の日であるときは、当該経過する日。第三項において同じ。)までの間とする。

(略)

このように比較的短めの日数となっているのは、いずれは介護サービスを利用することを想定しており、それまでの間に臨時的に家族が対応するような利用の仕方を前提としているためです。

しかし、実際のところ、家族が介護にあたることが常態化して、仕事との両立が難しくなって介護離職が起きていると指摘される状況になってきたことから、厚生労働省は介護休業を拡大する方向で、育児・介護休業法を改正する検討に入ることになったことが明らかになりました。

介護休業 分割で取りやすく 厚労省、17年にも拡充 :日本経済新聞 2015/1/9 2:06

厚生労働省は会社員が家族を介護するために取る介護休業制度を拡充する。現在は家族1人につき原則1回に限っている休みを、分割して複数回取得できるようにする。仕事と介護を両立しやすい環境を整え、企業の中核となる40~50歳代の人材が親の介護のために離職するのを防ぐ狙いだ。育児・介護休業法を改正し、2017年にも導入する。

(省略)

報道によると、分けて取ることを認めることや雇用管理の観点から2週間以上の日数という制限は設けることが検討されているとのことですが、通算しての日数の上限の拡大を認めないと意味がないと思われることから、83日よりも拡大することになるものと思われます。

介護休業の際は無給とすることが一般的ですが、この場合の賃金の補填として雇用保険から介護休業給付金が支給されますが、積立金があることから当面は雇用保険料率の増加はしなくても済むと見込んでいる模様です。

実際のところ、介護離職を防ぐことを目的にいくつかの先進的な企業では法律上の義務である内容よりも拡大した介護休業期間を認めたり、介護のための短時間勤務なども認めている例が出ています。

もっとも肌感覚ではこういった試みはまだまだ稀有な部類に入ることから、この法改正が働きながら家族の介護を行う労働者を会社が応援する仕組みを整える契機になるかもしれません。

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