民事手続法事情

民事訴訟法・民事執行法・倒産法に関連する記事です。

2014年12月 7日 (日)

最高裁、無限連鎖講によって給付を受けた者は、行っていた会社の破産手続開始決定後に破産管財人が行う配当金の返還請求を、不法原因給付に基づく給付であることを理由に拒むことは信義則上許されないと判示

これまた少し前の判例を取り上げます。

いわゆるねずみ講と呼ばれる無限連鎖講は禁止される類のものですので、それによって給付を受けた配当は、不法原因給付となります。

第708条(不法原因給付) 
不法な原因のために給付をした者は、その給付したものの返還を請求することができない。ただし、不法な原因が受益者についてのみ存したときは、この限りでない。

無限連鎖講を行っていた会社が破産手続開始決定を受け、破産管財人が選任されたものの、例によって債権者に比して財産がほとんどなかったため、出資金に比して配当金が多かったためにいわば利益が生じていた会員に対して、返還請求を行ったところ、不法原因給付であるとして請求することができないとされたため、上告受理申し立てがされたという事件で最高裁判例が出ました。

最高裁判所第三小法廷平成26年10月28日判決 平成24(受)2007 不当利得返還等請求事件

不法原因給付だから返還請求できないとすると、無限連鎖講ですので大変の会員は被害者となっているわけですが、偶然一部の会員だけが他の会員の犠牲の上で利益を得ることになります。

これはあまりに不当といえますので、最高裁は以下のように述べて破棄自判しました。

破産会社の破産管財人である上告人が,被上告人に対して本件配当金の返還を求め,これにつき破産手続の中で損失を受けた上記会員らを含む破産債権者への配当を行うなど適正かつ公平な清算を図ろうとすることは,衡平にかなうというべきである。仮に,被上告人が破産管財人に対して本件配当金の返還を拒むことができるとするならば,被害者である他の会員の損失の下に被上告人が不当な利益を保持し続けることを是認することになって,およそ相当であるとはいい難い。

したがって,上記の事情の下においては,被上告人が,上告人に対し,本件配当金の給付が不法原因給付に当たることを理由としてその返還を拒むことは,信義則上許されないと解するのが相当である。

要するに拒むことは信義則上許されないという判断をしたわけです。

結論としては妥当なものと考えられますが、一般理論である点がやや苦しい構成である感じがしますが、それでも無限連鎖講などに限定して適用される法理として画するためなら当然のことだとも思えます。

しかし、木内判事はこの構成には若干気になる模様で補足意見で以下のように言及をしています。

その事業実施者(無限連鎖講の事業者のこと)が破産した場合,破産管財人が行う給付(利得)の返還請求は,破産者に代わって行うものということはできない。破産制度の目的は「債務者の財産等の適正かつ公平な清算を図る」ことであり(個人破産については「債務者について経済生活の再生の機会の確保を図る」ことが加わる。),その目的のために「債権者その他の利害関係人の利害及び債務者と債権者との間の権利関係を適切に調整」(破産法1条)するという破産管財人の任務の遂行としてこれを行うのである。

上記のとおり、無限連鎖講の場合に限定するところは変わらないものの、無限連鎖講の事業者が破産した場合の破産管財人の返還請求は破産者と同じくする資格で行っているわけではないということを述べておられます。法定訴訟担当のような考え方になるのかもしれませんが、なぜ無限連鎖講の時だけそうなるのか考えると若干大仰な構成に感じられなくもありません。

とにかく、不法原因給付の返還を求めることができる場合が一つ認められたということで注目すべき判例と思われます。

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2014年10月28日 (火)

インターネットの書き込みに関する仮処分の申し立てが、4年で20倍になっていることが明らかに

プロバイダ責任法によってプロバイダに対応を求めることができるにもかかわらず、インターネットの書き込みに関連する仮処分が急増していることが明らかになりました。

ネット関係の仮処分申し立て、4年で20倍 投稿削除要請など :日本経済新聞 2014/10/27 1:15

インターネットの掲示板で誹謗(ひぼう)中傷されたとして投稿者の情報開示や投稿の削除をプロバイダー(接続業者)やサイト運営管理者に求めるなど、ネット関係の仮処分申し立てが激増している。東京地裁が2013年に扱ったのは711件で、4年前の20倍以上になったことが地裁関係者への取材で分かった。

関係者によると、東京地裁が09年に扱ったネット関係の仮処分は計33件で、仮処分申立総数の3%に満たなかった。しかし、10年に175件、11年に499件、12年は736件と増加。13年の711件は仮処分申立総数の40%近くを占めた。

13年の711件の内訳は、名誉毀損やプライバシー侵害の状態を解消するための「投稿記事の削除」が247件、損害賠償請求訴訟を起こす前段階としての「発信者(投稿者)情報の開示」が290件、通信記録保存のための「発信者情報の消去禁止」が174件だった。

仮処分申し立てが増えたのは、会員制交流サイト(SNS)などの普及でトラブルが増加したのと、対処する手続きが周知されたのが主な理由。02年施行のプロバイダー責任制限法では被害者は投稿者の情報開示や記事の削除をプロバイダーなどに直接請求できるが、司法手続きを取らざるを得ない実情があるとみられる。

ネット事情に詳しい弁護士によると、プロバイダーへの要請で問題の投稿が削除されても、誹謗中傷の投稿は繰り返されることが多く、再発防止と損害賠償請求のため投稿者の特定を望む被害者が増えている。

また、プロバイダーは記事の削除に応じても、投稿者の氏名やネット上の住所に当たるIPアドレスの開示は拒むことが多いという。〔共同〕

上記報道によると、根源的な原因はインターネットの書き込みによるトラブルの増加があるわけですが、それらの問題に対するプロバイダ責任法によるプロバイダの対応に限界があり、投稿が何度も繰り返されることにより、結果として目的を達せられないことから法的手段をとらざるを得ないことになっている模様です。

実際のところ、インターネットへの書き込みをめぐる弁護士への相談は増えている肌感覚があります。

このような流れは今後も増加傾向が続くように思われます。

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2014年5月 1日 (木)

事業再生ADRで債権者会議を全員の同意を要している現行から、4分の3の多数決へと変更する案が検討されていることが明らかに

再生型の法的整理である会社更生、民事再生ではなく、法的整理ではない私的整理のうち裏付けがあるという点で法的な仕組みに近い事業再生ADRについて、使い勝手を良くする修正が検討されており、政府の成長戦略に盛り込まれる方向であることが明らかになりました。

事業再生ADRは主に銀行団だけが債権放棄をすることで仕入れ先に迷惑をかけないことなどが期待されるものですが、債権者全員の同意がいるため、実際にはうまくいかず法的整理にいたったり、そもそもそれを懸念して最初から選択されないという傾向があるとされていました。

そこで、債権者会議を多数決に修正することが検討されています。諸外国は多数決であることが多いとされていますが、そのうちイギリスと同様の4分の3の多数決とする方向とされています。

このニュースは日経でしか報道されていないことからアドバルーン的な要素があるものと思われますが、大きな制度変更ではあるので、今後が注目されます。

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2014年3月 9日 (日)

最高裁,権利能力なき社団に,その社団の構成員に総有的に帰属する土地について,その社団の代表者名義への移転登記を請求する訴訟の当事者適格があると判示

何を言っているのか判然としないタイトルで申し訳ありません。しかし,民事訴訟法の基礎的な分野について興味深い判例がでましたので,取り上げます。

民事訴訟法の教科書的な問題として,当事者能力というテーマがあります。

権利能力なき社団については,民事訴訟法で当事者能力が認められているのに,権利能力なき社団はその名前の通り権利能力の主体になることができないので,訴訟をすることができるといわれてもいったい何の実益があるのか,どのような訴訟ならできるのかが問題となるために論点として議論の蓄積がある分野です。

紛争の局面に即して述べると,権利能力がないわけですから,権利能力なき社団で財産を持つ場合には,代表者の個人名義になるわけですが,その財産をめぐり訴訟の必要性があった場合,誰が訴訟を提起するべきなのかが問題となるわけです。

司法試験の短答知識ですが,最高裁は,代表者が自己名義への引渡しを請求訴訟をするべきといったことがありまして(最判昭和47年6月2日民集26巻5号957頁),このことの反射的な効果として,社団自身が原告になることには否定的な理解がされてきました。

要するに代表者がやらないといけないというわけですが,すると民事訴訟法上,権利能力なき社団に当事者能力を与えた意味がおよそなくなってしまいます。

この考え方の背景には,権利能力なき社団の財産にかかわる請求権自身は,社団に権利能力がないので帰属せず,訴訟担当を認めるにしても,例えば登記請求権では代表者個人という主体がいるのに,訴訟担当を認めることができるのかという訴訟要件の問題があったためです。

もっとも,判例は,入会権について代表者の訴訟追行について授権を要するとしていることから,社団の性格から当事者適格を認めることで訴訟担当構成を許容する余地があるともいえました。

そのような中,権利能力なき社団に,代表者への移転登記請求訴訟を行うことについての,当事者適格を正面から認めた判例がでました。

最高裁判所第一小法廷平成26年02月27日判決 平成23(受)2196 所有権移転登記手続等請求事件

そもそもの原因は,代表者の交替に伴う登記の移転が必要になったためであるようなのですが,本件ではあまり法律論に関わってこないので省略します。

最高裁の理由づけは,正面からは,実質的には社団が所有しているといえるので,訴訟追行を認めた方が簡明であり,当事者の意思にも合致するということです。

このほかに補強的な材料として,上記の昭和47年判決も,社団が代表者名義への請求をすることについてはブランクであることにも触れています。

したがって,最高裁は実質的には社団が所有しているということから,訴訟の有効性は認めたわけですが,権利能力の主体ではないというところは維持しているため,当事者適格があるという構成にしているわけです。

しかし,結果を実現するのに,それで十分かということを考えると,逆に当事者適格を否定する事情となりかねないために,執行の場面についても若干触れてフォローをしています。

権利能力なき社団の訴訟の判決効は,構成員全員に及ぶため,代表者はこの判決から直ちに自己への移転登記請求ができるとして,問題はないことに触れています。

従来からの延長上の範囲内で合理的に解決を図るという意味で,当事者適格構成を最高裁が採用したということであり,理論的には批判がありうるところでしょうが,実態としては妥当なところなのだと思われます。

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2014年1月 3日 (金)

最高裁,新株発行無効の訴えの請求認容の確定判決の効力を受ける第三者は確定判決について独立当事者参加の申し出をすることによって同判決の再審の訴えの原告適格を有すると判示

昨年11月に民事訴訟法と会社法について大変重要な判示をした判例が出ましたので,遅ればせながら取り上げます。

最高裁判所第一小法廷 平成25年11月21日決定 平成24(許)43 再審請求棄却決定に対する抗告棄却決定に対する許可抗告事件

 

事実関係

250103

上記の図を参照いただきたいのですが,本件はXが再審を求めている事件です。

再審請求にかかる確定判決は,Y2がY1を相手取って提起した新株発行無効の訴えであり,その内容は,Y1がXに対して発行した新株の無効を主張するもので,Y1は請求を認諾したものの,裁判所は主張を促して証拠調べをして,結論としては請求認容となりこのまま確定しました。

Xは自分の株式が無効となる判断がされたことを判決確定後に知って,独立当事者参加の申立てをして,再審の訴えも提起したというものです。

XはもともとはY1の代表取締役でしたが解任されたという経緯があり,すでに前訴以前からXの株式の有効性をめぐってY1が無効と主張するなど紛争となっていました。そこでXは内容証明をY1に送るなどしていたという事実関係がありました。

そのような中,知らぬ間に新株発行無効の訴えが提起され,実質的に会社が認容するような形で確定していたわけです。

そこで,Xは再審を申し立てたわけですが,果たして再審ができるのか自体から問題となり,仮にできるとしても本件のような場合が再審事由に該当するのかが問題となったわけです。

 

争点1 再審の訴えの原告適格

原決定では問題となっておらず最高裁で浮上したのですが,前提となる争点は,本件のXに再審の訴えの原告適格があるのかということです。

一般的に再審の訴えができるのは,前訴の当事者ということになりますが,そのほかに判決の効力を受ける者も含まれるとされています。すると,Xは前訴の確定判決の効力を受けますから当然に再審の原告適格がありそうですが,そうは簡単ではありません。

会社法は法律関係の画一的確定を重視しているため,確定判決の効力を受けるものが再審の訴えの原告適格がある場合について個別に規定を置いていることがある(責任追及の訴えについて853条1項)のですが,新株発行無効の訴えにはこのような規定を欠いていることから,会社法の規定や対世効があるということだけから再審は認められないようにも考えられるからです。

 

争点2 再審事由に該当するか

第二に問題になるのは,Xを蚊帳の外において,勝手に新株発行無効の訴えを行って,請求認諾のような形になったことが再審事由に当たるのかという点です。

再審事由は,法的安定性のために極めて限定的に列挙されているだけで,唯一広く使えるのが,338条1項3号です。

第338条(再審の事由)
次に掲げる事由がある場合には、確定した終局判決に対し、再審の訴えをもって、不服を申し立てることができる。ただし、当事者が控訴若しくは上告によりその事由を主張したとき、又はこれを知りながら主張しなかったときは、この限りでない。

(略)

三 法定代理権、訴訟代理権又は代理人が訴訟行為をするのに必要な授権を欠いたこと。

この1項3号は,訴訟代理人が無権代理であった場合だけのように読めますが,広く解されており,手続保障を欠いた場合を広くここに含めています。

本件の事実がこの3号に該当するのかが原告適格があるとしたうえで次の争点となるわけです。

一見すると,手続保障を欠くことおびただしいので,該当しそうだなと思えますが,会社法の法定安定性の要請から,限定的に解するべきですので,単純に結論づけるわけにはいかないわけです。

 

判旨1 再審の訴えの原告適格

第一の争点について原決定は,Xは共同訴訟的補助参加ができるので,再審の原告適格があるとして,この点は簡単に済ませていました。

しかし,最高裁はこの点について誤りがあるとして,この点だけ捉えて破棄差し戻しを行いました。

最高裁は,要するに確定判決の効力を受けるからというだけで再審の原告適格を認めても,訴訟の当事者ではないことから訴訟行為ができないので,確定判決を左右することができないという点を強調しています。要するに,確定判決の効力が及ぶかだけではなく,再審の中でどのように訴訟行為をできるのかという点も含めて考えないといけないということと思われます。

そこで,共同訴訟的補助参加できる地位だからということではなく,前訴について独立当事者参加しておく必要があるということを述べています。

独立当事者参加しておけば当事者になるわけですから当然に訴訟行為できるわけです。しかし,前訴はすでに確定しているわけですが,その点については再審開始決定があれば訴訟行為できるようになるので,ある意味,再審の訴えと独立当事者参加の申立ての両方をすることが必要という判断をしました。

そのうえで原決定は,Xが前訴確定後に行った独立当事者参加の適法性について触れていないためその審理をするようにとして差し戻しているわけです。

 

判旨2 再審事由に該当するか

さらに最高裁は,再審事由に該当するかについて,やはり会社の場合には特に再審事由を限定的に解するべきという前提からと思われますが,以下のような一般論をまず提示しました。

新株発行の無効の訴えは,株式の発行をした株式会社のみが被告適格を有するとされているのであるから(会社法834条2号),上記株式会社によって上記訴えに係る訴訟が追行されている以上,上記訴訟の確定判決の効力を受ける第三者が,上記訴訟の係属を知らず,上記訴訟の審理に関与する機会を与えられなかったとしても,直ちに上記確定判決に民訴法338条1項3号の再審事由があるということはできない。

被告適格を限定しているのに効力が及ぶものに再審を認めたら,限定した意味がなくなるという点を根拠に導いている点が非常に堅い構成だと思われます。

そのうえで,さらにハードルを上げた再審事由該当性の基準を以下のように述べています。

上記株式会社の訴訟活動が著しく信義に反しており,上記第三者に上記確定判決の効力を及ぼすことが手続保障の観点から看過することができない場合には,上記確定判決には,民訴法338条1項3号の再審事由があるというべきである。

上記のような本件の事実は,この著しく信義に反する場合に該当するとみる余地があるとしており,差し戻し後の判断について示唆を与えています。

 

結論

このように本件のXについては再審の原告適格と再審事由該当性について肯定される方向の判断が示されたといえます。

 

意義

本件は新株発行無効の訴えについてのものですが,その判示の内容から行くと,会社法の組織に関する訴え一般に広く妥当しそうに思えますので,その射程が広がる可能性に注意が必要に思われます。

また,確定判決の当事者ではないが確定判決の効力が及ぶものが再審を提起するためにどのような訴訟行為をするべきかという点については,かなり広範に妥当することになるのではないかと思われます。

再審事由があるかはまた別の問題ではありますが再審の原告適格について門戸を広げた点は大きな意義があるように思われます。

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2013年7月15日 (月)

最高裁,明示的一部請求は残部についても裁判上の催告の効果があると判示

非常に教科書的な論点についての判例が6月に出ておりまして,遅れましたが取り上げます。

本当は多岐にわたる判示があり,もっと長いタイトルにするべきなのですが,短くまとめました。

 

民事訴訟法の教科書で出てきますが,一部請求と時効中断という論点があります。

債権のうちの一部請求をした場合に時効中断がどの範囲で生じるのかということでして,判例は明示的一部請求の場合は訴訟物を当該一部としていますので,訴訟物の範囲で時効中断するということで当該一部だけということで決着しています。

そういうことで,判例によって結論が出ている論点なのですが,消滅時効ぎりぎりに明示的一部請求をして,その認容判決の確定後に残部請求をしたものの,その第二訴訟提起の時点では消滅時効が完成するだけの期間が経過していたという事案で,残部についても第一訴訟で時効中断がされていたのかという点が争われて最高裁に至りました。

最高裁判所第一小法廷平成25年06月06日判決 平成24(受)349 未収金請求事件

事実関係を簡単にまとめますと,平成17年6月24日に時効が完成する債権について,Xが平成17年4月16日に内容証明で催告をして,同年10月14日に明示的一部請求の訴訟を提起しました。

この訴訟で,債務者であるYは,相殺の抗弁を出したところ,一部請求と相殺の外側説にたつと一部請求の金額を上回ったことから,平成21年4月24日に請求が全部認容されました。この結論は,平成21年9月18日にに確定しました。

この確定に先立ち,Xは相殺の抗弁を前提として計算される残部について第二訴訟を提起したところ,最初の催告から6か月以内に訴訟提起がされていないので時効消滅したとYが主張したというものです。

原審では消滅時効の成立が認められたことから,Xは,①明示的一部請求でも残部について裁判上の請求の準じる効力があり時効中断の効力が生じる,②①が認められなくても裁判上の催告の効力があり,第一訴訟の確定前に第二訴訟を提起した以上,時効中断の効力が生じていると主張したものです。

判例裁判例が,裁判上の請求に準じる効力を認めたものがいくつかあることからそれに該当するのだという主張と,該当しなくても裁判上の催告の効力はあると順序をつけて主張しているものであり,理論的に組み立てられれているように見えます。

しかし,明示的一部請求の場合に訴訟物は一部であることは判例上明らかですので①はどうみても無理があります。

そこで最高裁は①は認められないとしたのですが,②については,裁判上の催告の効力は認めたため,本判決がなされるに至りました。

明示的一部請求の訴えが提起された場合,債権者が将来にわたって残部をおよそ請求しない旨の意思を明らかにしているなど,残部につき権利行使の意思が継続的に表示されているとはいえない特段の事情のない限り,当該訴えの提起は,残部について,裁判上の催告として消滅時効の中断の効力を生ずるというべきであり,債権者は,当該訴えに係る訴訟の終了後6箇月以内に民法153条所定の措置を講ずることにより,残部について消滅時効を確定的に中断することができると解するのが相当である。

しかし,裁判上の催告がどのような場合に認められてきたかを考えると,この場合が含まれるのはある意味当たり前でして,問題は,含まれるか否かではなく,催告を繰り返すことはできないことから,この期に及んで裁判上の催告の効力であると認められても意味がないのではないかという点です。

案の定,最高裁は以下のように述べて,最初の催告から6か月で消滅時効が完成するとしました。

催告は,6箇月以内に民法153条所定の措置を講じなければ,時効の中断の効力を生じないのであって,催告から6箇月以内に再び催告をしたにすぎない場合にも時効の完成が阻止されることとなれば,催告が繰り返された場合にはいつまでも時効が完成しないことになりかねず,時効期間が定められた趣旨に反し,相当ではない。
  したがって,消滅時効期間が経過した後,その経過前にした催告から6箇月以内に再び催告をしても,第1の催告から6箇月以内に民法153条所定の措置を講じなかった以上は,第1の催告から6箇月を経過することにより,消滅時効が完成するというべきである。この理は,第2の催告が明示的一部請求の訴えの提起による裁判上の催告であっても異なるものではない。

ある意味,当たり前の判示ということができましょう。したがって,これまた当たり前の帰結ですが,時効成立直前である場合には一部請求を選択すると,残部については時効成立となってしまう可能性が高いということになるわけです。理論的にはこのような帰結になるのは当然ということになりましょう。

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2013年5月19日 (日)

最高裁,千葉裁判官の補足意見で将来給付の訴えの利益を否定した昭和63年3月31日判決の射程を限定する言及を行う

半年前の判決であり,今更という感じなのですが,取り上げます。

民事訴訟法135条に定められている,将来給付の訴えの利益については,大阪空港事件の最高裁判決が先例となっていることは有名な知識です。

第135条(将来の給付の訴え) 
将来の給付を求める訴えは、あらかじめその請求をする必要がある場合に限り、提起することができる。

最大判昭和56年12月16日民集第35巻10号1369頁

およそ将来に生ずる可能性のある給付請求権のすべてについて前記の要件のもとに将来の給付の訴えを認めたものではなく、主として、いわゆる期限付請求権や条件付請求権のように、既に権利発生の基礎をなす事実上及び法律上の関係が存在し、ただ、これに基づく具体的な給付義務の成立が将来における一定の時期の到来や債権者において立証を必要としないか又は容易に立証しうる別の一定の事実の発生にかかつているにすぎず、将来具体的な給付義務が成立したときに改めて訴訟により右請求権成立のすべての要件の存在を立証することを必要としないと考えられるようなものについて、例外として将来の給付の訴えによる請求を可能ならしめたにすぎないものと解される。

端的にまとめますと,発生が確実で,将来において債務内容の変更がある場合に債務者が請求異議で立証することになっても不当ではないようなものに限られるということになります。

ここからいくと,賃料,利息,扶養料などなら該当しそうということになります。

しかし,賃料が問題となった件で最高裁は将来給付の訴えの利益を否定したことがあります。それが最判昭和63年3月31日です。

この事件は,賃料が問題になっているのですが普通に賃借人に請求しているわけではなく,土地の共有者が単独名義の登記名義を有している他の共有者に対して,共有持ち分を超える分の賃料相当額を不当利得として請求したというかなり複雑なものであり,上記大阪空港事件の規範に照らして,将来給付の訴えの利益を否定したのです。

これは賃料に関係しているのに将来給付が認められなかったという点だけ捉えると教科書的知識とやや異なる点で意外な判示であり,司法試験の短答で出題されてもおかしくない知識ということになります。

さて,去年の暮れですが,同じような持分割合を超える賃料相当額の不当利得返還を将来の分まで請求した事件で最高裁判決が出たのですが,その中で昭和63年判決の射程について詳細に言及するという一風変わった判示がなされました。

最高裁判所第二小法廷平成24年12月21日判決 平成23(受)1626 所有権移転登記手続,持分移転登記抹消登記手続等,持分権確認等請求事件

この事件の法廷意見自体は,昭和63年判決があるので将来給付の訴えの利益なしといっただけで終わっているのですが,千葉裁判官が詳細な補足意見を述べており,昭和63年判決の射程について,狭く解するべきとしています。

千葉裁判官は,持分割合を超える賃料部分の不当利得返還請求の場合に一般的に将来給付の利益を欠くと解することは広すぎるとして,昭和63年判決の事例が賃貸借とはいっても駐車場であったということを重視するべきとしています。

駐車場であるとすると,将来にわたって継続する蓋然性は低いので,大阪空港事件に照らしても訴えの利益を認めるべきではないことになるのであり,これが借家の賃料や建物所有目的の借地の場合には,将来の給付請求を認めるべきであるとしています。

こうなると,昭和63年判例から一律に遮断されると考えがちであったものについても,元となっている賃料が何についてのものかによっては結論が変わってくることになります。

このような細分化して整理することにどのような意義があるのかという点ですが,相続によって賃貸借の目的物が共有になってしまっている物件などで案外該当する事態があるかもしれません。

 

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2013年4月29日 (月)

最高裁,面会交流を命じる審判が出されたものの,その通りに実施されなかった場合,当該審判においてに面会交流の日時又は頻度,各回の面会交流時間の長さ, 子の引渡しの方法等が具体的に定められているなど監護親がすべき給付の特定に欠 けるところがないといえるときには,間接強制決定をすることができると判示

離婚の際,離婚後に監護しない側の親と子供の面会交流について定めを置くことが多いですが,その通りに実施されなかったり,だんだんと行われなくなっていく傾向があります。

これは面会交流をする親の側の事情であることもありますが,通常,監護している側の思惑によることもあります。

どの程度,面会交流が実現されているのかは,以前,調査したことがあるのですが,それは別に譲るとして,面会交流が約束した通りに実施されない場合に,これを強制する手段があるのかということが議論されてきていました。

このたび,実現しないならいくらいくら払えという形での間接強制が許されるのかという論点の形で判例がでまして,面会交流に間接強制できる場合があることが正面から判示されました。

ポイントとなるのは,民事執行法の考え方にのっとって,給付の特定がされているのかという点でして,それがされているなら,義務者は何をしないといけないのかわかるわけですから,間接強制ができるということになりました。

審判で面会交流について命じておりこれが確定した場合については,最高裁は以下のように判示しています。

最高裁判所第一小法廷平成25年03月28日決定 平成24(許)41 間接強制決定に対する抗告審の取消決定等に対する許可抗告事件

監護親に対し非監護親が子と面会交流をすることを許さなければならないと命ずる審判において,面会交流の日時又は頻度,各回の面会交流時間の長さ,子の引渡しの方法等が具体的に定められているなど監護親がすべき給付の特定に欠けるところがないといえる場合は,上記審判に基づき監護親に対し間接強制決定をすることができると解するのが相当である。

要するに,審判の場合には,日時又は頻度,時間の長さ,この引渡しの方法等が定められていれば,間接強制可能ということになります。

この件においては,引き渡しの方法が定まっていなかったとして,間接強制決定はできないという結論になっています。

これに対して,以下の事件では,それらすべての特定に欠けるところはないとして間接強制が可能としています。

最高裁判所第一小法廷 平成25年03月28日決定 平成24(許)48 間接強制に対する執行抗告棄却決定に対する許可抗告事件

この事件では,子の引渡し方法として,下記のような内容が定められており,ここまでいくと特定に欠けることがないとされています。

①面会交流の日程等について,月1回,毎月第2土曜日の午前10時から午後4時までとし,場所は,長女の福祉を考慮して相手方自宅以外の相手方が定めた場所とすること,

② 面会交流の方法として,長女の受渡場所は,抗告人自宅以外の場所とし,当事者間で協議して定めるが,協議が調わないときは,JR甲駅東口改札付近とすること,抗告人は,面会交流開始時に,受渡場所において長女を相手方に引き渡し,相手方は,面会交流終了時に,受渡場所において長女を抗告人に引き渡すこと,抗告人は,長女を引き渡す場面のほかは,相手方と長女の面会交流には立ち会わないこと

 

また,同日付で面会交流を定めたのが調停であった場合についても判示があり,法律論部分が以下のように上記とは微妙に異なっています。

最高裁判所第一小法廷 平成25年03月28日決定 平成24(許)47 間接強制申立ての却下決定に対する執行抗告棄却決定に対する許可抗告事件

非監護親と監護親との間で非監護親と子が面会交流をすることを定める調停が成立した場合において,調停調書に面会交流の日時又は頻度,各回の面会交流時間の長さ,子の引渡しの方法等が具体的に定められているなど監護親がすべき給付の特定に欠けるところがないといえるときは,間接強制を許さない旨の合意が存在するなどの特段の事情がない限り,上記調停調書に基づき監護親に対し間接強制決定をすることができると解するのが相当である。

上記特段の事情がついたのは,調停の場合,あくまで合意であることから,別段の合意もまた可能であるということでしょう。しかし,調停が成立するということは原則,間接強制も含めて可能ということになり,あくまで例外という位置づけになっているものと思われます。

また,この件では,当の子供が会いたがっていないので間接強制はできないとする反論がされていましたが,それは間接強制の可否を左右するものではなく,それについては新しい調停や審判を申し立てて,取り扱うべきことであるということが示されました。

民事執行の考え方から行くと,確かに特定されているかという点に尽きるのだろうとは思いますが,子の引渡し方法の特定という点が,頻度や時間についての定め以上に,独立しての意義がどれほどあるのかはやや良くわからない気もします。

以上から,間接強制可能な面会交流の定め方が,明らかになったことになります。離婚が家庭裁判所に持ち込まれた場合,面会交流を定めることが非常に多いですので,実務には,大きな影響を与えると思われます。

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2012年11月 1日 (木)

東京地裁,エルピーダの管財人提出の更生計画案を決議に付する決定 ファンド提出の更生計画案は付さないことも決定

エルピーダの再建を巡って,いわゆる会社提案である管財人提出の更生計画案と債権者の一部であるファンド提出の更生計画案が対立するという状況になっていることはすでにお伝えしていました。

このたび,東京地裁は,管財人提出の更生計画案を決議に付することを決定すると同時に,ファンドの案は付さないことを決定して,債権者の投票は管財人提出の更生計画案に対して行われることが決定しました。

更生計画案付議のお知らせ

更生計画案から対立があるということは珍しいように思えますが,いわゆる会社提案ということで落着しました。

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2012年10月 8日 (月)

最高裁,賃料債権の差押えの後に,当該賃貸借契約が終了した場合,その後に支払期が到来する賃料債権は,信義則上賃料の不発生を主張することが許されない特段の事情がない限り,取り立てることができないと判示

債権を差し押さえた場合,原則的には差押えの対象はその差押えの時点の債権の内容に限られます。当たり前のことですが,債権の内容が変動しうるもののうち継続的給付については,差押え後に入ってくるものについても差押えの効力が及びます。

具体的には債務名義に表示された金額と費用を上限として,「~に満つるまで」として差押えがされることになります。

民事執行法

第151条(継続的給付の差押え) 
給料その他継続的給付に係る債権に対する差押えの効力は、差押債権者の債権及び執行費用の額を限度として、差押えの後に受けるべき給付に及ぶ。

しかし,この規定は,債権を発生させる基本的法律関係まで差し押さえるわけではないとされています。そのため債務者は,継続的給付を発生させる法律関係を解除することは妨げられないとされています。

一方で,債務者は,当然のことながら,差押えを受けた債権を処分してはいけません。

しかし,継続的給付の場合,債権の処分と基本的法律関係の変動を生じさせることは,法的には違っても,事実としては結構似てくることがあります。そのような場合の継続的給付の取り立ての可否が問題となった判例が出ました。

最高裁判所第三小法廷 平成24年09月04日判決 平成22(受)1280 所有権移転登記抹消登記手続等,賃料債権取立請求事件

本件は被上告人Yが訴外Aの債権者であり,上告人XはAとの間で建物賃貸借契約を締結しておりその賃借人でした。

Yは債務名義に基づいて,Aの賃料債権を差し押さえ,Xに対して取り立て訴訟を提起したのが本件です。

賃料は継続的給付の代表例ですので差押は,上記の法律のとおり,債務名義の金額にみつるまでということになったのですが,本件ではこともあろうに,AがXに目的物である建物を売却してしまい,賃貸借契約が混同で消滅してしまうのではないかという事態になってしまいました。

原審は,民法の混同の規定を指摘して,第三者の目的になっているので混同の例外にあたり消滅しないとして,請求を認容しました。

民法

第520条
債権及び債務が同一人に帰属したときは、その債権は、消滅する。ただし、その債権が第三者の権利の目的であるときは、この限りでない。

これは,条文としてはなかなか巧妙ですが,よく考えると債権的にはともかく,自分で自分に賃料を払うというのはいったいどういうことだと実体法的に疑問がないでもない結論でした。

最高裁は,これを否定して,上記に書いた通りの原則から,原因関係を変動させることは自由ということを踏まえて,下記の通り判示しました。

賃料債権の差押えを受けた債務者は,当該賃料債権の処分を禁止されるが,その発生の基礎となる賃貸借契約が終了したときは,差押えの対象となる賃料債権は以後発生しないこととなる。

したがって原則は取立不可ということを述べたのですが,例外を認めています。

賃貸人と賃借人との人的関係,当該建物を譲渡する
に至った経緯及び態様その他の諸般の事情に照らして,賃借人において賃料債権が発生しないことを主張することが信義則上許されないなどの特段の事情がない限り,差押債権者は,第三債務者である賃借人から,当該譲渡後に支払期の到来する賃料債権を取り立てることができないというべきである。

要するに,信義則に反する場合は別であり,賃料が発生しないことを対抗できないが,そうではない場合には原則的に取立不可ということを述べたわけです。

本件は取立不可という原則論よりも,この特段の事情についての法理が重要だと思われます。

なぜなら本件のAとXはきわめて密接な関係にあり,Xの株主はA及びAの代表者であり,Xの代表者とAの代表者は同一人物であり,そのような外観だけ見ると,濫用の可能性が疑われるような密接な関係であるためです。

このため,個の特段の事情についての審理のために差し戻されています。

上記に記載した原則論は踏まえつつも,特段の事情を定立した本件判示の法理は重要であるといえ,実務的にも注目するべきものといえると思います。

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